シンタクラースの書

たかぎりょう

読切(脚本)

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〇おしゃれなリビングダイニング
  物語はとある家の食卓から始まります
黒沢兵吾「そういえば、三崎敦樹くんは任のクラスメイトだったっけ?」
黒沢任「うん、親友だよ!」
黒沢兵吾「そうか」
黒沢任「急にどうしたの?」
黒沢兵吾「いや、何でもない。それより来週はクリスマスだな」
黒沢任「うん!」
黒沢兵吾「サンタさんにプレゼントはお願いした?」
黒沢任「まだ迷ってるんだよねー」
黒沢兵吾「そうか。でも、誰もがプレゼントもらえるわけじゃないってこと、任は知ってる?」
黒沢任「そうなの?」
黒沢兵吾「サンタクロースは大きな赤い本を持ち歩いてて、そこに良い子の名前と悪い子の名前が書いてあるんだ」
黒沢兵吾「で、良い子にしかプレゼントは配らないんだよ」
黒沢任「そうなんだ」
黒沢任「ねえ、お父さん、僕は良い子だよね!?」
黒沢兵吾「さあ、どうかなぁ」
黒沢任「ええ!?」

〇教室
黒沢任「もうすぐクリスマスだけど、サンタクロースが持ち歩いてる赤い本の話知ってる?」
三崎敦樹「ううん、知らない」
黒沢任「その本には、良い子と悪い子の名前が書いてあって、悪い子になってる人はプレゼントがもらえないんだってー」
三崎敦樹「そうなんだ。どういう子が悪い子なのかな?」
黒沢任「うーん、良くわからないけど、ウソついてる子とかかな?」
三崎敦樹「ウソ・・・」
黒沢任「1度その本見てみたいねー」

〇古いアパートの部屋
  1年ほど前にお母さんが家を出て行ってしまい、敦樹くんはお父さんと2人で暮らしています。
三崎敦樹「ただいま」
三崎智哉「ちょうど良かった。敦樹、酒買ってこい」
三崎敦樹「僕、子供だから売ってもらえないよ」
三崎智哉「お前、口答えするんじゃねえよ!」
  敦樹くんはお父さんに殴られてしまいます
三崎敦樹「ごめんなさい!僕、宿題するから」
三崎智哉「どいつもこいつも馬鹿にしやがって」

〇田舎の一人部屋
  ランドセルをしまった敦樹くんは、
  1週間前のことをふと思い出します

〇田舎の一人部屋
  眠っていた敦樹くんは、物音で目を覚まします
  物音は台所の蛇口から出る水の音でした
  敦樹くんは、静かに襖をあけて台所の様子を伺います

〇安アパートの台所
  台所ではお父さんが必死に何かを洗っています
  敦樹くんに見られている事には気づいていません
三崎智哉「抵抗するからだ」
  敦樹くんは、目を凝らしてお父さんが洗っているものを見ます
  それは包丁でした

〇アパートの玄関前
  2日後、部屋に警察の人が来ました

〇安アパートの台所
刑事「一昨日の夜、付近で若い女性が襲われてバッグを盗まれる事件が起きたんですが、何か気づいたことはありませんか?」
三崎智哉「いやー、もう寝てたので何も知りません」
刑事「そうですか」
刑事「あ、息子さんは何か知りませんか?」
三崎敦樹「えっ、あの・・・」
三崎智哉「あー、こいつも寝てたんで何も知りませんよ」
三崎智哉「忙しいんで、もういいですか?」

〇田舎の一人部屋
三崎敦樹「どうしよう、お母さん・・・」
  アパートを出ていくとき、お母さんは敦樹くんにこう言い残しました。
敦樹の母「お母さんはもう限界」
敦樹の母「敦樹にはお父さんは暴力振るわないから、大丈夫よ」
敦樹の母「ごめんね、敦樹」
  お母さんの言葉通り、しばらくはお父さんも敦樹くんには暴力を振るいませんでした。
  でも少し前に仕事を辞めてから、敦樹くんにも暴力を振るうようになりました。

