星の歯車

jloo(ジロー)

入学式典(脚本)

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〇大広間
「あの子が・・・・・・船上の催しの最中には見かけませんでしたけど」
「噂では・・・・・・らしいですわよ・・・・・・」
「やだ。もしかして・・・・・・だったりするのかしら・・・・・・」
  私たちが最終的に辿り着いたのは、見上げるほどの天井がある大きな講堂のような場所。
  そこには既に大勢の生徒が椅子に座っており、こちらを見ては噂話をしているようだった。
アンナ・スターブライト「リリスさんも、こちらに座ってください。私は、入学式典の準備を始めないといけませんから」
リリス・ミスティック「は、はい・・・・・・分かりました」
  私は言われるがままに、指定された席に座る。
  周囲を見回してみるが、そこにテイラーの姿は無いようだった。心配になって、思わず溜息をついてしまう。
リリス・ミスティック「まさか、まだ船の中で眠っているなんて事は無いよね」
  不安に駆られ、胸がざわつく。
  だがそんな私の心に構わず、壇上に一人の男性が姿を現すと会場内の空気が一気に引き締まった。
モラン・ハルバート「これより、プラネテューヌ学園の入学式典を始める」
  声が響き渡ると同時に、拍手が巻き起こる。
  その男性の声の迫力から、唯ならぬ威厳のようなものを感じた。
  そして、その予想は実際に正しかったようで・・・・・・彼は自身をプラネテューヌ学園の理事長だと紹介する。
モラン・ハルバート「今年もまた、新たな星たちがこの学び舎に集ってくれたことを嬉しく思う」
モラン・ハルバート「この学園では、己の実力が全てだ。より優秀な者だけが、上を目指すことが出来る」
モラン・ハルバート「外の世界では身分という壁に守られてきたかもしれないが、ここではそれも無い。自分の力だけを頼るしかない」
モラン・ハルバート「君たちには、常に危機感を持って欲しい。自らの力を過信し過ぎず、そして慢心もせず。君たちの歩む道は決して平坦ではない」
モラン・ハルバート「この学園の卒業生、シャーロット・アルケミストのように。一人一人が自分の目的を叶えるために、日々研鑽を積んでほしい」
モラン・ハルバート「それでは、これからの君たちの学園生活に幸多きことを願う。以上をもって、私の挨拶を終わる」
  理事長の言葉に、再び大きな拍手が沸き起こる。
  その厳しくも熱い言葉は、私の中にもしっかりと刻み込まれた。
アンナ・スターブライト「理事長、ありがとうございました。ここからは私、生徒会長のアンナが進行を務めさせて頂きます」
アンナ・スターブライト「皆様、まずは入学おめでとうございます。プラネテューヌ学園へ、ようこそ」
アンナ・スターブライト「既にお察しの方もいらっしゃるようですが、貴女達は、この学園における魔術の派閥の一つである星詠みに属されています」
アンナ・スターブライト「星詠みとは、星と対話することによって魔術を行使する最も基本的な系統です」
アンナ・スターブライト「事前に、適性診断が行われたことは皆様も覚えているでしょう。あれが、派閥を決めるためのテストだったのです」
アンナ・スターブライト「他にも《監視者》《刈り人》等の派閥が存在していますが、これらの所属は貴女達の今着ている制服の色によって示されています」
アンナ・スターブライト「赤は星詠み、青は監視者、緑は刈り人。学園内では、この色の違いを決して忘れないように」
アンナ・スターブライト「各派閥同士が、学園内で関わり合うことは殆どありません。それぞれがそれぞれの魔術の系統を、日々磨くことが重要なのです」
  私は、テイラーのことを思い出していた。
  彼女は、確か青い色の制服を着ていた。つまり、監視者。
  せっかく仲良くなれたのに、離れてしまったのは残念だけど・・・・・・。
  彼女とは、またどこかで会える。そんな、予感がしているのだ。
アンナ・スターブライト「星詠みの指導役は、この私が務めさせて頂きます。何か分からないことがあったら、いつでも相談に来て下さいね」
アンナ・スターブライト「続いては、学園生活についての注意事項です。これを、よく聞いておくように」
アンナ・スターブライト「基本的に、授業は自由参加です。ですが、自分が得意とする分野を磨き上げて貰うためにも積極的に参加するべきです」
アンナ・スターブライト「また、学園敷地内にある《魔獣の森》と呼ばれる場所には、決して近づかないようにしてください」
アンナ・スターブライト「あそこは、多くの危険が潜んでいます。命を落とす危険性もありますからね」
アンナ・スターブライト「他の細かい規則については、お手持ちの冊子を確認しておいて下さい。入学式典は、これで終了です」
アンナ・スターブライト「それでは皆さん、今日から三年間、良き日々を過ごしてください!」
  アンナさんがそう締め括ると、拍手が鳴り響いた。
  そしてそれと同時に、講堂内の照明が眩しいほどに輝きを取り戻す。
  生徒達の談笑する声があちこちから聞こえ始め、私はようやく肩の力を抜いて大きく息をつくことが出来た。
リリス・ミスティック「これから、どうしよう・・・・・・」
  船の催しに参加しなかったことから、私は疎外感を感じていた。
  既に生徒たちにはいくつかのグループが形成されており、今からその輪の中に飛び込むのは勇気がいる。
  ここでじっとしているのも居心地が悪いから、私は学園内を見て回ることにした。

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