愛しさのカタチ

兎乃井メライ

DAY30: 企みはモーニングの後で(脚本)

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〇荒れた倉庫

〇荒れた倉庫
  君はトクベツなんだ
  だから──僕が守ってあげる

〇黒背景
  ズ
  ッ
  ト
  イ
  ッ
  シ
  ョ
  ダ
  ヨ

〇白

〇アパートの台所
三澤梨々花「はぁ・・・・・・」
三澤梨々花(久しぶりに見たな、あの夢・・・ もうずっと見てなかったのに)
三澤梨々花(昨夜、寝つきが悪かったせいかな せっかくの日曜なのに寝過ごしたし・・・憂鬱・・・)
三澤梨々花(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
三澤梨々花「ダメダメ、考えるのやめよ! 今日は行くところもあるし掃除もしたいし さっさと朝ごはん食べよう」
三澤梨々花(・・・先生ってまだ寝てるのかな? 朝ごはんいるか昨夜聞かなかったな 帰り道、なんだか気まずくて・・・)
三澤梨々花(先生と何話したっけ そういえば迎えに来てくれたお礼もちゃんと言わなかったかも)
三澤梨々花(うう~感じ悪かったかな・・・ プライベートなことに口出ししたし 怒ってないかな・・・)
  ――ピンポーン
三澤梨々花「あれ・・・チャイムの音 お客さんかな?」

〇部屋の前
緑川「おはようハイジ 出迎えありがとう、今日もかわいいね」
ハイジ「アウッ♡アウーーーン♡ アウアウッ」
三澤梨々花「あれっ、緑川さん?」
緑川「梨々花さん、おはようございます すみません朝から 勝手に入らせてもらいました」
三澤梨々花「おはようございます いえいえ、出入りはご自由にどうぞ! 緑川さんは合鍵持ってるんですから」
緑川「持ってるんですけど、今日はハイジが開けてくれました」
三澤梨々花「え・・・はっ!? ど、どうやって」
緑川「すりガラス越しなので定かではないのですが、背伸びするとちょうど鍵の位置に届くみたいで」
緑川「たまに成功することがあるんですよね すごいですよね」
ハイジ「アウッ!!」
三澤梨々花(お、おそろしき犬・・・! ていうかこの家の防犯大丈夫!?)
三澤梨々花「えっと・・・今日は緑川さんお仕事お休みの日ですよね? 先生に御用ですか?」
緑川「ええ、原稿の著者校正が終わったと夜中にメールが入ってたので、それを取りに 早めにチェックしたくて」
三澤梨々花「そうなんですね でも先生まだ寝てるかも・・・」
緑川「書斎の机にあるみたいなので、勝手に持っていきます ところで、梨々花さんどこかへお出かけですか?」
三澤梨々花「あ、はい ちょっとアパートに学校で使うものを取りに」
  グゥーーー・・・(おなかの音)
三澤梨々花「あ・・・・・・」
緑川「あ、もしかして朝食まだですか?」
緑川「よかったら一緒に食べにいきませんか? 僕もこれからなんです その後アパートへお供しますよ」
三澤梨々花「えっ、悪いです! だって原稿が・・・・・・」
緑川「入稿までにはまだ余裕があるので大丈夫ですよ」
緑川「チェックといっても、先生はほとんどミスしないので目を通す程度ですし」
緑川「おいしいモーニングごちそうします さあ、行きましょう」

