〇クリスマスツリーのある広場
デ・ビル「私のことは『ビル』と呼んでください」
デ・ビル「アナタは──『音夢』デショ？」
デ・ビル「私は音夢サンとは仲良くしたいのです」
音夢(ネタム)「この姿でも俺だと分かるなんて、」
音夢(ネタム)「ただの頭のオカシイ外人じゃなさそうだな！」
音夢(ネタム)「ビルが悪魔だとして」
音夢(ネタム)「そのカードを俺に渡して、何をする気だったんだ？」
デ・ビル「このカードは『デビルカード』」
デ・ビル「この世に絶望した人間を悪の道に誘う審判のカードです」
デ・ビル「音夢サンはあの時、自分には才能が無いと絶望していましたよね」
デ・ビル「そして、私が召喚されました」
音夢(ネタム)「俺は悪魔を召喚するくらい、地にオチてたってことかよ！」
音夢(ネタム)「でも、俺はあのカードは捨てたぞ？」
デ・ビル「それは本当に驚きました」
デ・ビル「フツウの人間ならばあのカードの魅力に勝てず、取り憑かれるハズなのデス！」
音夢(ネタム)（そういえば、あの時）
音夢(ネタム)（『拾うな』 と言う声が聞こえた気がした）
音夢(ネタム)（あれは、何だったんだろう）
デ・ビル「ただ、それを上書きする、もっと予想外のことが起きました」
デ・ビル「私がコンビニのおばちゃんに渡した湿布が、音夢サンの手に渡ってしまったことです!!」
音夢(ネタム)「あれ、ロキソニン湿布じゃなかったの!?」
デ・ビル「あれは『自分の痛みを他人の健康と入れ替える湿布』」
デ・ビル「腰痛くらいなら、そのまま痛みをすり替えるだけなのデスが」
デ・ビル「今回は痛みが命の危機に瀕したため、近くに居た健康な優海サンが標的となり」
デ・ビル「丸ごと命の交換をすることで死を回避したようですね！」
音夢(ネタム)「何だよそれ!?」
音夢(ネタム)「それじゃあ、優海と俺の入れ替わりは」
音夢(ネタム)「全部、俺のせいだったのかよ!?」
音夢(ネタム)「どうやったら優海を元に戻せるんだ？」
デ・ビル「今戻れば、アナタが意識不明の重体になりますが」
デ・ビル「それでも戻りたいと？」
音夢(ネタム)「構うもんかッ！」
音夢(ネタム)「優海を傷つけてまで、自分だけ助かりたいとか思えねーよ！」
デ・ビル「微笑ましい友情？ですねえ」
デ・ビル「それではこうしましょう」
デ・ビル「クリスマスまでに優海サンの姿のままで」
デ・ビル「緋色さんと音夢サンを仲直りさせてください」
音夢(ネタム)「緋色と・・・!?」
音夢(ネタム)「ざけんな！」
音夢(ネタム)「あれ？ 今、本気で殴ったハズなのに??」
デ・ビル「無駄なことは止めてくだサイ」
デ・ビル「私は、音夢サンと仲良くしたいと言ったでしょう？」
デ・ビル「本来ならば音夢サンは刺された後、 『膵臓がん』が発覚してすぐに死ぬ運命でした」
音夢(ネタム)「すっ膵臓がん・・・!?」
デ・ビル「ストーカーからの刺殺、癌からの病死。 ２つの死を引き延ばせたのは私の力です」
デ・ビル「最後に、ヒトの欲望を剥き出しにするデビルカードで遊んでほしかったのですが」
デ・ビル「まあ、起死回生、一発逆転の優海救出ゲームも面白いです！」
音夢(ネタム)「さっきから黙って聞いてりゃ」
音夢(ネタム)「人生をゲームだと!?」
音夢(ネタム)「どこまでも馬鹿にしやがって!!」
デ・ビル「ゲームをやらないという選択肢も、モチロンありマス」
音夢(ネタム)「いいか」

〇炎
音夢(ネタム)「優海のまま、後悔して朽ち果てるより」
音夢(ネタム)「俺は、俺の運命を全うする！」
音夢(ネタム)「例え、それがバットエンドでもな！」

〇綺麗な一戸建て

〇女の子の部屋
音夢(ネタム)「とりあえず、緋色と俺を仲良くさせる方法を考えなきゃ」
音夢(ネタム)「う〜ん」
音夢(ネタム)「無理だな！」
音夢(ネタム)「きっと優海も、こんな気持ちだったんだろうな・・・」
音夢(ネタム)「十年の溝を、一ヶ月で埋める方法か〜」
音夢(ネタム)「う〜ん」
音夢(ネタム)「やっぱり無理だわ！」
音夢(ネタム)「無理ゲーにも程があるぜ！」
音夢(ネタム)「しかも膵臓ガンって・・・」
音夢(ネタム)「最近、確かに腰にキテたけど」
音夢(ネタム)「ただの腰痛じゃなかったのか」
音夢(ネタム)「俺の人生、破天荒過ぎる!!」
「優海、家電に千代さんから電話来たよ！」
「音夢クンが目を覚ましたんですって！」
音夢(ネタム)「優海が目を覚ました!?」
「・・・まだ寝ぼけているのかしら。 ホントにアンタ、大丈夫？」

