#3 初変身です。(脚本)
〇体育館の中
ミス☆コウテイ「──姿を現したな! 超スペリオル級問題児の社みさお! この私を足蹴にするとは、許し難い真似を!」
杜 みさお「へえ、オレの事を知ってるとは話が早いな! ならここで、アンタに直々に宣戦布告してやる! よーく耳をかっぽじって聞け!」
杜 みさお「ここはオレの居場所だ!誰にも奪わせるか! お前のような王様気取りヤローは、ここでオレが倒してやるッ!」
ミス☆コウテイ「ハハハ・・・! 魔法少女の力を持たぬお前に何ができるッ!」
勢いよく啖呵を切ったみさおだが、その様子を見た生徒たちはどよめいた。
いくら彼女とはいえ、相手が悪すぎる。
生徒たちは、最初こそミス☆コウテイを小馬鹿にしていた。
だが攻撃を放とうとしたその姿を見て、すっかり怯えていたのだ。
──こいつは、人間では決して太刀打ちできない、と。
生徒たちは、必死にみさおを引き留める。
「やっしー、そいつを刺激するな!」
「そいつに逆らえばハガキにされちゃう!校内リンボーダンス大会ができなくなるよ!」
「お前が創ったマンドラゴラ、植木鉢の中で『みさお』って言ってた!早まるなみさおママ!」
「みちゃ!無理はしないで!」
鍵本はばき「よしてくれ!社さん! 今あなたがハガキにされたら、約束した学園祭の"イメージビデオ撮影計画"が立ち消えになってしまう!」
月輪ひつみ「──杜さん、おねげぇだ・・・らずもねえ事すなよ・・・」
美馬こづえ「・・・・・・・・・」
杜 みさお「大丈夫だみんな! オレは死にやしない!ましてや、ハガキになるなんて絶対にないッ!」
杜 みさお「なぜなら、オレは・・・!」
すると、みさおの身体から光のエネルギーが満ちあふれ始めた。
それはどんどん輝きを増し、彼女の身体を包んでゆく。
ミス☆コウテイ「この輝き・・・まさか、貴様も・・・!?」
杜 みさお「見せてやる! 『マジマジ!ストレン☆チェーンジッ!』」
みさおの叫びとともに、光が弾けた!
それは体育館全体を包むほどの眩さで、生徒たちはたまらず目を背ける。
ミス☆コウテイ「くぅ・・・ッ!」
やがて光が止むと、みさおの立っていた場所には──
黄色く、可愛げのあるフリフリの衣装を身に纏った少女が立っていたのだ。
ミス☆コウテイ「やはり私と同じ魔法少女であったか・・・! 我はミス☆コウテイ、人民を統べる魔法少女! 同胞のよしみだ、貴様も名乗れッ!」
パワード☆らいおん「空にひと吠え、駆く荒野・・・ 例え孤独の渦中とも、歌舞いて躍りゃ独壇場!」
パワード☆らいおん「伊達に名乗ろう、よぉく聞け! オレは剛毅の魔法少女、パワード☆らいおんッ!!」
ミス☆コウテイ「フン、威勢の良い奴め! 今よりお前を官製ハガキにし、引き回しの刑に処す! 覚悟はいいな!」
パワード☆らいおん「やれるもんならやってみろってんだ! ──行くぞっ!!」
邂逅した2人の魔法少女。
その様子を体育館のガラス越しに見つめる者がいた。
ハンティン「あいつ、初めから魔法少女に・・・ それに他にも魔法少女がいたなんて・・・!? どういうこったよ・・・」
ハンティン「一体どうなってんだよ、人間界はぁ〜ッ!?」
〇野球のグラウンド
2人の魔法少女の戦いは、体育館を飛び出し、校庭へと躍り出た。
超人的な運動能力を持つ2人の勝負は、今のところ互角だ。
パワード☆らいおん「食らえっ、ぱんてら☆ナックル!!」
ミス☆コウテイ「えんぺら☆シャットッ!」
らいおんの連続パンチを、コウテイが完全に防御してしまった。
続け様に、コウテイが渾身の1発を放った。
ミス☆コウテイ「えんぺら☆プロミネンスッ!」
パワード☆らいおん「ぐぅッ!・・・うわぁっ!?」
コウテイが魔法で放った火玉弾の直撃を受けたらいおんは、たまらず地面に倒れ伏してしまった。
パワード☆らいおん「ぐあっ・・・あ、あっちぃなァ、もう!! 焼いてもオレは別に美味しくなんかならないってのに!」
ミス☆コウテイ「貴様を食う気など微塵もない! そんな趣味はないものでな・・・」
パワード☆らいおん「おいおい、恥ずかしがるなよぉ、もっと自分を解き放とうぜ・・・ 遠慮するなよ、相手になるからさぁ・・・❤︎」
ミス☆コウテイ「──なぁッ!・・・ふざけてるのか貴様ァッ!!」
パワード☆らいおん「これがふざけてるように見えるか? オレさ、ガチでアンタに惚れた。 だからさ、いいんだぜ・・・オレの事・・・食べても・・・」
らいおんは起き上がると、わざとらしく、もじもじしながらコウテイへ近づいていく。
ミス☆コウテイ(こいつッ、戦闘中だというのに何を考えてる?! ──まさかっ、盛ってるのかッ!?)
