エピソード1(脚本)
〇黒
あれ?
彼は誰だったっけ?
おかしいな・・・・・・確かにどこかで会っている筈なのに・・・・・・
ダメだ・・・・・・何も思い出せない・・・・・・
どうして、何も覚えていないんだ?
〇古い図書室
〇古い図書室
御崎紫苑「あの? 大丈夫ですか?」
野原春優「あぁ、すまない。前にもどこかで君に会ったような気がして・・・・・・」
御崎紫苑「・・・・・・」
野原春優「まぁ、もし、どこかで会っているなら忘れようがないと思うし、気にしないでくれ」
御崎紫苑「と言いますと?」
野原春優「なかなかの美形だし、感じも良さそうだから?」
御崎紫苑「そんな、先輩こそモテるんじゃないんですか?」
御崎紫苑「例えば、幼馴染の人とかバイト先の人とか仲良くなった人とか」
野原春優「・・・・・・」
野原春優「・・・・・・いや、人並みかと思うけど」
御崎紫苑「それ、相当モテている人の台詞ですよ」
野原春優「あ、そうか」
野原春優「確かに飲み会とかでも人並みに飲みますなんて言えば、かなり飲むヤツだからな」
御崎紫苑「です、です。全く飲めない人は全然とか飲まないって言いますからね」
御崎紫苑「でも、良いじゃないですか」
野原春優「え?」
御崎紫苑「先輩、隙がなさそうだけど、モテるの分かる気がします」
御崎紫苑「かなり先輩って可愛い人ですね」
御崎紫苑「おまけに、エグい程、スペック高いって言っていましたよ」
野原春優「可愛い・・・・・・って・・・・・・。しかも、誰が言っていたんだそんなこと」
御崎紫苑「うーん、そうですね。梅園さんに、桃井くん、綾女くん、菊池先生・・・・・・」
御崎紫苑「あ、葛城(かつらぎ)さんからも聞いたことがあります」
御崎紫苑「あのカメラマンの!!」
野原春優「あぁ、葛城さんか」
野原春優「でも、驚いたな。君は葛城さんとも面識があるんだな」
御崎紫苑「えぇ」
御崎紫苑「色々、お世話になったこともありますしね」
野原春優「そうか」
野原春優「あ、今、何時だ?」
御崎紫苑「えーと、18時前くらいでしょうか?」
野原春優「大変だ。もう戸締まりして行かないと・・・・・・」
御崎紫苑「あ、僕も手伝いますよ」
野原春優「すまない・・・・・・じゃあ、俺はこの辺を片づけるから君は窓を閉めてくれ」
御崎紫苑「分かりました」
〇黒
〇古い大学
野原春優「悪いな。折角、サークルまで来てくれたのに、殆ど話だけで終わってしまって」
御崎紫苑「いえいえ、僕の方こそ急に押しかけてしまって・・・・・・」
御崎紫苑「あ、誰かと待ち合わせされているなら僕のことはお構いなく・・・・・・」
野原春優「いや、そういう訳じゃないんだ」
野原春優「実は、今日は母さんの誕生日でケーキを買ってきてくれっての話なんだ」
御崎紫苑「お母様の?」
野原春優「あぁ、今年は俺がケーキ係だったんだが、ちょっと出遅れたかもな」
野原春優「まぁ、最悪、駅のところの店に寄って帰るから大丈夫だよ」
御崎紫苑「・・・・・・あの。そのケーキって拘り、あったりします?」
野原春優「いや? ないかな」
野原春優「特にアレルギーがある訳でもないし、まぁ、強いて言えば甘すぎなければ」
御崎紫苑「それなら、良かった!」
野原春優「?」
御崎紫苑「もし、良かったら、僕の知り合いがやっているケーキ屋があるんですけど」
〇空
「そこに行きませんか?」
〇繁華な通り
御崎紫苑「えーと、次の道を右です」
〇狭い裏通り
野原春優「へー、こちら側ってあまり来たことがなかったけど、こういう感じになっているんだな」
御崎紫苑「えぇ、結構、知られていない店とかあるんですけど、良い店も多いですよ」
野原春優「そうか。君はなかなか情報通なんだな」
御崎紫苑「君・・・・・・ですか」
野原春優「?」
御崎紫苑「いいえ、あんなに熱い夜を過ごしたのに貴方は忘れてしまったのかと思うと切ないですね」
野原春優「熱い夜・・・・・・」
御崎紫苑「えぇ、熱くて、甘くて、苦い夜」
〇川沿いの原っぱ
〇川沿いの原っぱ
〇川沿いの原っぱ
〇狭い裏通り
野原春優「君は誰なんだ・・・・・・」