〇ゆるやかな坂道
黒沢任「今日の算数、ぜんぜんわからなかったよー」
三崎敦樹「教えようか?」
黒沢任「マジで?助かる!サンキュー♪」
黒沢任「ん?」
  その時、任くんは道に落ちているものに気がつきます
  それは大きな赤い本でした
黒沢任「もしかして、これって・・・」
  任くんは、本を拾って開きます
黒沢任「やっぱりそうだ!名前が書いてあってその横に○と×が書いてある」
黒沢任「きっと○が良い子で×が悪い子なんだ」
三崎敦樹「サンタクロースが持っている本ってこと?」
黒沢任「うん、きっとそうだよ。ちょっと見ちゃおう」
三崎敦樹「えーやめなよ」
黒沢任「大丈夫だって」
黒沢任「あ、やった!○が付いてる!」
黒沢任「アッキーは・・・」
  そこで任くんは、急に本を閉じてしまいます
三崎敦樹「どうしたの?」
黒沢任「これ偽物だよ」
三崎敦樹「×が付いてたんだね?」
黒沢任「アッキーが悪い子のわけないじゃん!」
  任くんは、本を道に叩きつけます
黒沢任「気にすんなよ、アッキー。きっと誰かのいたずらだよ」
黒沢任「だって、サンタクロースが大事な本を落とすわけないじゃん」
三崎敦樹「うん・・・そうだね」
  任くんは庇ってくれましたが、隠し事をしているから自分には×が付いているんだと、敦樹くんはそのとき思いました

〇教室
  明日のクリスマスイヴの話題で、教室内はにぎわっています
黒沢任「これ・・・」
三崎敦樹「なに?」
黒沢任「良くわからないんだけど、お父さんがアッキーに渡してだって」
三崎敦樹「え?」
  戸惑いながら手紙を開く敦樹くん。手紙にはこう書かれていました
  明日終業式が終わったら、お父さんには内緒で任と一緒に我が家まで来てください
黒沢任「うちのお父さん、明日サンタさんの格好するって言ってるから驚かないでね」

〇綺麗な一戸建て

〇おしゃれなリビングダイニング
三崎敦樹「お邪魔します」
黒沢兵吾「敦樹くん、いらっしゃい」
  敦樹くんは、手紙をポケットから出します。
三崎敦樹「あの、これ・・・」
黒沢兵吾「うん」
黒沢兵吾「任、ちょっと敦樹くんと2人にさせてくれないか?」
黒沢任「はーい」
黒沢兵吾「さて、敦樹くん。早速だけど、君はいま大事な隠し事をしているよね?」
三崎敦樹「えっ」
黒沢兵吾「大丈夫、心配しなくていいよ。実は私は警察の人間なんだ。絶対に敦樹君に怖い思いをさせないって約束する」
黒沢兵吾「だから話してくれないか?」
  そこで敦樹くんは泣き出してしまいます
三崎敦樹「でも、僕、お父さんがいなくなったら独りぼっちになっちゃう」
黒沢兵吾「大丈夫、君が勇気を持って正しいことをすれば、君に×をつけたサンタさんもご褒美をくれるはずだ」
三崎敦樹「ほんとに?」
黒沢兵吾「ああ。きっと君は話してくれると思うから、先に見せちゃおうか」
  任くんのお父さんは、居間のドアを見ます
黒沢兵吾「どうぞ!」

〇部屋の扉
  それを合図にゆっくりと居間のドアが開きます
  そこには、敦樹くんにとって最高のプレゼントがありました。

コメント

  • 健気な子たちですね。友達のために赤い本を偽物だと言い切って捨てる任くんも、友達に相談して負担をかけようという気のない敦樹くんも、優しくて勇敢です。両方にとってハッピーエンドで良かったです!お母さんに名前も絵も無いことで、これは4人の話だという意識が高まり、描写がグッとリアルに感じられました。タイトルも面白いです。私がサンタクロースだと思ってた人も本当はシンタクラースだったのかな???

  • なぜお母さんが友達のお父さんと一緒に…?そういう事ですかね?(笑)すべては友達のお父さんの仕組んだことだったりして…🤔意外にもブラックな展開に妄想が膨らみました😆

  • お父さんが警察だったのですね!それでも一度は置いて出ていってしまったお母さんが戻ってきてくれて安心しました。これから安心して暮らせることが一番のプレゼントです!

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