#プロローグ(脚本)
〇空き地
そこは、不安定な町であった。
かつては、三千世界をたゆたっていたとされ、
現世に繋ぎとめる楔を打たれた今もなお、
町は、そのあわいに揺らぐ。
なればこそ、異界は常に隣人であり、
怪異もまた、しかり。
雑踏の中には、
人ならざる者がひそりと混ざり、
ふらりと路地を曲がれば、
異質な町並みや怪現象とまみえる。
ゆえに、人々は呼んでいた。
月萩町という、
その町の名にちなみ、こう呼んでいた。
ツギハギのまち、と──
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これは、
人も、事象も、町並みも、
すべてがツギハギだらけの町で、
わたしたちが紡いでいく物語である。