魔法少女 あおはる×あいろにぃ!

筒ヶ奈久

#4 おどげでねぇびでっこ(脚本)

魔法少女 あおはる×あいろにぃ!

筒ヶ奈久

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〇大きな箪笥のある和室
  学校の敷地から数10キロ離れた民家。
  その中に、パワード☆らいおんとハンティンの姿があった。
  かなり離れた所への移動だったため、外は夕日が照らしている。
パワード☆らいおん「紹介する、ここがオレんち! いやーっ!空中散歩は楽しかったなー! なあ、ハンティン!」
ハンティン「同意を求めるなよ! 疲れた〜・・・! 足も羽根も痛え・・・!! ヅラは途中で寝ちまうし、重くなるしでよぉ・・・」
  『────zzz・・・ふぁい・・・あ、すんません・・・すぅませ・・・ん・・・・・・しょるい、はんこ・・・やだぁ・・・ZZZ』
ハンティン「どんな夢見てんだよこのヅラは・・・ あー、もう疲れたっ、寝るっ!」
パワード☆らいおん「よーっし、寝るか、オレも! あっ、そうだ!これ聞かなきゃな。 ハンティンってさ、性別は男?」
ハンティン「ま、まあ・・・男・・・オス・・・って言えばいいのか・・・? 兎に角、男という事になる・・・」
パワード☆らいおん「──うん、じゃあ風呂のタイミングと部屋は分けた方がいいのか・・・? オレは全然オッケーなんだけどな・・・ う──ん・・・」
ハンティン(なんでもう住む前提になってるんだよ・・・?)
  すっかり体力を使い、畳の上で大の字になって寝転ぶ1人と1匹。
  すると、襖の開く音がした。
おばちゃん(仮名)「・・・・・・」
ハンティン「──おあっ!?・・・・・・あのぅ、どちら様でいらっしゃいましょう・・・?」
パワード☆らいおん「おばちゃん!ただいまー!」
ハンティン「お、おばっ・・・・・・!?」
  おばちゃん、と呼ばれたその女性。
  美しい銀髪に青い目。
  いかにも聡明そうな外見だ。
  
  ──────だが。
おばちゃん(仮名)「やっほぉーい!みさおー!!おかえりんご〜♪ クレーター探し、どうだった〜? UMAとかいた〜?」
パワード☆らいおん「あー、それなんだけどさー! クレーターから妖精拾っちった!!」
おばちゃん(仮名)「ああ、それがこのチュン助って訳かぁ〜! どうも、チュン助くん! 私はみさおのおばちゃんよ、しくよろ〜♪」
ハンティン「あ、はい。宜しくお願いします。 ──なんじゃ、このノリは・・・!?」
  特有のノリに乗れず困惑するハンティンをよそに、みさおとおばちゃん(仮名)は話を進めていく。
おばちゃん(仮名)「あ、もうウチん中じゃ変身しててもしょうがないだろ、解除しチャイナ〜?」
パワード☆らいおん「たはは、そうだったそうだった・・・」
  すると、パワード☆らいおんの身体が光に包まれ、変身が解除、社みさおの姿へと戻っていく。
杜 みさお「ふぅ〜・・・あ、おばちゃん・・・ オレ今日さ、学校のみんなに魔法少女だってこと・・・バラしちゃったんだよね・・・」
おばちゃん(仮名)「あれまっ!! ──むぅ、そいつぁ聞き捨てなりませんなあ・・・・・・」
  ──そして、みさおはおばちゃんに、学校での戦いの事を話した。
ハンティン(──その間、俺は思いっきり蚊帳の外。 ホントなーんもする事ない! 立ち聞き専になっちまったよ!)
  そう、ハンティンはずっと蚊帳の外だった。
  仮にも魔法少女の妖精だというのに、扱いが雑すぎやしないか。
杜 みさお「──おばちゃ〜ん、オレ明日から行けるかな、学校? なんかヤバいことになってるだろうしさー」
おばちゃん(仮名)「──いや、大丈夫さ。 みさおは学校の人気者なんだろ? だったら細かいこたぁ気にせず、堂々としてりゃあいいのさ」
おばちゃん(仮名)「なんだったら、生徒全員食っちまう感じでやってもいいんだぞ!? もっと胸張ってやろうぜ、な?」
杜 みさお「いやいやいや! さすがに食うのはやりすぎだって・・・ ──もしかして、酒池肉林的な意味?」
おばちゃん(仮名)「そうそ、ハンサムボーイ100人切りとか!? 『噂のヒミツの夜の部活動』とか!?」
「ッたははは──ッ!!!」
ハンティン「あーもう付き合いきれん!! イタタっ、ストレスから胃が・・・ はよ寝よ」
  飛び交う中学生レベルの下ネタを耳にしながら、ハンティンは半ばやぶれかぶれに就眠するのだった。

