第2章 第3巻(脚本)
〇幻想
あれから、何人か一緒に食事をした。
みんな感じのいい人ばかりで、幾分寂しさが紛れた生活を送ることができた。
でも最終的には、大半がこういう展開になる。
男性「この後、どこかで休憩しない?」
男性2「二人きりになれる場所行こうよ。ホテル代は出すからさ」
マッチングアプリを友達作りの場と勘違いしていた私は、やっと異性が交流する場だということに気が付いた。
もちろん全員が下心があったわけではないし、本当に気にかけてくれる人もいただろう。
影野 華「でも私、コミュニケーション力ないからなぁ・・・」
自分に対して悲観的になってしまい、相手へ申し訳ない気持ちが込み上げてくる。
影野 華「えっと・・・あの・・・ごめんなさい」
最後はこうなって、呆気なく終わりを迎える。
影野 華「変な人も多いから、もうやめよう──」
今の単調で寂しい生活も、いつかは慣れるだろう。そうやって自分で自分を励ますしかなかった。
影野 華「えっと、退会したいんだけどどうやってやるのかな・・・」
こういった類いのモノは、会員数を減らすまいと退会処理が分かりづらくされていることが多い。
影野 華「ん~、これじゃないし・・・ あ、また最初のページに戻っちゃった」
そのとき、私は声にならない程の驚きに襲われた──
影野 華「こ、こ、こ・・・この人って・・・」
最初の画面にある、『新しく登録した男性』という項目の中に、あの人がいた。
影野 華「この人って、あのときの・・・」
私にとって思いもよらぬ再会だった。
本来の『退会する』という考えなど、完全に消え失せてしまうほどに──。
〇女の子の一人部屋
明日も仕事だというのに、全然眠れない。
影野 華「見間違いじゃないよね・・・?」
何度も疑っては、画面に写る『彼』の顔写真を見るが、やはり『彼』だ。
影野 華「メッセージしてみようかな・・・。 でもなんて送ればいいんだろう・・・」
影野 華「先日はお世話になりました」
影野 華「なんの話だよってなっちゃうよね・・・」
あの時のことを思い出せば思い出すほど、奇跡的なこの再会が未だに信じることができない。
影野 華「もしかして、今AIとかテクノロジーの発達がすごいから中身がコンピューターだったりするのかな・・・」
普段ならこんな馬鹿げたことは考えたりしないが、この時だけは頭がオーバーヒートしていた。
影野 華「あなたは人間ですか?」
オーバーヒートした頭はまともに機能していたなかった。
しかし従順な身体は、思ったことをそのままメッセージに入力してしまっていた。
影野 華「い、いや、どう考えても人間だし、こんなこと送ったら変な人だと思われちゃうよね」
影野 華「消去しなきゃ・・・」
影野 華「あっ」
画面を閉じるボタンを押すつもりが、間違えて送信ボタンを押してしまった──
影野 華「ど、ど、ど、どうしよう!!!」
こうして奇妙な再会は、更に奇妙な展開へと進んでいった。
〇電車の座席
影野 華(返事がきたのは嬉しいけど・・・)
山田 総一朗「どうも、はじめまして人間です」
顔が見えなくてもきっとこんな表情だろう。
イタズラか、バカにしているのか──
影野 華(普通に考えたら、そう思われちゃうよね・・・)
影野 華(どうしようこれ・・・。 なんて返事すればいいんだろう)
いくら考えてもいい返事は思い浮かばず、ただただ会社へと近付いていく。
影野 華(結局、着いちゃった)
途方もない無力感が襲ってきた。
そのままホームへ降りて会社へと向かう。
朝からずっと考えていたので、私の頭はまたオーバーヒートしていた。
影野 華「もういっそ、私は変人さんでしたーってことにしちゃおうかな」
気が付くと『実は私、AIなんです』という謎に謎を重ねたメッセージを送っていた。
影野 華「会社に着いちゃったし、メッセージも送っちゃったし、もう忘れて仕事頑張ろう」
開き直る形で無理やり仕事モードに切り替え、出社した。
自分もマッチングアプリやってたのでなんか共感できる!そして、続きが気になるので早く更新お願いします!楽しみにしてます!