3. 企む鬼謀、頼られる旧友(脚本)
〇古めかしい和室
チビ「お部屋空いててよかったね!」
ドージ「・・・ったく、なんだってこんな狭っ苦しい部屋に複数人で泊まらなきゃなんねぇんだよ」
メイ「うう・・・そっか・・・ 私たちと一緒じゃ嫌・・・?」
ドージ「いや・・・あー・・・ 俺は一人で寝る方が好きなだけだ」
ドージ「別にお前らだからとかそういう事じゃねえよ」
メイ「・・・そっか」
チビ「ドージさん人と一緒だと寝酒出来ないからだよね~っ?」
ドージ「それもあるが・・・ あーもういいわ、寝るだけだし」
ドージ「(寝っ転がる)」
メイ「お布団敷かなくていいの?」
ドージ「二組しかねぇだろ お前らで使え」
メイ「そ・・・そんな・・・ 悪いよ・・・」
ドージ「俺は別に布団なくたって寝れるっての」
チビ「んにゃ! チビにいい考えがあるよ!」
メイ「なーに?チビちゃん」
チビ「お布団二つくっ付けて~・・・ 三人一緒に寝るんだよっ!」
メイ「えっ!」
ドージ「アホ、んな事したって狭ぇだろ。 掛け布団の取り合いになるぞ」
チビ「うーん・・・ でもドージさん寒がりなのにいいの? 今日はあったまるための寝酒もないし・・・」
ドージ「・・・」
メイ「・・・確かに、この辺りはなんだかひんやりしてるもんね」
メイ「う~ん どうしようか・・・」
メイ「・・・そうだ!」
ドージ「ん?」
メイ「チビちゃんが猫ちゃんに変身してお布団に入るのはどうかな・・・?」
ドージ「・・・おお、名案じゃねぇか それでいいか?チビ」
チビ「いいよ!ドージさんのお布団に入る!」
ドージ「おいおい、どう考えたって俺よりメイの布団の方が余るだろ。 お前んとこでいいか?メイ?」
メイ「うんっ、いいよ!」
ドージ「よし、決まりだな。 ・・・っとその前に」
ドージ「チビ、お前絶対猫のまま部屋から出るなよ。あとは勝手に爪研ぎすんのもダメだ。布団でじゃれたりするのもやるな」
チビ「わ、分かってるよ~・・・」
ドージ「メイ。猫状態のコイツには言葉は通じないからな、覚えとけ」
メイ「うん、分かった」
チビ「じゃいくよ~っ へ〜んしん!」
チビ「ニャー!」
ドージ「うし、じゃ寝んぞ。 明日寝坊すんなよ」
メイ「はーい!」
〇古めかしい和室
──深夜
チビ「ニャ・・・ニャ・・・」
チビ「ウニャッ!」
メイ「わっ!」
チビ「うーん・・・ Zzz・・・」
メイ(へ・・・変身解けちゃったのか・・・)
メイ(・・・でも、そんなに狭くないか)
メイ(・・・)
メイ(可愛いな・・・)
メイ(・・・そういえばさっき、ドージさんがチビちゃんの顎の下を撫でてたな・・・)
メイ(・・・私もやってみよっ)
──クイクイッ
チビ「んっ・・・」
チビ「ふにぁあぁ~・・・」
メイ(かわいい~・・・)
チビ「(手足を伸ばす)」
メイ「わっ・・・」
メイ(ちょっと狭くなっちゃった・・・)
チビ「フゥ~・・・ にゃっ!」
メイ「痛っ──!」
メイ(うう・・・チビちゃんこんなに寝相が悪かったんだ・・・)
チビ「むふーっ・・・」
メイ(し、仕方ない・・・ お布団から外れよう・・・)
メイ(うー・・・ 微妙に冷える・・・)
メイ(我慢・・・我慢・・・)
メイ(・・・)
メイ(う~っ、やっぱり寒い! 困ったなぁ・・・)
