悪代官の密約

ガンダーラ磯崎

第1話「闇の新年会」(脚本)

悪代官の密約

ガンダーラ磯崎

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〇黒背景
鬼ケ原「それじゃあ、跡目が決まったっちゅう事で、 乾杯と行きまっか?」
兵頭「へい!そうしまひょ!」
鬼ケ原「ほな頼むで」
首塚「へい」
首塚「この度、跡目を継ぐことになった 首塚です」
首塚「縄張りを全力で守り抜きたいと思っとる 所存でございます」
首塚「とりあえず今日は、固苦しい話は 置いときまして」
首塚「今年も皆さん、無事で1年迎えられますように」
首塚「乾杯!」
「カンパーイ!!」
鬼ケ原「どや?首塚はんのショバは?」
首塚「風通しが良くなって来ましたで」
鬼ケ原「そうでっか」
兵頭「首塚はんのショバ、邪魔もん追い払って 平和になりましたな」
鬼ケ原「昔は、貧乏くじ引いた言われとったのにな!」
愛菜「お待たせ致しました!」
愛菜「おつまみ三種盛り合わせになりまーす!」
鬼ケ原「姉ちゃん、可愛いのう」
愛菜「あ、ありがとうございまーす!」
鬼ケ原「孫の嫁にならんか?」
愛菜「え?そ、そんな・・・」
兵頭「ここの店員さんみんな可愛いでっせ」
鬼ケ原「ほな、違う盛り合わせも つまみたいもんやな!」
愛菜「ご、ごゆっくりしていってくださいませ」
首塚「最近、うちのショバを荒らす連中が 増えとるんですわ」
鬼ケ原「・・・そやな。 あの連中がこれ以上増えてもうたら・・・」
鬼ケ原「ワシんとこも気い抜いてられへんな・・・」
兵頭「首塚はんとこでせき止められへんでっか?」
首塚「コラコラ」
首塚「ワシのショバは、要塞かあ言うねん」
鬼ケ原「そんなええもんとちゃう」
兵頭「そや。ハリボテの城や」
坂田「お待たせいたしましたー」
鬼ケ原「いや待ってへんで」
坂田「ほな、帰りますーってコラッ!」
坂田「唐揚げになりまーす」
鬼ケ原「お姉さん、そんなとこから足出して」
坂田「腕やっちゅうの!」
坂田「ほな、ごゆるりと〜」
鬼ケ原「トンカツ食いたなって来たわ」
兵頭「オバハン見て触発されてまへんか?」
鬼ケ原「君、失礼やで」
兵頭「すんまへん」
鬼ケ原「触発されてたら」
鬼ケ原「角煮を頼むやろうが!」
首塚「そっちの方が失礼でっせ!」
首塚「あ!そや!」
首塚「跡目を継ぐ血判を押さなあきまへんな」
鬼ケ原「きょうび血判なんて押さんでええ」
首塚「そうなんでっか?」
鬼ケ原「認印で充分や」
首塚「せ、せめて実印を押さなあかんのと違いまっか?」
鬼ケ原「確かにそやな」
鬼ケ原「ほならここに実印押してくれるか?」
首塚「こ、これは・・・」
首塚「鬼ケ原はんの借用書でんがな!!」

〇広い厨房
愛菜「坂田さん、あの方達はやっぱりその筋の・・・?」
坂田「え?何て?」
愛菜「いや、あのー・・・ 組長さん達ですよね?」
坂田「うーん・・・組長さんというか・・・」
坂田「班長さんやな」
愛菜「は、班長!?」
愛菜「跡目を継ぐっていうのは?」
坂田「それは首塚さんが町内の班長さんをやる 言うことや」
坂田「順番が回って来たんや」
愛菜「そんな! でも邪魔者を一掃して、 ショバの風通しが良くなったみたいな・・・」
坂田「それは首塚さんちの前が雑木林で 杉だらけやったんやけどな、」
坂田「役所が伐採したから、 風通しがようなった言う事や」
愛菜「も、文字通りだったんですか!?」
坂田「せやで」
坂田「陽当たりもようなった言うてたわ」
愛菜「じゃあ、最近ショバを荒らす連中って?」
坂田「雑木林が綺麗なったからな」
坂田「リスとかヘビが出て来てもうてな」
坂田「家ん中入って来たりしよんねんて」
愛菜「じゃあ、跡目を継ぐ血判ていうのは?」
坂田「回覧板や」
愛菜「か、回覧板!?」
坂田「首塚さん初めて班長やるからな」
坂田「血判押して班長としての覚悟を示したい 言うことや」
愛菜「か、覚悟が過ぎる!!」
坂田「まあ首塚さん、真面目やからな」
坂田「小学校の教師やっててん」
愛菜「あの風貌で!?」
坂田「ちなみに鬼ケ原さんは駅の車掌さん」
愛菜「あの大親分が!?」
坂田「兵頭さんは元宇宙飛行士や」
愛菜「イメージと真逆の吹き溜まりじゃない!!」
愛菜「な、何であんなにアウトロー感 丸出しなんですか!?」
坂田「みんな、定年退職してな」
坂田「やる事無くて、家でBSの任侠映画 ばっかり観とんねん」
坂田「最近アウトローに憧れ出したんやろな」
愛菜「高校デビューじゃなくて、 高齢デビュー!?」
坂田「なんか男のロマンなんちゃうか?」
愛菜「はあ、良かった〜」
愛菜「注文の品を持って行く度に 怖くて震えちゃった」
坂田「愛菜ちゃん、 そんな事より早よ持って行かんと」
愛菜「あ!忘れてた!」

