エピソード29(脚本)
〇大企業のエントランス
夜の帳が降りる頃に学園に戻った二人は再び正門の検査所で、
立てた棺のような音波検査機の中に入り、禁止物を持ち込もうとしていないかチェックを受ける。
認可されていない電子機器はもちろんだが、生き物もその対象である。杜ノ宮学園はペット不可なのだ。
警備員男「はい、協力ありがとう。どうぞ。おかえりなさい!」
麻峰レイ「ありがとうございました!」
異常なしを宣告されたレイはあざとい笑顔を浮かべながら警備員に告げる。
既に先程のやり取りで目的は達していたが、急に素に戻ってはそれこそ警備員達の注意を引くことになるだろう。
彼女はやるからには一切の手抜きをしない信条なのだ。
〇学園内のベンチ
「お疲れ様。とりあえず、今日の捜査はここまでとして夕飯にしようか?」
麻峰レイ「うむ。事件の裏は取れたし、最重要容疑者を12人まで絞ったが、これ以上は明日に回すか・・・」
麻峰レイ「あまり一気にやると、犯人にこちらの動きを悟られる可能性もあるし、学園側を刺激するだろう」
麻峰レイ「まあ、それはそれで利用出来るのだが・・・。明日からはもっと慎重にやろうか!」
正門を抜けて学園内に戻った俺の提案にレイは頷きながらも警告を告げる。
確実に犯人へと迫りつつある俺達だったが、それは危険に近づくのと同義でもある。
「ああ、その通りだね」
麻峰レイ「・・・抜けるなら、ここが最終ラインだが?」
一歩先を進んでいたレイは足を止めると俺に向き直って問い掛ける。
外灯の僅かな明かりでは、その表情を完全に捉えることは出来なかったが、
昼休みの時のような冗談ではないことを俺は一瞬で悟った。
「ここまで来て抜けろ! なんて、本当にレイは意地悪だな。俺はレイにとことん付き合うよ!」
麻峰レイ「ふふふ・・・そうこなくてはな!」
俺の決意を聞いたレイは笑顔を浮かべながら俺の胸に右手の拳を軽くぶつけると、
再び向きを変えて寮のある居住区に向って歩き出すのだった。