〇商店街の飲食店
三澤梨々花「わぁ、このクロワッサン、サクサク! 挟んであるサーモンとディル風味のクリームチーズもすっごくおいしい!」
緑川「ふふ、ここはパンもおいしいんですが カヌレも絶品なんですよ」
三澤梨々花「カヌレ!!  外はカリカリ、中はモチモチのアレですね!」
三澤梨々花「あ、ごめんなさい!はしゃいじゃって! 私こういうカフェでモーニングなんて初めてで──」
緑川「喜んでもらえて何よりですよ」
緑川「時々休みの日に朝食を食べに来るんですが、僕のお気に入りの店なんです」
三澤梨々花(休みの日にモーニング・・・優雅だなぁ でも緑川さんには似合う・・・)
三澤梨々花「でも先生に黙って来てよかったんですかね? 私だけおいしいもの食べて、なんだか悪いような・・・」
緑川「休みの日の先生のサイクルは、明け方まで執筆して昼過ぎまでは睡眠をとる、と決まってるので大丈夫ですよ」
緑川「確かここのクロワッサンが好きだったので、おみやげに買っていけば万事OKです」
三澤梨々花「・・・緑川さんて本当に先生のことよくわかってるんですね・・・まるで奥さんみたい」
緑川「あはは まあ先生が受け入れてくれるなら、嫁いでもいいと思ってますけどね♪」
三澤梨々花「えっ!?」
緑川「冗談ですよ まあスケジュール通りに原稿を頂くためにも、担当作家の生活リズムの把握は必須なので」
緑川「落合先生の場合は特に・・・ 本当に自分自身の管理には興味がない人なので」
緑川「でも今は梨々花さんがいてくれますから、僕の出番は本来の編集担当業務だけです」
緑川「その後どうですか? 不自由はしてませんか?」
緑川「先生がわがままを言ったりとか――あまり様子を見に来られなくてすみません」
三澤梨々花「気にかけてくれてありがとうございます でも意外と・・・大丈夫なんですよね」
三澤梨々花「最初はこき使われるのかな~とか思ったんですけど・・・」
三澤梨々花「ごはん食べる時間合わせてくれたり、荷物持ちに買い物についてきてくれたり、昨夜も友達との食事の後、迎えに来てくれて」
緑川「・・・先生が、自らそんなことを?」
三澤梨々花「はい わりとやさしいというか、面倒見がいい人なんですね」
三澤梨々花「でも、気難しすぎるところとか 面倒くさいところもいっぱいありますけど」
緑川「・・・いや、前代未聞ですよ」
緑川「はは・・・・・・」
三澤梨々花「緑川さん?」
緑川「ははは! 胃袋を掴まれると丸くなるんですかね── いやすみません、意外すぎて」
緑川「本当にあなたにお願いして正解でしたね 乃梨子さんに感謝しないと」
三澤梨々花「え、お姉ちゃん? どういう──」
  ピコーン(メッセージ受信音)
三澤梨々花「あ、噂をすれば・・・お姉ちゃんからメッセージです」
三澤梨々花「もう、また一日間違えてる!」
緑川「間違える?」
三澤梨々花「あっ、ごめんなさい💦私の誕生日です おめでとうのメッセージくれたんですけど、いつも一日間違えるんですよ」
緑川「梨々花さん、明日お誕生日なんですか?」
三澤梨々花「はい、明日で17になります」
緑川「それは大変です! 知らずにすみませんでした」
緑川「お祝いしないといけませんね 帰りにケーキをオーダーして──」
三澤梨々花「ええっ、いいですそんなの!! それに、ケーキは大丈夫です! 明日叔父から届くみたいなので・・・」
緑川「叔父様はご出張中ですよね?  では出張先から?」
三澤梨々花「はい、叔父からもメッセージがきてました 「今年は三人でお祝いできないけどケーキをサプライズで送ります」って」
三澤梨々花「ふふ、事前に言っちゃったらサプライズにならないのに」
緑川「毎年お誕生日は三人でお祝いを?」
三澤梨々花「はい、それがうちの決まりなんです」
三澤梨々花「今年はできないけど・・・でも、しょうがないってわかってるので大丈夫です!」
緑川「ですが──」
三澤梨々花「緑川さんにはいつもたくさんおみやげも頂いてるし、気遣ってもらってるし、十分すぎるくらいですから!」
三澤梨々花「今日だっておいしい朝食ごちそうになってるし なので本当に気にしないでくださいね」
緑川「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
緑川「・・・わかりました じゃあせめて好きなもの遠慮なく召し上がって下さい」
三澤梨々花「ありがとうございます! あ、じゃあカヌレが食べてみたいです!」
緑川「もちろんです じゃあデザートに頼みましょうか」
緑川(・・・・・・・・・・・・・・・ふふ)