〇黒背景
首塚「まだ来んのか?」
兵頭「ほんまでんな」
鬼ケ原「どないしたんや?」
兵頭「いや、ちょっと・・・」
愛菜「お待たせしましたー!!」
兵頭「やっと来たか」
愛菜「鬼ケ原さん!お誕生日おめでとうございまーす!!」
鬼ケ原「き、君ら・・・・・・」
首塚「早よロウソク消してください」
鬼ケ原「お、おう」
「お誕生日おめでとうございます!!」
鬼ケ原「ほんま嬉しすぎて心臓止まるか思たわ」
首塚「やめてください」
首塚「鬼ケ原さんが亡くなってもうたら・・・」
首塚「回覧板が早う回ってまうやないですか」
兵頭「そりゃ好都合やないか」
兵頭「姉ちゃん、もう良えんちゃうか?」
愛菜「はーい!灯り付けさせてもらいますねー」

〇居酒屋の座敷席
鬼ケ原「何やそういうことかいな」
鬼ケ原「ずーっと停電や思てたわ」
兵頭「すんません」
兵頭「ほんまはケーキ持って来る直前に 灯りを消してくれ言うたはずなんですけど」
首塚「ワシの説明が下手やったみたいで、 上手く伝わらんと」
首塚「段取り間違えてましたわ」
鬼ケ原「ほんまやで」
鬼ケ原「こんな暗いとこで酒呑んだん・・・」
鬼ケ原「闇市以来やで」
首塚「アンタいくつやねん!」

〇黒背景
  ──────酒宴から1時間後─────

〇立ち食い蕎麦屋の店内
鬼ケ原「よっしゃ、そろそろ帰ろか?」
「へい!」
鬼ケ原「おばちゃん、おあいそー」
坂田「ありがとうございました!」
鬼ケ原「釣りは要らへんで」
坂田「ええんですか?」
鬼ケ原「かまへんかまへん」
鬼ケ原「チップや」
坂田「ありがとうございます!」
鬼ケ原「ほな!」
兵頭「ごちそうさんでした」
坂田「ふう・・・」
坂田「あら?何か忘れもんですか?」
首塚「そうそう、おばちゃん?」
首塚「さっきの姉ちゃんに、 うちらのこと言ってまへんやろな?」
坂田「ええ、もちろん」
坂田「ちゃんとカタギの人らやって 言っときましたよ」
首塚「おおきに」
首塚「どこの誰か分からんヨソモンに」
首塚「ワシらの情報知られたら、たまらんさかい」
坂田「分かってます。 この先も「町内会の人ら」で通しますわ」
首塚「ほな!」

〇個室のトイレ
愛菜「やっぱり・・・」
愛菜「もしもし・・・」
愛菜「首塚の一味で間違いないです」

〇広い厨房
坂田「そろそろ締める時間やな」
愛菜「お疲れ様でーす!」
坂田「愛菜ちゃん。 これ見てくれる?」
愛菜「何ですか?」
愛菜「2万円?」
坂田「班長さんらが払った金や」
坂田「チップもくれたわ」
愛菜「ええ。 それがどうかしたんですか?」
坂田「これでは足らへんねん」
愛菜「た、確かに!!」
坂田「さんざん呑み食いして」
坂田「お誕生日サプライズまでしてやったのに」
坂田「「釣りは要らん」て・・・」
坂田「釣りなんかあるか!!」
愛菜「さ、坂田さん、落ち着いてください!」
坂田「町内会に・・・」
坂田「カチ込んだろかな?」
  ————————つづく——————

次のエピソード:第2話「尾行の果て」

コメント

  • 会話の内容やテンポが、まさに豪快なオヤジ感!笑い声ともフィットしていてリアリティがスゴイですね!コワモテさん方も、店員さん方も、何やら裏がありそうな気配ですね

  • この作品は、社会派のストーリーで、現代社会の問題をテーマにしている。登場人物たちが、それぞれの立場で戦い、自分たちが生きる世界を守ろうとしている姿に感動した。また、コワモテな外見とは裏腹に、心優しい一面もあるというキャラクター設定が面白く、読み進めるうちに彼らに惹かれていった。さらに、作品の緻密な描写によって、登場人物たちの心情や緊張感が伝わってきて、読み手を引き込んでくれる。全体的に、非常に面白く読み応えのある作品だったと思う。

  • 台詞回しのセンスがすごいですね🌟
    つい吹き出してしまいました🤣面白い🤣

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