〇シックなバー
  ──深夜1時
  みさおの住む、2階建ての家──
  その1階にあるのは、おばちゃんが経営する少し寂れたバーである。
  みさおがすっかり眠りに就いた頃。
  "大人"同士の会話が、幕を開けていた。
おばちゃん(仮名)「カルーア・ミルク、お気に召したかい? 甘いのが好きだって聞いたからさ」
  おばちゃんは、カウンターを見て微笑む。
  グラスに注がれた甘味の酒は、客が少しずつ飲んでいる所だ。
  その客とは。
  『あっ、おいしいです・・・久々に、甘い物・・・飲んだ気がする』
  ヅラ。・・・否、魔法少女ミス☆コウテイである。
  見た目がすっかり変わってしまったせいか、高圧的な言動は鳴りを潜めている。
おばちゃん(仮名)「あんた、昼間から寝てたろう? すっかり生活リズムが崩れてるじゃないか・・・」
おばちゃん(仮名)「──無理に、とは言わないけども・・・ どうして、魔法少女になったんだい?」
  おばちゃんは、柔らかな表情をコウテイに見せる。
  するとコウテイは毛束を器用に使い、カルーア・ミルクを飲みながら言った。
  『────私は、教師だったんです』と。
  コウテイは自らの過去を、カウンターの向こうにいるおばちゃんに、少しずつ、語り始めた。

〇散らかった職員室
  ───遡ること、2日前
篠宮卯月「────おわらない・・・」
篠宮卯月「おわらないおわんないおわんないおわんないおわんないィィィ──ッ!!!」
  樫織中学校、深夜の職員室。
  誰もいないこの部屋で、残業を強いられる者がいた。
  新任教師・篠宮卯月である。
  彼女は今、やってもやっても終わらない書類の山と格闘していた。
  理想を追い求め、ようやく掴んだ教師の仕事。しかし──
篠宮卯月「やだやだやだやだぁ・・・・・・! 仕事と書類の山に溺れるぅ・・・ 頭おかしくなるぅ・・・!!!」
  ──その苛烈さは、想像を絶していた。
篠宮卯月「嫌だやだやだぁ・・・ だれか・・・・・・たすけてぇ・・・」
  卯月が精神的に限界を迎えた、その時だった。
  突如、卯月の机から白い煙のようなものが噴出。
  卯月は驚き、思わず飛び退いた。
篠宮卯月「っどわぁッ!? なになになになに・・・!?ちょ、こわいこわいこわい!!」
  煙がやがて晴れていくと、卯月は机の上に"何か"がいるのを見つけた。
  それは──
ウワバーミ=ヤマタ=クチナワ「やあ、麗しきお嬢さん」
  ──それなりの大きさを誇る、しゃべる蛇だった。
篠宮卯月「やだっ、ヘっ、へぶっ・・・へ、、へっ・・・ ヘビィ・・・嫌ぁ・・・っ!!」
  机から白煙、そして蛇。
  理解不能な状況に追い詰められた卯月は、すっかり腰を抜かしてしまっていた。
ウワバーミ=ヤマタ=クチナワ「いやあ、そんなに驚かれるとは・・・ まさに想定外でしたよ」
篠宮卯月「なんで、蛇がしゃべってるの・・・? 私、とっくに限界迎えて幻聴が・・・!?」
ウワバーミ=ヤマタ=クチナワ「いえいえ、幻聴ではなくて・・・ 実際に喋っていますし、もちろん蛇ではありますが、噛みはしませんよ?」
ウワバーミ=ヤマタ=クチナワ「なにとぞ、御安心を」
篠宮卯月「わ、わ、私にッ・・・何の用よぉ!?」
ウワバーミ=ヤマタ=クチナワ「ふむ──では、長々しく話すのも辟易されるでしょうし・・・単刀直入に言いましょう」
ウワバーミ=ヤマタ=クチナワ「──"魔法少女"に、ご興味はありますでしょうか?」
篠宮卯月「ま、魔法・・・何のことだか・・・?」
ウワバーミ=ヤマタ=クチナワ「人を超越せし力を持ちうる存在・・・それが魔法少女。 今こそ貴方の鬱蒼としたその心を・・・解き放つ時が来たのです」
ウワバーミ=ヤマタ=クチナワ「人を意のままに支配する力を持つことで、あなたは人間としての苦痛から逃れられるのです。 さあ、私の目をご覧なさい」
  すると、ウワバーミの眼が卯月を鋭く捉えた。
  睨みを効かせたようなその視線に、卯月は思わず目を合わせてしまう。
篠宮卯月「あ・・・っ・・・ いや、・・・いやっ、嫌ああああ──っ!」
  ウワバーミの視線を受けた卯月。
  その身体には異変が生じた。
  荒れ狂い、制御不能のエネルギー。
  塗りつぶされる自我。
  その全てに抗えず、卯月は「魔法少女」へと変貌してしまうのだった。
ウワバーミ=ヤマタ=クチナワ「魔法少女がこの世に生まれし瞬間! なんと美しいのでしょう! なんたる法悦!なんたる至福! この時を──私は待っていた!!」
  歓喜に満ちた声をあげる、ウワバーミ。
  やがて光が止むと、そこには変わり果てた卯月の姿があった。
ミス☆コウテイ「う、うぅっ・・・あぁ、うっ、く、ぅぅ!!」
ウワバーミ=ヤマタ=クチナワ「なかなか良いルックスではありませんか。 よければ、お名前はなんと?」
ミス☆コウテイ「貴様っ、我に名を問うとは肝の座った奴だ! ──いいだろう、その名をよーく心臓の奥底に刻め!」
ミス☆コウテイ「我こそはミス☆コウテイ! 不埒な人々の上に立ち、その行く末を断ずる者! 支配こそ、我が至上の目的!!」
ウワバーミ=ヤマタ=クチナワ「とてもいいですねえ・・・ ではその力、心ゆくままご堪能ください・・・」

