#1 破天荒な思いつき(脚本)
〇西洋の城
燦々と輝く光、そして豊かな自然が栄える広大な土地。
ここは人間界とは別時空にある妖精の国・・・
名を、マメデッポパラダイ王国という。
かなり珍妙な・・・・・・失礼、神妙な名を持つこの王国の中心にそびえ立ち、民のシンボルとして威光を放つこの城こそ・・・
セイント・バーミリオ・プリエステス城である。
──よかった、城の名前はまともで。
──兎にも角にも、この城の一室・・・
窓際部署である『観光課』に務める、2体の妖精のよもやま話から、この話は始まる。
『観光課』。それは妖精たちが人間界へのレジャーを楽しむためのプランニングの立案を手がける部署。
では、あるのだが。
〇小さい倉庫
チャーブールーム「──って、なんなんだよォ! このボロ部屋はよおッ!」
ハンティン「し、仕方ないだろうよ・・・ ほら、ちょっとさ、何か・・・城を立てるときに色々足りなかったんだろ・・・予算とかさ・・・」
チャーブールーム「仕方ないじゃねえよ! もろ倉庫じゃねえかよここ! 城の外観と内観がミスマッチすぎんだよッ! 誰が施工したんだよッ!」
ハンティン「──ま、まあ、そんな気を尖らせなくても・・・ あ!そうだ、これあげるよ、これ!」
チャーブールーム「ん!? これは──」
チャーブールーム「ビールじゃねぇか! 人間界における史上最強超絶最高の嗜好品! でかしたぞ!」
ハンティン「へへ・・・それほどでも・・・」
ハンティン(ふう、危なかった・・・ こいつ、すぐスイッチ入っちゃうからなあ・・・ 人間界行ってる知り合いのツテがなきゃ、ヤバかったよ)
チャーブルームは、ビール缶を足で器用に開けると、仁王立ちのまま、中身を飲み干していく。
俗にいう、らっぱ飲みである。
──言っておくが、彼らは一応、"仕事中"である。
チャーブールーム「──ッ、カァァァァッ! 全神経がプリン体を得て活性化したぜ!」
チャーブールーム「やっぱこれだからやめらんねえよな! もうさ、俺こいつなしじゃ生きてけねえよ、うん!」
ハンティン「あー、良かったなー、うんうん」
チャーブールーム「──あ!ビールの勢いで思い出した事があるんだよ、これ見てみろよ、これ!」
ハンティン「あ!これ、この国の変なネタばっか集めてる雑誌だろ?よく作るよなー、こんなの・・・ どれどれ・・・」
【超簡単!今すぐ3ステップでできる!あざとい妖精ぶるまいマスター講座!】
【徹底追求!独占インタで明らかとなった、キラキラ王室がひた隠す"決定的確執"────」
【やらせ・忖度・買収 "妖精アイドル界の登竜門"の惨状!元関係者が暴露した第39回メロメロステージの陰惨な舞台裏とは?】
ハンティン「いやこんなのどこが面白いんだよ」
チャーブールーム「いやそこじゃねえって、 ほら!ここ!このページ!」
【トレンド特集!いま妖精界にて空前の大流行!人間界の危機を一緒に救うフィールドワーク"魔法少女"とはなにか!?】
ハンティン「魔法、少女・・・? それがどうかしたの?」
チャーブールーム「いやあさ、俺ら「観光課」もピンチじゃん、色々と・・・ だから魔法少女をスカウトしてさ、一発逆転!ってわけだ」
ハンティン「──いやごめんマジで全然話が読めねえんだけど。 この話は酔いが覚めてからやろうぜ」
チャーブールーム「だからさ、今流行ってんだよ! 妖精が人間界の女の子スカウトして、一緒に活躍しよう!・・・って動き! トレンドだぜ!?」
ハンティン(そーやってすぐトレンド取り入れようとして「観光課」の株下げまくったのどこのどいつだよ・・・ だから窓際行きになったんだよ)
チャーブールーム「あー!俺もさ、かわいい女の子とパートナー組みたいなー!」
チャーブールーム「そんでさ、「わたし、チャーくんの為に頑張るよ!」とか「チャーくんには絶対、手を出させない!」とか言われたいよ!」
チャーブールーム「そんでさ、「チャーくんだーいすき☆」・・・なーんてさ、いわれたいよなー、こう、ぎゅってされてさー。そんで・・・」
ハンティン「おい。 おーい。 戻ってこーい」
チャーブールーム「──はっ!いかんいかん。 ・・・まあ、なんだ・・・ そうっ!観光課の未来は俺たちにかかっている!」
ハンティン「その未来はどうにかなっちゃいそうだけどな」
チャーブールーム「というわけでハンティン! 君には今から人間界に飛んでもらう!」
ハンティン「──は?」
チャーブールーム「良さげな子をヘッドハンティングして有名になったら観光課の広告塔になってもらおう! そしたら万々歳の巻き返しジャイキリだ!」
ハンティン「だ、だからもうやめよ、この話は。 水汲んでくるからそれガブガブ飲めよ、な?」
チャーブールーム「はい、これがスターターキットね。 これ高かったからさ、大事に使えよー! ・・・分割払い19回だったんだからさ」
ハンティン「──持てるわけねえだろこんなの!? クチバシ折れるぞおい! もしぶち折れたら慰謝料ふんだくるからな!?」
チャーブールーム「いやいや、誰も持てなんて言ってねえよ! 荷物はお前のサイズに合うよう、ちゃーんと縮小できる! って訳で・・・!」
ハンティン「おい、それ、まさか──!?」
チャーブールーム「──ぽちっ!」
ボタンが押された途端、周りを吹き飛ばすような爆風とともに、ハンティンはスターターキットごと、飛び立った。
その様子は、まるでロケットのよう。
彼の体は天井を突き破り、上へ上へと昇ってゆく。
チャーブールーム「じゃあなー! イイ子見つけたら紹介してくれよー! 頼んだぜぇ〜!」
〇地球
ハンティン(あーあ。 こんなはずじゃなかったんだよ、俺・・・.)
ハンティン(せっかく「観光課」の仕事に就いたってのにさあ・・・ 無茶振りもいいとこだよ。 あー、胃がキリキリしてきた、イテテテ・・・)
ハンティン(にしてもさ、キレイな星だなあ・・・ ここだったら、多少はマシかも・・・ ほら、「空気も綺麗、水もおいしい」ってよく言うし)
ハンティン「ま、あんな仕事なんてさらりと辞めて、新天地に逃げちまうのもアリ、だな! ははっ!」
──しかしこの時、ハンティンは気づかない。自らの身体が、地球の引力に引き寄せられつつある事を。
2匹の会話がとても人間臭く、とてもおもしろかったです。ハイテインが引き寄せられている星が私達の住むこの地球だとしたら、とても嬉しいです!
チャーブールームさんとハンティンくんのやりとりが、とても楽しかったです😄
ハンティンくんが常に冷静で的を得た発言をするところとかおもしろかったです🤣