エピソード25(脚本)
〇おしゃれな教室
昼食時間に新たな事実の認識とこれからの捜査方法を確認し合った俺とレイは、放課後再び行動を開始した。
詳しい事情を知らないクラスメイト達からすれば、
自由時間の多くを二人きりで過ごしている俺達の行動は気になるところだったと思われるが、
既にレイは俺と付き合っていると公言しているので、話題としては下火になりつつあった。
本人が認めてしまえば、それは事実であって噂ではない。噂とは不確かな面があってこそ価値が出るのだろう。
唯一の例外はレイの親友である川島で、彼女だけは揃って教室を出ようとする俺達を引きとめたりしたのだが、
彼女自身も所属するテニス部の練習があったり、
レイが夕食には彼女と二人きりの時間を作ると約束したことで、ようやく納得したのだった。
〇テーブル席
川島からの横やりがあったものの、俺とレイは当初の予定通り、容疑者のリストを作成するために学園中を巡って、
ここ数日間の欠席者や保健室の利用状況を確認する聞き込みを行なった。
学園日報が閲覧中止となっている以上、全クラスを調査対象にする必要があったからである。
「さすがに疲れた・・・」
麻峰レイ「うむ。なかなか狙った学年やクラスの生徒が見つからないから、結局は全ての寮を回ってしまったな」
西の空が朱に染まる頃に必要な証言を集め終えた俺とレイは、
昨日と同じくカフェで最初の一口を味わいながら苦労を分かち合う。
「でも、その分かなり正確なデータが集まった。思っていたよりも病欠者は少なかったし、」
「保健室の利用した生徒もいなかった。犯行時間にアリバイがない生徒は九人だっけ?」
麻峰レイ「ああ、九人だな。・・・だがこれは、一回でもアリバイがなかった人物の数だから、」
麻峰レイ「全ての犯行が同一人物、つまり単独犯として絞った場合にはゼロ人だ」
俺の確認を求める問いにレイは補足を付け加える。
彼女は容疑者達のアリバイの無い時間帯と未遂も合わせると、
計四回あった靴盗難事件が発生した時間帯を組み合わせて、その答えを導き出したのだ。
「それじゃ、生徒の中には容疑者はいないってことか・・・」
麻峰レイ「単独犯と過程すると、そうなるな」
麻峰レイ「何人か・・・この高等部二年B組の佐藤と一年A組の橋本、中等部一年F組の田部、」
麻峰レイ「この三人が複数犯として組んでいたら犯行が可能だが、今の所この三人には接点が見当たらないし、」
麻峰レイ「私を含む被害者達との接点も無いように思える。グレーではあるが、ほぼ白と思っていいだろう」
レイは自身の生徒手帳にピックアップしたデータを俺に提示しながら説明を施す。
指摘した三人はどれも学年、クラス、部活動等が別で確かに接点がないようだった。
〇テーブル席
「白か・・・」
麻峰レイ「生徒の中ではだ。私の生徒達への質問にはには犯行時刻の授業が自習に変更になったりしていないか?」
麻峰レイ「等も含まれていただろう。その答えとカリキュラムを照らし合わせて教師の中で一回でもアリバイがないのが68人いる」
「68人。教師陣は逆に思っていたよりも多いな・・・」
もちろん、俺も生徒だけでなく学園の職員全てが捜査の対象となるのは知っていたが、
教員にそれだけの容疑者がいるのは想定外だった。
麻峰レイ「ああ、元々この学園には中等部を合わせて150人程の教員がいるし、彼らは生徒と違い受け持ちの授業は一日に三つか四つ程度だ」
麻峰レイ「本来なら空いている時間に、職員室で次の授業やテスト等の準備をしていると思われるが、」
麻峰レイ「教員ならトイレや用事で職員室を抜け出しても不自然ではないからな。当然、生徒よりも容疑者は多くなる」
麻峰レイ「これに校内の清掃を担当している管理スタッフの5人も容疑者になるが・・・」
麻峰レイ「靴の窃盗だけでなく、学園のデータ漏えい事件も考慮するなら、重要なデータを扱える教師に比重を置くべきだし、」
麻峰レイ「靴の盗難が全て時間差で起きていることから単独犯である可能性が高い」
麻峰レイ「それを考慮して四回の全てにアリバイがない者を絞りこむと12名となる」
麻峰レイ「つまり、この12人が最重要容疑者だな!」
これまでの結論を口にしたレイは再び生徒手帳を俺に向ける。
そこには彼女が絞り込んだ12人の学園教師の名前が並んでいた。