エピソード4(脚本)
〇フェンスに囲われた屋上
???「・・・う・・・よ」
???「も・・・す・・・よ」
──もうすぐだよ──
〇田舎の病院の病室
ソラ「・・・っ」
飛び起き、あまりの勢いに噎せ返る。
我ながら驚くほどに激しく咳を繰り返しながら、掛け布団に顔を埋めた。
ソラ「・・・っ・・・は、あ・・・っ」
ソラ「ふ・・・っ・・・ふ、ぅ・・・」
心の中で、冷静な自分が「息を吐け」と険しい顔をする。
咳をしては呼吸を整え、それの繰り返し。
──耳元に心臓があるかのような鼓動が、深呼吸と共に落ち着いていく。
完全に落ち着いたその時には、飛び起きた原因──おそらく見た夢の内容を、思い出せなくなっていた。
──だけど
ソラ(・・・嫌な、予感がする・・・)
何が、とはわからない。
気のせい、なのかも知れない。
だけど──
ソラ「・・・夜明け、前・・・雨・・・」
雨が伝う窓から見える空は、雲こそ多いが暗くはない。
晴れるかどうかは判らないが・・・雨は多分、もうすぐ止むだろう。
ソラ「・・・」
ソラ「・・・少し、見て回ろう」
ソラ(何もないなら、それが良い)
そっと廊下に出た。
〇大きい病院の廊下
夜明け前の廊下は、当然ながら誰もいない。
微かな明かりと自分の感覚を頼りに歩くそこは、勝手知ったる場所と解っていてもまるで別世界のようだった。
〇病院の待合室
当然誰もいない窓口を横切り、ソファが並ぶ待合室を通り抜ける。
〇中庭
窓ガラス越しに中庭を眺めながら、まだ歩く。
〇階段の踊り場
エレベーターを使わないため、階段だけはゆっくり昇る。
〇屋上の入口
──当然、屋上へは出られない。
ソラ(・・・今だけは、それが一番良い)
階段に腰をおろし、しばらく雨音に耳を澄ます。
──歩き回ったけれど、やっぱりいつもの病院だった。
・・・そう、それで良いはずだ。
杞憂だった、はずだ。
ソラ(・・・どうして、)
ソラ(胸騒ぎが、消えない)
やはり──説明し難い何かが、脳裏に居座っている。
〇フェンスに囲われた屋上
〇屋上の入口
ソラ「・・・っ」
ソラ「・・・かえ、ろう」
ソラ(朝になったら・・・きっと、大丈夫・・・)