御崎紫苑「今はまだその時ではないですが、近々、分かると思いますよ」
御崎紫苑「あ、ここです」
〇黒
〇カフェのレジ
藤谷洋近「いらっしゃいませ・・・・・・って、誰かと思ったし」
御崎紫苑「ふふ、今日はお客さんとして来ましたよ」
藤谷洋近「あ、本当だ。紫苑の彼氏もいるじゃん」
野原春優「え? 彼氏って?」
御崎紫苑「ヒロさんのジョークですよ? まぁ、僕は構わないですが・・・・・・」
野原春優「え・・・・・・構わないって・・・・・・」
御崎紫苑「言葉の通りですよ。春優(しゅう)さん?」
野原春優「・・・・・・」
藤谷洋近「はいはいはい、それ以上は別の店でやってくれる?」
藤谷洋近「俺、次の仕事あるから店、閉めなきゃだし」
野原春優「あ、すみません」
野原春優「じゃあ、この苺のショートケーキを2つとブルーベリーのタルトを2つ・・・・・・」
御崎紫苑「僕はチーズケーキと苺のタルト、マスカットのゼリーケーキと・・・・・・」
藤谷洋近「はいはい、どうせ処分しなきゃだし、全部持っていきなよ」
藤谷洋近「彼氏くんもお買い上げ以外のヤツはサービスしておくから」
藤谷洋近「もし、気に入ってくれたら、またご贔屓にしてね」
野原春優「あ、はい。ありがとうございます・・・・・・」
御崎紫苑「じゃあ、また連絡しますね」
藤谷洋近「へーい、ありがとうございました」
藤谷洋近「・・・・・・」
藤谷洋近「こちら藤谷。もしもし、接触した。うんうん」
藤谷洋近(しかし、連続殺人事件の容疑者になって聞いていたけど、そんな風には見えなかった)
藤谷洋近「まぁ、俺には関係ないか。えーと、次の仕事は・・・・・・」
藤谷洋近「めんどくさ・・・・・・」
〇空
〇個別オフィス
青柳蒼護「はい、青柳(あおやぎ)です」
青柳蒼護「分かりました。その話は後程にでも詳しく」
青柳蒼護(こちらの仕事はもう1歩で終わる。で、こちらのは葛城さんに頼むか)
「そう・・・・・・くん」
青柳蒼護(明日、アポが入っているのは5件。少し3人で捌くのは難しいか)
「・・・・・・ごくん」
青柳蒼護(期限の交渉次第か。もう1人、人を雇うか・・・・・・)
「蒼護(そうご)くん!!」
布袋理人「ったく、やっと返事した!!」
青柳蒼護「おや、理人(りひと)さんじゃないですか?」
青柳蒼護「どうしたんですか? 今日の打ち上げまではまだ20分程が・・・・・・」
布袋理人「おや、理人さんじゃないですか? じゃない!!」
布袋理人「また休憩なく働いていたんでしょ?」
布袋理人「君が完璧超人なのは分かってるけど、そんなんだとすぐに死ぬよ?」
青柳蒼護「ふふ、おかしな理人さん」
青柳蒼護「大丈夫ですよ。マネジメントも欠かしていませんから体調も仕事も完璧です」
青柳蒼護「私が人間でなかったら、こんなに面倒でなくて良かったのにと思いますがね」
青柳蒼護「人間とは不便なものです」
布袋理人「その意見には半分くらい同意するけど、全ては同意できないよ」
布袋理人「まぁ、君の人生にとやかく言う権利なんて持ち合わせていないんだけどさ」
青柳蒼護「・・・・・・ありがとうございます。そのお気持ちだけで十分ですよ」
布袋理人「・・・・・・」
布袋理人「たまに自分の語彙力が低いなって思う時があるよ」
布袋理人「本当に歯痒い・・・・・・」
青柳蒼護「ご冗談を。押しも押されもせぬ売れっ子小説家の先生が」
布袋理人「夢の印税生活。そんなことを考えている時が僕にもありましたって、まだその案件を?」
青柳蒼護「えぇ、彼にも困ったものです」
青柳蒼護「ただ、彼にヘソを曲げられると全体の仕事の4割は回らなくなるので・・・・・・」
布袋理人「あぁ、まぁ、確かに彼は特に優秀だからね。御崎くんって言ったかな?」
青柳蒼護「えぇ、彼はあの、青年に夢中なんですよ」
〇黒
〇個別オフィス
青柳蒼護「3人もの女性が殺された事件の容疑者だった青年。野原(のばら)春優に、ね」
見事なまでにイケメンしか出てこない謎めいたストーリー、いいですね。各々が各々の密か事や事情を抱えているような匂わせ方が絶妙でした。それらがこれからどんなふうにリンクして展開していくのか楽しみです。