悪魔のアリス

YO-SUKE

第3話 『罪と罰』(脚本)

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〇川沿いの道
佐川アリス「お茶でも飲むか?」
犬伏徹「ありがとうございます。 でも、昨日よりはだいぶマシなので」
佐川アリス「野次馬がたくさん出てる。 あんまり変な顔すんなよ」
犬伏徹「すみません」
佐川アリス「今回のガイシャも左手がなかったな」
犬伏徹「やはり同一犯ですかね?」
佐川アリス「おそらくな」
佐川アリス「だが今回は絞殺された跡があったし、溺死ではないだろう」
犬伏徹「二つの遺体が河川敷で発見されているのは何か意味があるのでしょうか」
佐川アリス「どうかな。 ただ、どちらにしても雑な犯行ってことには変わりない」
犬伏徹「?」
佐川アリス「殺し方も、遺棄の方法も、美学が何も感じられない」
犬伏徹「美学、ですか・・・」
「アリスさーん!」
佐川アリス「お前たちなんでここに!?」
湊「知らないの? SNSで大騒ぎだよ。連続殺人犯現るって」
隆志「僕と湊くんでコンビ結成して犯人を捜すことにしたんだ」
佐川アリス「バカ。事件に首突っ込むんじゃない」
湊「なんか有力な情報教えてよ。 飴玉あげるからさ」
佐川アリス「そんなもんで買収されるか」
湊「あちゃー。やっぱダメか」
隆志「自分たちで探そうよ」
佐川アリス「あっ、湊! あんまり現場の近くをウロウロするなよ」
湊「大丈夫! 邪魔しないから。またねー」
佐川アリス「・・・・・・」
犬伏徹「どうしたんですか?」
佐川アリス「なんのことだ?」
犬伏徹「いえ、なんか思い詰めてるというか」
佐川アリス「いや、別にな・・・」
犬伏徹「今の子どもたちは?」
佐川アリス「前に交通課の仕事を手伝ったときに知り合ったんだ」
佐川アリス「近所に住んでるらしくて、たまにお菓子をせびってくんだよ」
犬伏徹「子供好きって本当だったんですね」
佐川アリス「ん?」
犬伏徹「あ、いや・・・別に」
佐川アリス「それより、そろそろ行くぞ。時間だ」
犬伏徹「?」

〇牛丼屋の店内
犬伏徹「時間って、お昼って意味だったんすね」
佐川アリス「食べないと動けないだろ」
犬伏徹「それはそうですけど」
佐川アリス「すみませーん。 並、つゆだく、おしんこセットで」

〇牛丼屋の店内
犬伏徹「──で、アイリーン・ウォーノフって殺人犯は7人の男を殺害したんですけど」
犬伏徹「娼婦として働いてたときに男たちに乱暴されたって証言したんです」
犬伏徹「・・・って聞いてます?」
  アリスは黙って自分の丼の玉ねぎを犬伏の丼に次々と乗せる。
犬伏徹「って、何してんすか!?」
佐川アリス「嫌いなんだよ、玉ねぎ」
犬伏徹「だったら玉ねぎ抜きにしてもらえばいいじゃないですか!」
佐川アリス「あ、頭いいな。それ」
犬伏徹「普通ですよ! アリスさんIQ170なんでしょう?」
佐川アリス「五年前はね。今は180」
犬伏徹「・・・・・・」
佐川アリス「で、なんの話だっけ?」
犬伏徹「シリアルキラーです。 興味ないんですか? 犯人の動機に関して」
佐川アリス「ない」
犬伏徹「即答だなあ」
佐川アリス「理屈じゃないんだよ。殺しって」
佐川アリス「世間がどうとか、法律がどうとかでもない。 殺す人間、その当事者にとって切実な何かがあるだけだ」
犬伏徹「切実な何かってなんですかね?」
佐川アリス「その人間にとっての正義だろう」
  アリスは険しい顔で窓の外を見ると、暗雲が立ち込めている。
佐川アリス「・・・・・・」

〇平屋の一戸建て

〇家の階段
少女「ハァ・・・ハァ・・・」
  息を切らせて走る少女。
  その後を、男の人影がゆっくりと追いかけていく。

〇古風な和室(小物無し)
少女「誰か・・・誰か、助けて!!」
男「誰も来ないよ。ここは僕の別荘だ」
少女「・・・!」
男「たまにね、君みたいな子と遊びたい時だけに使うんだ」
男「さあ、おいで」
  外道め
男「!!」
  どこからか突然聞こえてきた声。
  男は驚いて後ろを振り向いた。

〇黒
  雷鳴が轟(とどろ)き窓から稲光が差し込む。

〇古風な和室(小物無し)

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