〇学食
「ひゃ、180！・・・どこから突っ込んで良いか、わからないな」
「・・・レイが優秀なのは知っていたがここまでとは・・・IQって100が平均だっけ？」
「しかも、ここにはそんな生徒が何人もいるのか・・・。でも、なんでそんなことまで知っているんだ？」
　　唐突にレイ個人の秘密を告白された俺は驚きつつも、更に質問を続ける。
麻峰レイ「それは私も特待生だからだ」
麻峰レイ「もちろん学園側は他の特待生の情報を私に直接教えたりはしなかったが、私は中等部からここで暮らしている」
麻峰レイ「断片的に入って来る情報を繋ぎ合わせれば推測も出来るさ」
「ああ！　そういうことか、確かに・・・五年近くこの学園で暮らしているなら、嫌でも情報が入って来るか・・・」
麻峰レイ「そういうことだ。しかし、どんな情報にも、冷静にソースを求めるのは流石、君だ」
麻峰レイ「まあ、話の流れで私が特待生であるのはわかりそうなものだが・・」
「いや、普通に驚いたけど・・・。ところでそれは・・・褒めているのか、呆れているのか・・・」
麻峰レイ「ふふふ、両方だ。もっとも、私としてはそんな君が好きだよ」
「と、と、とりあえず、今までの推測を整理してみよう！」
「二日かそれより少し前に学園内部の何者かが学園データを盗んだか、」
「漏えいさせた可能性があり、学園側は秘密裏にその対策を開始している」
「・・・それに合わせてレイ達の靴を盗む事件も起こった」
「そして実はこの学園には特待生としてIQ150以上の天才がゴロゴロ存在するなど、」
「一般生徒、少なくても俺が知らない秘密がある。で、合ってるかな？」
　　面と向かってレイから好きだと言われたた俺は慌てて話を本流に戻す。
　　もちろん、この場合の好きは男としてではなく相棒としての〝好き〟だとはわかっていたが、
　　何か言わないと舞い上がってしまいそうだったのだ。
麻峰レイ「ああ、そんな感じだ。天才はオーバーだけどな。せいぜい秀才程度だろう」
麻峰レイ「ついでに言うと、私以外の被害者は特待生ではないから、特待生を狙った犯行ではないと思われる」
麻峰レイ「あと・・・特待生に関しては、気心を知り合う前に君に伝えてしまうと、」
麻峰レイ「私を敬遠するのではないかと思って敢えて口にしなかったんだ・・・」
「おお、レイにもそんな気遣いが出来たんだ！」
麻峰レイ「気遣いというよりは、誤解を招かないように情報を逐次投入したと思ってほしい！」
　　初めて見せたレイの女の子らしさを俺は冷やかすが、彼女は即座に反論を返す。
「・・・そっか。ところで、タイミング的に学園のデータ漏えいと靴の盗難は何らの関連があるはずなんだが、」
「それをレイはどう推測しているんだ？」
　　それ以上は藪蛇になると思い俺は話を戻し、最大の謎とも言える二つの事件の関連を問う。
　　何せレイはIQ180なのである、下手にやりあっても言い負かされてしまうだろう。
麻峰レイ「うむ。・・・まず思いつくのは、靴被害者の中に漏えい事件の容疑者がいて、」
麻峰レイ「学園側がそれを特定しようとしている可能性だな」
麻峰レイ「私も一時は靴そのものが欲しいのではなく、人物特定のために盗んだのかと疑ったのだが、」
麻峰レイ「現場に足跡が残っていたのかもしれないが、このやり方は学園側が行なう手段としては稚拙で非合法的だ」
麻峰レイ「学園側ではないとすると、漏えい事件と靴事件の犯人は同一の存在で、」
麻峰レイ「その犯人は何らかの理由で私達、G寮の女子生徒で25㎝の靴を欲する状況にあったと判断するのが合理的だろう」
「なるほど・・で、その何らかの理由とは？」
麻峰レイ「・・・それは、今の段階では私にもわからないな。これから地道に聞き込みを始めて、情報を集めるしかない！」
「そうなると、俺達は漏えい事件と思われる大事件の犯人を追い詰めることにもなるね」
　　さすがのレイも今の状況では、二つの事件を結ぶ決定的な理由は推定出来ないようだ。
　　それでも彼女の返答から捜査続行の意志を悟った俺は確認として指摘する。
　　漏えい事件のような本格的な事件が絡んでいるなら、学園側に任せるのが常識的な考えだからだ。
麻峰レイ「もちろんだ。面白くなってきたじゃないか！」
「レイならそう言うと思ったよ！」
　　ニヒルな笑みを浮かべて答えるレイに俺も頬を崩しながら頷いた。