記憶の星(脚本)
〇ファンタジーの学園
講堂を出て、真っ先に目に付いたのは学園の屋上に聳える天体望遠鏡。
それを見た瞬間、何だか懐かしさを覚えてしまう。
私の両親は、天文学の研究者だった。
詳しい仕事内容は分からないけど、母にそう教えられたことがある。
〇屋上の隅
父「リリス、星を恐れるな」
巨影霧が起こる前、星空を家族で眺めながら父は私にそう言った。
その言葉が、とても意外だったことを覚えている。
私にとって星とは、空に散りばめられた美しい宝石だったから。
「父さん、それって《魔術》を恐れるなってこと?」
兄さんは、私と違って頭が良い。
うんうんと唸っている間に、父が言おうとしていたことを理解したみたいだ。
父「ああ、その通りだ。この世界は、魔術という大いなる力によって守られている」
父「使い方さえ間違えなければ、人間にとってそれは脅威ではなく恵みとなるはずだ」
「力を、悪用しようとする奴もいるしな。あいつらは、魔術師の資格を持たない悪鬼だ」
父「ノアは心配ないさ。その優しさがあれば、間違った道に進むことは無いだろう」
父「でも、リリス。君は違う」
「え、私?」
「リリスが、優しくないとでも言うのかよ?」
父「違うさ。リリスは、ノアより星にずっと近いところに居るから。だからこそ、注意しないといけない」
「・・・・・・どういうこと?」
父「まだ、二人は小さいから分からないかもしれないな。でも、これだけは覚えておいて欲しい」
父「星は、いつも私たちのことを見ている。だから、悪いことをしたらすぐに見つけられるんだ」
「・・・・・・そうなの?それじゃあ、ちゃんといい子にしてなくちゃ」
「け、結局いつもの説教かよ。真面目に聞いて、損したぜ」
〇らせん階段
幼い頃の記憶が、鮮明に思い出せる。
気づけば私は、屋上へと向かう螺旋階段を上り始めていた。