Paleorium~古生物水族館の飼育員~

芝原三恵子

第7話 生きるための要素(脚本)

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〇古生物の研究室(3Dプリンタあり)
小鳥遊遥「ちょ、ちょっと待ってよ!」
小鳥遊遥「どうしてこのミロクンミンギアが死ぬの!」
小鳥遊遥「ちゃんと元気に泳いでるじゃない」
生島宗吾「今のところは、な」
小鳥遊遥「将来的にはヤバいってこと?」
生島宗吾「言葉で説明するより、実際に見たほうが早いだろう。こっちに来てくれ」
小鳥遊遥「なになに?」
  俺は自分のデスクに向かうと、
  パソコンのモニターに動画を映した。
生島宗吾「これが、飼育初日の動画だ」
小鳥遊遥「元気だね」
生島宗吾「こっちが24時間後、二日後、三日後・・・」
小鳥遊遥「んんん?」
生島宗吾「そして、これが今日の動画だ」
小鳥遊遥「ちょっとずつ、動きが悪くなってる?」
生島宗吾「ああ。ほんの少しの変化だが、 動作が鈍くなってきている」
小鳥遊遥「そういう生態だから・・・ って感じじゃないよね」
生島宗吾「ああ、弱ってきている・・・そんな印象だ」
小鳥遊遥「生島サンの観察ノート見せて!」
  俺は手書きの記録を小鳥遊に渡す。
小鳥遊遥「水温も水質も問題なし・・・エサだって食べてるし、フンもしてる・・・ 目立った問題はない、ね」
小鳥遊遥「でも、元気がない・・・ 原因はわからないの?」
生島宗吾「わかっていたら、すぐに対処している」
小鳥遊遥「だよね・・・」
生島宗吾「しばらく集中的に観察して、 原因を突き止める」
生島宗吾「ミロクンミンギアにつきっきりになるが、三葉虫の面倒は見れるか?」
小鳥遊遥「生島サンから世話の仕方を教わったから、なんとかなると思うけど・・・大丈夫?」
生島宗吾「俺が渡したマニュアルを見れば大丈夫だ。何か変化があれば、すぐに相談していい」
小鳥遊遥「そっちの大丈夫、じゃなくて!」
小鳥遊遥「生島サン、ただでさえミロクンミンギア飼育初日からずっと研究室に詰めてたじゃない」
生島宗吾「それが?」
小鳥遊遥「そこから、更に何日も観察するの?」
生島宗吾「そうするよりないだろう。 この個体は死にかけているんだから」
小鳥遊遥「ああ・・・まあ、 生島サンならそう言うと思ったけど・・・」
小鳥遊遥「体を壊さない程度にやってね?」
生島宗吾「わかってる」
  だが、三日が過ぎても、
  衰弱の原因は突き止められなかった。

〇明るいリビング
生島佳奈「ただいまー!」
生島静枝「おかえりなさい」
生島佳奈「今日の晩御飯なにー? どうせ今日もお父さん帰ってこないんだから、ピザでも頼もうよー」
生島静枝「えっと、それがね?」
生島宗吾「帰ってるぞ」
生島佳奈「うわあ! お父さん?」
生島佳奈「どうしちゃったの?」
生島宗吾「父親が家にいるだけで、 ずいぶんな言い草だな?」
生島佳奈「半月近く家を空けてたら、 誰だってそう思うよ・・・」
生島佳奈「どうしたの? 水族館で飼ってる生き物の世話、ひと段落したの?」
生島宗吾「・・・・・・」
生島佳奈「あれ、もしかして地雷踏んだ?」
生島静枝「担当している生き物の調子がよくないんですって」
生島静枝「お父さん、ずっと徹夜で頑張ってたんだけど、まだ見通しが立たないみたいでね」
生島佳奈「それで一回帰ってきたの?」
生島佳奈「意外・・・お父さんのことだから、 解決するまで水槽の前で動かないものだと思ってたけど」
生島宗吾「もちろんそのつもりだったが・・・コンビニに買い物に出ている間に締め出された」
生島宗吾「あいつめ、次に会ったらただじゃおかん」
生島静枝「このままじゃあなたが倒れそうで心配だったんでしょ。いい人じゃない」
生島宗吾「・・・・・・」
生島佳奈「ふふふっ」
生島宗吾「笑いたければ笑え」
生島佳奈「違うって! バカにして笑ったんじゃないの」
生島佳奈「新しい水族館に勤めるようになって、 前よりずっと忙しそうにしてるけどさ、 なんか楽しそうだなって」
生島宗吾「む・・・」
生島静枝「私もそう思うわ。疲れた顔してるのに、 健康そうって変な言い方かもしれないけど」
生島佳奈「だよねー! あはははっ」
生島宗吾「能天気に笑えるような職場じゃないんだがな・・・」
  誰も見たことがない未知の生き物を、
  何を考えているかわからない問題児と一緒に飼育するのだ。
  のんびり楽しめるような状況ではない。
生島静枝「せっかく帰って来たんだし、今日の夕食はお父さんの好物にしようかしら」
生島佳奈「胃に優しいものにしたら? どうせ毎日コンビニ弁当だったんだろうし」
生島静枝「それもそうねえ」
生島宗吾「病人扱いするな」
生島佳奈「なによー気を遣ってるんじゃない」
生島宗吾「その気持ちは嬉しいんだがな・・・」
生島宗吾(・・・ん? 家族・・・気を遣う・・・?)
生島佳奈「適当なものばっかり食べてたら、 すぐにメタボになるんだからね!」
生島宗吾「・・・・・・」
生島佳奈「お父さん?」
生島宗吾「すまん、夕食はふたりで食べてくれ」
生島静枝「どうしたの?」
生島宗吾「水族館に戻る」
生島佳奈「ええっ、今日は休むんじゃないの?」
生島宗吾「試したいことができた」
生島静枝「はいはい、わかったわ。いってらっしゃい」
生島佳奈「もー! せっかく帰ってきたのにー!」
  俺はすぐに家を飛び出した。

〇古生物の研究室(3Dプリンタあり)
生島宗吾「小鳥遊!」
小鳥遊遥「うわあっ! 生島サン?」
小鳥遊遥「二十四時間は絶対オフ、って言ったじゃない! どうやって研究室に入ってきたの!」
生島宗吾「斎川さんからスペアキーを借りた」
小鳥遊遥「それ、脅し取ったんじゃないの?」
生島宗吾「いいから話を聞け」
生島宗吾「改善案を思い付いた」
小鳥遊遥「それ、徹夜で疲れすぎて何か変なものを受信したんじゃなくて?」
生島宗吾「違う。試すだけの価値のある対策だ」

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