私だけのサンタさん

ヒナタクチ

私だけのサンタさん(脚本)

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〇クリスマスツリーのある広場
朱音「サンタなんて貧乏なうちに来ないよ...」
  小柄な割にブカブカなお古のジャケットを着ている幼なじみはボソッとつぶやいた。
  その言葉はケーキとプレゼントを楽しみにしている自分にとってなんだかグサッと胸を刺された気分だった。
  でもそれ以上に大好きな朱音の辛そうな我慢している様な顔を見るのがすごく嫌だった。
  その日の帰りの晩、アタシは朱音だけのサンタになろうと決めた。

〇クリスマスツリーのある広場
  10年後の12月24日
  
  アタシと朱音は駅前のクリスマスツリーを眺めていた。
ミドリ「やっぱり今年のイルミもキレイだねー」
朱音「そうだね、ミドリ」
  朱音は微笑んだ後、少し考え込んだ様にしてミドリの顔をじっと見た。
ミドリ「どーした朱音?もしかしてアタシの顔になんかついてる?」
朱音「違うよ〜何となく聞きたいことあったなぁって思っただけ」
ミドリ「えっ朱音、聞きたいことって何?もしかしてアタシにクリスマスデートのお誘いですか?」
  ミドリはニヤニヤしながら朱音の方を見ると朱音は苦笑いして
朱音「残念!違うよ〜」
ミドリ「なーんだ。じゃあ聞きたいことって何?」
朱音「サンタさんの事聞きたくって」
  ドキッ
  
  ミドリは胸の奥が引き締まる様な気分だった。
ミドリ「さ、サンタさんの事で聞きたいことってなんだい?グリーンランド国際サンタクロース協会の事?」
朱音「何それ⁈知らないっ...ていうかサンタクロース協会って...マジでサンタさん協会に入ってるの?ウケる!」
ミドリ「マジで本当にいるんだって、ネットで検索すると出てくるから!ちなみに公認サンタは約120人、日本人も1人いるみたい」
朱音「そうなんだ...じゃあ私の家に来るサンタさんもその協会の誰かだったりして」
ミドリ「えっ」
朱音「ちょっと恥ずかしいんだけど私の家まだサンタさん来るんだよね。私もう16歳なんだけどなぁ〜」
ミドリ「そ、そうなんだ〜」
  焦って返事をしたアタシを見て朱音は...何故か笑顔だった。なんで?
朱音「じゃあ私これからバイトのシフト入ってるからバイバイ〜」
ミドリ「えっクリスマスでもバイト三昧なの⁈(さっきまで知らなかったんですけど⁈)」
朱音「新作のアクセサリー欲しいからその分頑張ってんの!!またね〜」
  そう言って朱音は笑顔で走って行ってしまった。
  遠くに行ってしまった朱音は何故かキラキラ輝いて見えた。

〇女の子の部屋(グッズ無し)
ミドリ(サンタ)「(よし、今年も朱音にバレずにプレゼントを枕元に置こう)」
ミドリ(サンタ)「(にしても...アタシが朱音のサンタになってもう10年目かぁ...早いなぁ)」
  ミドリは朱音の枕元にプレゼントを置いた。プレゼントの中身は朱音が好きなピンク色のポーチだ。
ミドリ(サンタ)「(朱音のお母さんに『プレゼントは500円以内』って強く言われたから高めのプレゼントじゃなくてごめんね)」
  ミドリは朱音のサンタになる為に事前に朱音の両親に許可をもらっていた。
  ただし朱音の両親からは『プレゼントは500円以内にして欲しい』と強く言われていた。
ミドリ(サンタ)「(昔は500円は安いって思っていたけど...今思うとアタシの実家裕福だから高い物送られても困るって思われてたんだろうね)」
  ミドリはスヤスヤ寝ている朱音の顔を見て安心して帰ろうとした...
朱音「行かないで!!」
  アタシは朱音に後ろから声をかけられた。
  
  一瞬何が起きたかわからなくて戸惑った。
ミドリ(サンタ)「えっ、な、何で? というかいつから知ってたの!?」
朱音「そんなの7歳ぐらいの時から知ってたよ」
ミドリ(サンタ)「そんなに早く知っていたのなら何で今まで知らないフリをしてたの?」
朱音「いつまでサンタさんしてくれるのかな〜って思って内緒にしてた!」
朱音「中学生になったら辞めるかなって思ってたけど高校生になっても私のサンタさんしてくれたからそろそろ言わなきゃって思って...」
ミドリ(サンタ)「そうだったんだ...」
  アタシは朱音の話をまだドキドキしながら聞いていた。
  10年間ずっと秘密にしていたことがバレたのは予想外に緊張した...
  ...だったんだけど
朱音「ミドリ...大好きだよ」
  朱音はアタシを正面からギュッと抱きしめてくれた。
  朱音はそんなにスキンシップ好きじゃないのに...何故?

〇女の子の部屋(グッズ無し)
ミドリ(サンタ)「ご、ごめん、アタシ帰らなきゃ!!メリークリスマスまた明日ね!!!!」
  アタシはパニックになって電気をつけて逃げる様に帰ってしまった。
朱音「また明日...ってことは告白の返事は後でって事...かな? でもミドリの事だから勘違いしてそうだし」
朱音「あーあ、クリスマスの日にサンタさんから告白のokもらいたかったなぁ...」

〇クリスマスツリーのある広場
  後日ミドリと朱音は晴れてお付き合いするのだった。

コメント

  • 子どもの頃からずっとサンタさんをやるなんて、よっぽどじゃないと出来ませんよね。
    朱音さんが、恋心に気づいたのはいつ頃なんでしょう。
    秘めていた思いが通じてよかったなぁと。

  • 可愛らしい恋愛のお話♪ふたりともお互いが大好きな様子がどんどん伝わってきて、読んでいて微笑ましかったです。私も恋愛感情ではないけれど子どもの頃からの大好きな親友がいて、彼女が笑顔だと嬉しい。サンタになりたいな〜そんな大好きな友人のことを思い出しながら読みました。

  • 友情が愛情に、そして恋心が芽生えたんでしょうね。格差が差別を生んだりする世の中ですが、みどりの様な優しい子が一人でも多くいる社会であればいいですね。同性愛の理想が描かれた素敵なお話でした。

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