エピソード5-2(脚本)
〇おしゃれな居間
佐野 つむじ「お母様も変わってなくてよかったです。 少し心配だったのですよ。 お父様はいつもおかしなことを仰るのですから」
佐野 ななほ「も~うちの子って本当にいい子だわ。それに比べて川上家は最近黒いうわさしか聞かないから怖いわ・・・」
佐野 つむじ「そのことに関してなのです。 気になる事があって・・・」
佐野 晃司「すまないな。 遅くなった。 それよりも、面白いやつがいたから連れてきたぞ」
佐野 つむじ「お父様。 面白い方ですか? 一体どなた・・・ は?!」
秀一「・・・ すまん。ばれた」
佐野 つむじ「な、なんでここに!! 待ってお父様この人は悪い人じゃないから!!! 傷つけないで!!!」
佐野 ななほ「あなた・・この人?人でいいのかしら。 この方はあなたの知り合いの方?」
佐野 晃司「あぁ、おそらくな。 ほんとうに見たら見たでわらっちまったよ」
佐野 晃司「大丈夫だ。傷つけねぇから安心しな。 娘の頼みでもやらねぇからな ちゃんと説明するからそんな顔するな」
「・・・?」
〇おしゃれな居間
佐野 つむじ「え?お父様はこの世界の人じゃなかったんですか!?」
佐野 晃司「あぁそうだよ。 俺もこの鬼と同じように異世界から来ている。といった方がいいな」
佐野 ななほ「そうよ~。 あの時も私驚いちゃったわ。 だって自室に侍がいたのよ。 ここはどこだ―って。しかもそれが推しだったんだもの」
佐野 ななほ「発狂どころか夢だと思っちゃったわよ。 そういえば、もう一人いたわよね? 貴方と一緒に来たって人」
佐野 晃司「あぁ・・・ それが川上まゆこだ。あいつは昔からいけすかねぇ奴だったがな。金で人を従わせるようなことしかできねぇ奴だ」
佐野 晃司「あんな奴と結納しろと言われたときは、本当にはらわた煮え繰りかえったよ。 お前に出会えて本当にうれしかったよ」
佐野 つむじ「じゃあ・・・私は異世界の血が入っているってこと? 待ってお父様はいったいどの本のキャラクターなの?!」
佐野 晃司「『妖悲恋話』に出てくる佐野晃司っていうやつさ。名前は今のままだがな。 おれも妖ではあったんだよ。幽霊って形でな」
佐野 つむじ「その話・・・知ってる それに・・・その話は秀一様の『妖恋愛忌憚』の前作って言われているものじゃ・・・」
秀一「あぁ・・・お前あの時の人魂か。いつぞやの俺の寝床に迷い込んできた侍の。 まて、どういうことだ」
佐野 つむじ「『妖悲恋話』は短編集なんです。最近新しく改変されたもので、自宅にもあります。改変前のやつもです」
佐野 つむじ「改変前に人魂の話があったんです。人間だったころに政略結婚で好きな人と結婚できない侍さんが相手の女に恋人を殺されて・・・」
佐野 晃司「その躯を抱いて自殺し、いまだにその魂が彷徨っているっていう話だろ? その自殺の時に・・・俺はこの世界に来たんだが・・・」
佐野 晃司「どうやらこの鬼の所では人魂にしっかりとなっているらしいな。 やはりどこかでねじ曲がったな」
佐野 つむじ「・・・そのことで聞きたいことがあったんです。 『学園の歴史』というものの中に、『川上まゆこ』という人の名前を見ました」
佐野 晃司「やっぱりか・・・ 出資者代表とでも書いてあったのか? にしてもおかしいな。 そんなことする必要性なんて・・・」
秀一「川上るなという女がいる。 あいつは恐らくその女の娘であろう」
秀一「あの女・・・学園でこいつの立場が悪くなるように噂をあちこちでばらまいている」
佐野 ななほ「どういうことよ!!! うちの娘が何でそんな扱いを・・・ 学園に抗議するわ!!」
佐野 つむじ「お母様・・・私は平気です。 正直、私も推しが目の前にいること自体が驚きでそれどころじゃないんで・・・」
秀一「くはは!! お前は面白いな。 ふむ・・・人魂であった貴様が人を気に入った理由が何となくわかるな」
秀一「名乗り遅れた。 俺は酒吞童子の長である秀一という。 訳あってこの世界に落とされ、現在あなた方の娘の所で厄介になっている」
佐野 晃司「それは構わないよ。 娘も推しが来て驚いただろうがそこは俺たちの娘だ。 臨機応変に対応してくれているだろう」
佐野 晃司「それよりも・・・ ななほ、学園に電話をするのはやめなさい。かわいい顔が台無しだぞ」
佐野 ななほ「私達の娘がそんな扱い受けているのよ!!! 抗議しないでどうするのよ!! こんな時にのんきに口説かないで!!」
佐野 晃司「いい考えがあるから。 怒らない。怒らない」
「いいかんがえ?」