〇シックなバー
  ──現在
  『──魔法少女になってた時の記憶は、今はもうほとんどなくなってて・・・』
  『私、たぶん──あの蛇の妖精に操られていたと思うんです・・・だけど・・・』
  『学校に・・・先生方と生徒に迷惑をかけた事は事実です・・・それに、あなたの家族──みさおさんにもケンカを挑んでしまった』
  『謝っても赦されない事です・・・この責任は、必ず取りますから・・・だから──』
  ミス☆コウテイ、否、卯月は嗚咽し、懺悔した。
  だが、今の彼女はカツラだ。
  いくら哀しくても涙は出ない。
  ただ、毛先がふるふると震えるだけだった。
おばちゃん(仮名)「──大丈夫さ」
  おばちゃんは卯月を両手で抱え、そのまま優しく抱きしめる。
  ふわりと、バーベナの香りがした。
おばちゃん(仮名)「別に責任を取らなくたっていいんだよ。 悪いのはその妖精で、あんたは何も悪くはないんだからね・・・」
おばちゃん(仮名)「それに、あんたはまだまだ若い。 まだまだ、いくらでも可能性はあるんだ。 けど、たまの息抜きも必要だよ」
おばちゃん(仮名)「あんたにかけられた魔法はじきに解ける。 だからそれまで、うちでゆっくりしなよ」
  『──で、でも仕事が・・・私、どうしたら・・・』
おばちゃん(仮名)「心配しないで、それはこっちでなんとかするからさ・・・ 今は、休み時だよ・・・・・・ん?」
  『──zzz──』
おばちゃん(仮名)「おおっと・・・酔うと寝ちゃうタイプだったかぁ・・・かわいいねえ」
おばちゃん(仮名)("蛇の妖精"・・・か・・・ 洗脳を施してまで人々を魔法少女にしようとするとは・・・ その狙いは一体なんだ・・・?)

〇部屋のベッド
  同じ頃、ひつみの部屋では──
月輪ひつみ「ふ、ふわあ〜・・・! 便所さ起ぎだっけ寝はつけてしまった・・・」
月輪ひつみ「魔法少女・・・杜さん・・・ 今日は色んなごどありすぎだなあ・・・」
月輪ひつみ「あないなごどあって、明日の学校、どうなんだべかなぁ・・・?」
  うまく眠れず、明日の学校に思いを馳せるひつみ。
  ──すると。
月輪ひつみ「ごほっ・・・けほっ・・・! な、なんだぁ・・・?」
  部屋に突然上がった白煙。その中から姿を現したのは──
ウワバーミ=ヤマタ=クチナワ「──いい夜更けですね、素敵なお嬢さん? 折り入ってご相談があります」
ウワバーミ=ヤマタ=クチナワ「"魔法少女"──ご興味ございませんか?」

次のエピソード:#5 朝のサカナ、昼のカメラ

コメント

  • 楽しみにしておりました☺️
    ウワバーミのキャラクターが映えてて面白いですね🌟掛け合いも見てて楽しいです🙌

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