ミス☆コウテイ(いやあり得ない、あり得ない・・・ 魔法少女がそんなはしたない真似をするとは・・・ だが、あの目はガチ寄りのガチだ!)
らいおんのトンデモ発言に、コウテイに隙が生まれた。
逆転のチャンスだ。
パワード☆らいおん「今だっ!! ぱんてら☆パワードブラスター!!」
ミス☆コウテイ「──なにっ!? ぐ、ぁぁぁぁぁぁあ──ッ!!?」
パワード☆らいおん「ふぅ・・・・・・ やっぱり予想外の出来事には弱いタイプだったか・・・能力も全然使ってこなかったもんなー・・・」
独り言をぼそりと呟くらいおん。
そこに、ハンティンが飛んできた。
ハンティン「おい、そこのパワードなんちゃら! 聞きたいことが山ほどある!!」
パワード☆らいおん「──お前は・・・あの時のべしゃりツバメ!!」
ハンティン「べしゃりツバメじゃねえ、ハンティンだ! この機会に覚えろ!」
パワード☆らいおん「じゃ、オレの事も覚えてもらわないとな。 パワード☆らいおんの・・・社みさおだ。 好きなあだ名で呼んでいいぜ♪」
ハンティン「いや、普通にみさおでいい」
ハンティン「ってか、なんで魔法少女やってるって言ってくれなかったんだよ、おかげでこっちは片道3〜4キロ飛ぶ羽目になったんだぞ!」
パワード☆らいおん「だって、お前に魔法少女やってるって言ったら絶対首つっこむだろ・・・? これ以上、この街に魔法少女は増やしたくないんだ」
ハンティン「なっ・・・お前、どうしてそれを・・・ それに、増やしたくないって・・・」
ミス☆コウテイ「ぐ、ああっ・・・卑怯な手を・・・使いおって・・・!」
パワード☆らいおん「おいおい、往生際が悪いったらないぜ皇様! けど・・・あんたの覇道はここまでのようだな」
ミス☆コウテイ「え・・・!?」
ハンティン「うぇっ、ゲホッゲホッ・・・・・・ なんだこりゃ!めっちゃくちゃ甘い匂いのする煙が・・・・・・!!」
ハンティン「は──??? なぜ、なぜにヅラ・・・・・・???」
パワード☆らいおん「これがコウテイの成れの果てだ。 ・・・良かったな、これでいつでも人の上に立ち放題だぞ、頭が高いな」
コウテイ・・・否、カツラはもぞもぞと動き、声を上げた。
『──どういうことだ!貴様ァッ!戻せっ!戻さんかぁっ!!』
ハンティン「どういう事、なんだ・・・・・・? さっぱりのからっきし分からん・・・」
パワード☆らいおん「──敗北した魔法少女は、今まで自分のやってきた魔法が、反転して自分に返ってくるんだ、と。 何がどうしてこうなったんだかな」
ハンティン「知らない、そんな事、俺は知らんぞ・・・?!」
パワード☆らいおん「この街には魔法少女がまだまだいる。 恐らく、お前と同じようなスカウトマンが声掛けしたんだろう・・・ 傍迷惑な話だ──」
パワード☆らいおん「人間はみんな聖人君子だと思うか? 違うな、例え力を得ても、それを正しい事に使うとは限らないのさ。 ──このヅラみたいに」
『おい、ヅラ言うなぁッ・・・・・・うぅ、戻してぇ、もどせ・・・・・・ぇ・・・ぐすっ、ぐすっ』
パワード☆らいおん「だから、人に迷惑をかける魔法少女どもは、現れ次第、オレが成敗してるってわけだ」
パワード☆らいおん「さ、そろそろ退散するぞ。 正体がバレないう──── あ」
ハンティン「どしたよ」
見ると、体育館の方から・・・猛烈な勢いで人がなだれ込んでくる。
クラスメイト、下級生、上級生・・・
ハガキ化の魔法から解き放たれた教師陣、校長、副校長・・・
騒ぎを聞きつけた人々が雪崩のようにやってくる!
「社さーん、かっこいいー!!!写真!サイン!あとチェキも!!」
「どういう事ですか、釈明なさい社さぁん!」
「ありがとうやしろん!ウチらも混ぜて!」
「みさっちー!魔法少女姿で校内パレードよろしくー!!!」
「社、説明をなさい」
パワード☆らいおん「やっべ。 正体、オレからバラしたんだった」
ハンティン「アホかお前ッ!?」
パワード☆らいおん「──とりま逃げるぞッ! ヅラ、お前もだ!」
『ええっ、ちょ、待って待ってぇ!?』
らいおんは、ハンティンとヅラを抱えたまま大きく跳躍し、天高く飛んでゆくのだった。