〇平屋の一戸建て

〇狭い畳部屋
三澤梨々花「いただきまーす!」
三澤梨々花「うん、アスパラの胡麻和えおいしい!  コロッケもトローリ、サクサクでうまく出来てる~♪」
三澤梨々花「あ、先生 丸いのがポテトコロッケで、少し細長いのがクリームコロッケです 熱いので気をつけてくださいね!」
三澤梨々花「野菜も食べなきゃダメですよ!  残してもいいから、副菜も箸つけてくださいね!」
落合はるか「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
三澤梨々花「もう、なんです?  さっきから人のことじっと見て」
落合はるか「いや・・・・・・お前 いつもそんなテンションだよな、メシの時」
三澤梨々花「そんなって?」
落合はるか「やかましいオカン」
三澤梨々花「もう、いつもいつもオカンて!」
三澤梨々花「まあでも、いつもお姉ちゃんと食べる時はこんな感じです」
三澤梨々花「だって、誰かとごはん食べるって楽しいじゃないですか♪」
三澤梨々花「あっ💦 もしかして先生は静かに食べる派ですか!? だったらうるさいですよね・・・」
落合はるか「いや、別にいいけど ふーん・・・そういうもんか?」
三澤梨々花「先生は誰かと食事するのって、あんまり好きじゃないですか・・・?」
落合はるか「まあ、得意じゃねえな 慣れてねえし」
三澤梨々花「えっと、実家にいた時とかは・・・・・・家族で食事しなかったんですか?」
落合はるか「うちは家族団らんするような家じゃなかったからな」
落合はるか「・・・オヤジは基本仕事優先の人間だし 俺も家にいないことが多かったから、メシはみんなバラバラだったな」
三澤梨々花「先生のお父さんて・・・ 警察の偉い人だって紅さんから聞いたんですけど」
落合はるか「ああ、いわゆるキャリアってやつ まあ、俺には関係ないけど」
落合はるか「あ、うまい このクリームのやつ」
三澤梨々花「あ、好きですか!? じゃあ、メモしておこ♪」
落合はるか「なんだそれ」
三澤梨々花「あ、これは落合はるかメモです!  先生の好きなものとか苦手なものとか、チェックするために作ってるんです!」
三澤梨々花「こうして書いておけば献立決めの参考になるし、嫌いなものがわかれば、食べやすくなるように工夫もしやすいし」
三澤梨々花「私の目標は先生の脱★偏食ですから!」
落合はるか「やっぱりオカンだな、お前」
三澤梨々花「先生の体のためじゃないですか!  全然自分で大事にしないんだもの だから私が管理するんです! 文句ありますか!」
落合はるか「・・・・・・マジでへんなやつ」
三澤梨々花(あ・・・また笑った)
三澤梨々花「や、家賃分はちゃんと働くんです!  緑川さんにも頼まれてるし」
三澤梨々花「あっ、先生、ブロッコリーよけない!」
落合はるか「このもっさりした見た目と、プチプチ、サワサワした感じが嫌なんだよ・・・やる」
三澤梨々花「もー!! まあ、いいや 私の明日のお弁当の彩りにするから」
落合はるか「お前、弁当も作ってんのか」
三澤梨々花「はい、そのほうが食費節約になるし お姉ちゃんにも作ってあげてましたよ あ、先生もいりますか?」
三澤梨々花「・・・って、いるわけないか!  手作りのお弁当なんて大学に持っていけないですよね!」
落合はるか「いる」
三澤梨々花「え!?」
落合はるか「パっとすぐ食えるようなのがいい 出来るか?」
三澤梨々花「は、はい・・・ えっと、おにぎりとかサンドイッチとか・・・ですかね?」
落合はるか「ああ、それでいい」
三澤梨々花「わ、わかりました!  あの、でも・・・・・・なんで?」
三澤梨々花(ぜったい、いらないって言われると思ったのに・・・)
落合はるか「まあ学食より・・・ お前のメシのが口に合うしな」
三澤梨々花(うう・・・まただ また胸がドキドキする・・・)
三澤梨々花(これってなんなの・・・?)
落合はるか「・・・そういえば」
落合はるか「お前、明日誕生日なんだって? 緑川から聞いたけど」
三澤梨々花「えっ! あ、は、はい」
三澤梨々花(み、緑川さん 先生に話したの!?)
落合はるか「ふーん・・・でどっちがいいんだ?」
三澤梨々花「ど、どっちって?」
落合はるか「水族館と観覧車」
三澤梨々花「・・・・・・へ?」
落合はるか「・・・あ? 緑川が言ったんだろ? 好きな方に連れて行くって」
三澤梨々花「!?」
落合はるか「ったく、緑川のヤツ 自分で言い出したくせに、抜けられない会議が入ったとか・・・ 俺に押し付けんなってーの」
落合はるか「まあ原稿も一段落ついたしな・・・ お前も俺も学校あるから夜んなるけど 連れてってやってもいい」
三澤梨々花「!?!?!?!?!?!?!?!?」
三澤梨々花(ちょっと・・・)
落合はるか「で?」
三澤梨々花(待って・・・そんなの聞いてない・・・)
落合はるか「どっちに行きたいんだよ」
三澤梨々花(み、緑川さん・・・ どういうことーー!?)

コメント

  • タイトルの既視感が凄いですね笑(意識してなかったら恥ずかしい限りです)
    もはや梨々花とはるかの会話には安定感を感じます笑

  • 安定のやかましいオカンモード、やっぱり楽しいです。2人の会話が物語当初と比べて、柔らかさや優しさがたっぷり込められていてイイですねー!そして、それ以上に甘々なハイジ、、、見事なまでの発情期ですねww

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