愛しさのカタチ

兎乃井メライ

DAY29: 胸の痛み(脚本)

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〇テラス席
吉沢美森「あ~パンケーキも他の料理もすっごくおいしかった♡ お店もオシャレで居心地よかったし 満足、満足♪」
三澤梨々花「パンケーキ、ふわふわだったね~」
三澤梨々花「特にあのメレンゲの配合、神がかってたよね!フルーツの味を邪魔しないあの生クリームの甘さも絶妙だったと思う!」
吉沢美森「え、神がかってたかはわかんない・・・ 独特な味わい方してんのね・・・」
貴島里見「あはは、料理好きな三澤ちゃんらしいね! でもホント全部おいしかったー」
上杉睦「扇谷さん、ごちそーさまっした!!」
扇谷「喜んでもらえてよかったよ ここ、彼女のおススメで時々来るんだ 俺が住んでるアパートからも近いから」
扇谷「じゃあ帰ろうか。駅まで送るよ みんな家は同じ方向?」
上杉睦「おれと里見と吉沢は一緒 三澤だけ路線が違うんだよな」
三澤梨々花「あ、うん・・・ でも私、実は迎えがくることになってて」
  ――ピコン(スマホの音)
三澤梨々花(あ、先生から返信きた・・・ 『15分くらいで着く』)
貴島里見「迎えって車? 誰が来るの?」
三澤梨々花「あ~えっと・・・」
三澤梨々花(どうしよう・・・ 私が先生のうちに居候してるって里見くんには言ってないんだよね~💦)
吉沢美森「お姉さん車乗ってたっけ? あ、もしかしておじさん!?  前に学校の門で職質されてた人」
上杉睦「職質って・・・だ、大丈夫なのか?」
三澤梨々花「そ、そうなの!  そのままおじさんの家に泊まることになってて――だからここに残って待つね!」
貴島里見「え、一人で待つの?  だったらおじさん来るまでオレ残るよ!」
三澤梨々花「だ、大丈夫!  お店の中で待たせてもらうから! 帰るの遅くなっちゃうし、気にしないで」
三澤梨々花「そういうわけで扇谷さん、みんなをよろしくお願いします!」
扇谷「三澤さん、ほんとに大丈夫?」
吉沢美森「一緒に待っててもいいのよ?」
三澤梨々花「ありがとう、でも大丈夫! みんな気を付けて帰ってね!」

〇カフェのレジ
三澤梨々花「ふぅ・・・ 修兄のおかげでなんとか切り抜けた みんなにバレたら大変なことになるところだった・・・」
三澤梨々花(それにしても・・・ 半信半疑でメッセージ送ったけど 先生ほんとに迎えに来てくれるんだ)
三澤梨々花(基本オレ様だけど やさしいところ、実はあるよね・・・)
三澤梨々花(スーパーも荷物持ちに来てくれたり・・・ 居候始めてから、先生の知らない一面を毎日知っていく気がする)
扇谷「三澤さん」
三澤梨々花「えっ、扇谷さん!? なんでここに────」
扇谷「やっぱり気になって みんなを駅まで送って戻ってきたよ」
三澤梨々花「えぇっ、すみません! でもどうしよう・・・!」
扇谷「え?」
三澤梨々花(しまった、つい心の声が・・・!)
扇谷「・・・もしかして」
扇谷「来るのっておじさんじゃなかったりする? その反応だと、俺の知ってる人なのかな」
扇谷「・・・はるかとか」
三澤梨々花「えぇっ! なっ、なんで・・・!!」
三澤梨々花「うう・・・はい、実はそうです すみません・・・」
扇谷「あはは、謝らなくていいよ」
扇谷「――もしかして、つきあってるの?  だから里見にもバレたくなくて」
三澤梨々花「ちちち違います!  ただ、ちょっと事情がありまして・・・!」
扇谷「ふうん、何かワケありなんだ ・・・どうりで、キリエが気にするはずだ」
三澤梨々花「気にする・・・?」
扇谷「自分以外の女の子がはるかの傍にいるのがどうにも気になるみたいでね 今までそんなことがなかったらしくて」
三澤梨々花「それは、バイトなので・・・」
扇谷「はるかは女性とは距離を保ってつきあうタイプなんだ あの容姿だから、昔から好意を持たれることが多いみたいで」
扇谷「だから君ははるかのお気に入りなのかなってたぶん、キリエもそう思ってる」
三澤梨々花「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
扇谷「・・・実は最近、あんまりうまくいってないんだよね」
三澤梨々花「そ、それは────」
落合はるか「──おい」
三澤梨々花「あ・・・先生・・・」
落合はるか「ん? なんだ、扇谷もいたのか」
扇谷「女の子一人置いていくわけにはいかないからね、一緒に待ってた」
扇谷「はは、ほんとにはるかだ」
落合はるか「あ?何笑ってんだ」
扇谷「君が迎えに来るとは意外で ――でも、そういえばこのカフェって、もともと君がキリエに紹介したんだよね 知り合いの店だって」
落合はるか「あー・・・そうだったか?」
扇谷「・・・まあいいや じゃあもう大丈夫だろうから、俺は帰るね」
落合はるか「お前んちここから近いよな、乗ってくか?」
扇谷「いいよ、一駅だし歩いても帰れる距離だからじゃあ三澤さんまたね」
三澤梨々花「は、はい! 今日はありがとうございました!」
扇谷「・・・・・・そうだ、はるかさ」
落合はるか「ん?」
扇谷「もし俺とキリエが別れたら、よりを戻す気、ある?」
三澤梨々花(え・・・!!)
落合はるか「はぁ? 何言ってんだ ・・・ねえよ」
扇谷「そっか」
扇谷「ごめん、変なこと聞いて じゃ、また来週大学で」
落合はるか「・・・どうしたんだ? アイツは まあ、いいか」
三澤梨々花(扇谷さん、キリエさんと別れる気なの!? それで・・・先生とキリエさんを)
三澤梨々花「ダ、ダメです・・・!」
落合はるか「・・・ん?」
三澤梨々花「先生、戻っちゃダメです・・・!」
落合はるか「な、なんだよ、いきなり・・・ 戻るってなんだよ?」
三澤梨々花「キリエさんのことです!!」
落合はるか「はあ? キリエとは戻らねえって── なんでお前がそんなこと気にするんだよ」
三澤梨々花「なんでって────」
三澤梨々花(・・・あれ、なんで??)
三澤梨々花(なんで私・・・こんなにムキになってるんだろう・・・)
落合はるか「お前には関係ないことだろ」
落合はるか「それより、もう帰るぞ 車、路駐してんだ」
三澤梨々花「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
三澤梨々花(・・・関係ない・・・ たしかに、そうだよね・・・)
三澤梨々花(なんだろう・・・今、胸がズキって・・・)
三澤梨々花(私・・・なんか変だ・・・ どうしちゃったんだろう)

次のエピソード:DAY30: 企みはモーニングの後で

コメント

  • 梨々花ちゃんが終始不安定な回ですね。自身の感情を上手に整理できなくて、そんな自分に戸惑うという感じで。。。
    賑やかな周囲の面々に戸惑う彼女が、自分自身に戸惑うようになり、その変化が見ていてドキドキですね

  • 本人がいない所で勝手に変な人扱いされる修兄かわいそうです笑(実際変な人なんですけどね笑)
    扇谷さんに「車乗る?」と自然に聞くはるかはやっぱり心遣いのできる優しい人ですね😀

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