〇総合病院

〇田舎の病院の病室
音夢(ネタム)「ね、音夢クン？」
優海(ゆうみ)「・・・」
優海(ゆうみ)「ばあばは買い物に行ってもらったから、普通に話しても大丈夫よ」
優海(ゆうみ)「中身は音夢クン、なんだよね？」
音夢(ネタム)「変な気分だよな。 自分を見ながら喋るのって」
音夢(ネタム)「優海の意識が無い間に、色んなことがあったんだ」
音夢(ネタム)「信じられないし、すごく混乱すると思うけど、とりあえず全部聞いて欲しい」
優海(ゆうみ)「ホントに漫画みたいな話だね」
優海(ゆうみ)「でも、私は音夢クンのこと、信じるよ！」
音夢(ネタム)「ありがとう！」
優海(ゆうみ)「その悪魔の湿布って、もしかして腰にまだ付いているのかな？」
優海(ゆうみ)「・・・ある！」
音夢(ネタム)「悪魔カードだ！」
音夢(ネタム)「俺がコンビニのおばちゃんから受け取った時には、ただの湿布だったのに・・・」
音夢(ネタム)「クソ、予想外とか言ってたけど、 全部ビルの思うツボだったのかよ」
優海(ゆうみ)「それで、１ヶ月以内に音夢クンと緋色クンを仲直りさせないと」
優海(ゆうみ)「私たちは一生このまま、ってことなのね」
音夢(ネタム)（俺の癌のことは、優海には話さない方が良いよな・・・）
音夢(ネタム)（ただでさえ入れ代わりが戻せる保証もないのに、無駄に怖がらせるのは可哀想だ）
音夢(ネタム)「なんか、巻き込んでしまってスマン」
優海(ゆうみ)「何言ってるのよ、音夢クン！」
音夢(ネタム)「え？」
優海(ゆうみ)「私が音夢クンになれば、緋色クンと仲直りができるよ！」
音夢(ネタム)「え？え？」
優海(ゆうみ)「10年の仲違いが１ヶ月で解決できるなんて♪」
優海(ゆうみ)「ラッキーすぎ！」
優海(ゆうみ)「ビルは悪魔じゃなくて、天使なんじゃい？」
音夢(ネタム)「オイオイ・・・何でそんなにポジティブ思考なんだ!?」
優海(ゆうみ)「音夢クンがネガティブすぎなだけよ」
優海(ゆうみ)「そうと分かれば、ノンキにしていられないわ！」
優海(ゆうみ)「早速、今から２人の仲良し作戦を開始するから、」
優海(ゆうみ)「音夢クンも私をサポートしてよね！」
音夢(ネタム)「うええ〜!?」
千代(チヨ)「あれま！ 音夢、まだ起きちゃ駄目でしょう」
優海(ゆうみ)「ヘーキヘーキ☆」
優海(ゆうみ)「ばあば、私時間が無いから、もう退院するね〜☆」
優海(ゆうみ)「先に帰ってるよ♪ バイバ～イ！」
千代(チヨ)「・・・何だか人が変わったというか」
千代(チヨ)「あんなに明るいコではなかったんだけどね」
音夢(ネタム)「そ、そーお？」
音夢(ネタム)「意外と私たちの前ではあんな感じだったよ！」
音夢(ネタム)「臨死体験したら性格が変わるとか言うしね〜！」
音夢(ネタム)（フォロー苦しい！）
音夢(ネタム)（こんなんでホントに大丈夫か？）

〇大教室
優海(ゆうみ)「おはよー！ 今日は寒かったね」
優海(ゆうみ)「そろそろ初雪も近いのかな？」
優海(ゆうみ)「出かける時に何着て行こうか、迷っちゃうよね！」
緋色(ヒイロ)「・・・」
「今日の音夢クン、機嫌が良いのかな？」
「ずいぶん明るいっていうか、よく喋るよね！」
緋色(ヒイロ)「音夢・・・まさか刺された時に、頭でも打ったのか？」
優海(ゆうみ)「いや、でも考えが変わったのは確かかな」
緋色(ヒイロ)「考えが？」
音夢(ネタム)「ダー！ ゆう・・・」
優海(ゆうみ)「おはよー優海♪」
優海(ゆうみ)「今日も可愛いねッ♥」
音夢(ネタム)「ゴホッ・・・音夢クン、ちょっとお話があります!!」
優海(ゆうみ)「はーい♥ まったね〜、緋色クン！」
緋色(ヒイロ)「『まったね〜』？」
緋色(ヒイロ)「『緋色クン』だと・・・？」
緋色(ヒイロ)「やっぱりアイツ、 どっかに頭のネジを落としてきたんだ！」

〇中庭
音夢(ネタム)「オマエ、何やってんだ！」
音夢(ネタム)「いきなり話しかけちゃダメだろ！」
優海(ゆうみ)「い〜じゃん。 時間も無いし、仲直りは早くしなきゃ！」
音夢(ネタム)「あのな、いきなり軽くなったら俺の人間性が疑われるだろ？」
音夢(ネタム)「こういうのはもっと慎重に、相手の気持ちを考えてだな・・・！」
優海(ゆうみ)「・・・」
音夢(ネタム)「なんだよニヤニヤしやがって」
優海(ゆうみ)「やっぱり音夢クンも、緋色クンと仲直りしたいんだね♪」
音夢(ネタム)「ハア？ 何でそうなるんだよ」
優海(ゆうみ)「だって、興味無い人間ならそこまで考えないよ」
優海(ゆうみ)「目的を達成出来れば、手段はどうでも良いでしょ？」
優海(ゆうみ)「でも、音夢クンは緋色クンの気持ちが大事なんだね！」
音夢(ネタム)「お・ま・え・なあ・・・」
音夢(ネタム)「・・・」
音夢(ネタム)「勝手にしろ！」
優海(ゆうみ)「──ったく」
優海(ゆうみ)「素直じゃないんだから」
優海(ゆうみ)「言われなくても、勝手にしますよ♥」
優海(ゆうみ)「優海の仲良し大作戦、開始なのじゃ！」
優海(ゆうみ)「もしもし、緋色？ 俺、音夢だけど・・・」