エピローグ(脚本)
〇ホームの端
響の目の前に電車が到着する
軽く伸びをした彼は一度大きく後ろを振り返り息を吸い込む
そして大袈裟に肺の中の空気を吐き出した
響「さてと」
この駅と電車は響にとって一つの境界線だった
彼はまた日常に戻っていく
〇走る列車
響「(どうしたってまた続いてくんだよな)」
響「(働いてまた誰かと出会って・・・・・・いつか恋をすることもあるのかな)」
響「(今年はあんな辛気臭い顔・・・・・・家族には見せたくないもんだ)」
響はぼーっと外を眺めてから、思い出したように電車の中で鞄を開ける
中から唐草模様の風呂敷包みを取り出し紐解いていく
そこには母が握ってくれたおにぎりが入っていた
響「(相変わらずでっかいおにぎりだな)」
響「(もう俺はガキじゃないってのにさ)」
響「(ずっと変わらないんだから)」
響が一つ、二つとおにぎりを平らげ三つ目に手を伸ばしたときだった
一枚のメモ用紙が風呂敷包みの中から落ちる
響「なんだこれ?」
響「(あっ・・・・・・)」
「いつ読んでるのかわからないけど元気かよ? 兄貴」
「面と向かっては言えねーから、一言だけ、な」
「兄貴ならまたいい人が見つかるよ。だから何も気にすんなよ」
響「(あいつ・・・・・・)」
響「(結局・・・・・・実家を出るまで弟とはなんとなくぎこちないままだった)」
響「(無理してるつもりなんてなかった・・・・・・いやそうじゃない)」
響「(アイツは最初から俺の様子に気づいてたんだ)」
響「(よく考えれば、実家に帰って最初に話すのはいつも弟だった)」
響「(だっていつも、彼女との事を話してたからな)」
響「俺もつくづく分かりやすい奴だよな」
響「ありがと・・・・・・な」
メモ用紙に涙が数滴落ちる
響が次に顔を上げ窓から外を見た時には、すでに自分の見知った田舎の風景はなく
ビルや家屋が見え始めた彼にとっては日常の景色だった
響「(よしっ!)」
響は自分の両頬を叩く、そして意を決したようにスマホを取り出しメッセージアプリを開く
響「『お前には負けねーからな』」
すぐにメッセージの既読が弟から付いた
そこにはファイトスタイルで拳をこちらに向けるのキャラクターのスタンプが押されていて
それを見て響はクスリと笑って画面を閉じた
すごく家族の温かみを感じ
じんわりきたお話でした。
頑張って欲しいです。
家族、特に弟さんの気持ちが傷心にじんわりと染み入るお話に、強く共感してしまいました。響さんがとにかく前を向いて歩むしかない状況で、暖かい追い風のような家族の優しさですね。