「・・・おい」
メイ「・・・?」
ドージ「・・・何してんだ?お前」
メイ「わっ!・・・童子さん・・・ 起きてたの?」
ドージ「(チビの方を見やる)」
ドージ「ったく、変身解けちまってんじゃねぇか」
メイ「うう・・・ チビちゃんの寝相、あんなに悪いと思わなかった・・・」
ドージ「・・・」
ドージ「・・・はぁ、ったく・・・」
ドージ「・・・ほら、中入れよ」
ドージ「(掛け布団を上げる)」
メイ「えっ・・・!で、でも・・・」
ドージ「寒いんだろ?さっさと入りやがれ」
メイ「──わっ・・・分かった・・・」
〇黒背景
メイ(ひゃ~・・・ 童子さんと一緒のお布団に入るなんて・・・ちょっと恥ずかしいな・・・)
メイ(・・・? 不思議・・・誰も入ってなかったみたいにひんやりしてる・・・)
ぴとっ──
メイ(ほんのり冷たい・・・)
ドージ「・・・あんまモゾモゾすんな」
メイ「ご、ごめん」
ドージ「・・・」
ドージ「・・・お前、暖かいな」
メイ「えっ?」
ガバッ──
メイ「わわっ・・・えっ──?」
ドージ「湯湯婆代わりに丁度いいな」
メイ「そ、そんな~・・・」
メイ(・・・ ほんのりお線香みたいな香りがする・・・)
メイ(・・・あと、ちょっぴりお酒の匂い)
メイ(なんだかとっても・・・ 心地いいな・・・)
ドージ「・・・Zzz」
メイ「・・・Zzz」
二人は心地よく眠りについた・・・
〇屋敷の牢屋
──ある屋敷の地下牢
妖「ふぁ・・・あ。 かったりぃ〜・・・」
妖「・・・Zzz」
──シュルシュルッ
ミズチ(ははっ、刑部のとこの部下はやる気ねぇな~)
ミズチ(ちょっと通りますよっと)
ミズチ(ここが牢獄か? 見つけるの結構時間かかったな・・・)
ミズチ(おっ・・・それらしいにおいがするぞ・・・)
ミズチ(・・・っ! やっべ、誰かいやがる!)
???「・・・っち、やっぱ開けらんねぇか」
???「・・・っへ こんなチンケなガキ一匹で宴? おやっさんも焼きが回ったな」
???「おいガキ、お前一人で来たわけじゃないんだろ?他の人間は何処にいんだよ」
???「・・・」
???「はっ、クチもロクに聞けねぇのか そりゃ悪い妖に食われても文句ねぇよな」
???「おやっさんのことだ。どうせまた三文芝居の出来レースでお前を景品にするだろうよ」
???「せいぜい余生を謳歌しておけ~ 人間のガキ~」
???「・・・ッチ」
ミズチ(なんだったんだ・・・あいつ)
ミズチ(さて、こいつがマサヤか?)
マサヤ「・・・っ!」
ミズチ「よう、マサヤくん」
マサヤ(ビックリした・・・ なんだよコイツ・・・なんで俺の名前知ってんだよ)
ミズチ「おーい?マサヤくん? あれ、違う?」
マサヤ「・・・なんで俺の名前知ってんだよ 誰にも言ってないのに──」
ミズチ「お、やっぱ君がマサヤくんね いや〜良かった良かった」
マサヤ「・・・ってか、何なんだよ、お前。 お前もあのクソジジイの手下か?」
ミズチ「クソジジイ・・・刑部のことか?」
ミズチ(口悪ぃなあ〜このガキ・・・)
マサヤ「・・・他のヤツみたいに下らねぇ話すんなら俺は無視するからな」
ミズチ「あー待って待って」
ミズチ「メイって子に心当たりは?」
マサヤ「なっ・・・! なんでメイのことまで知って──」
マサヤ「ってかあいつもこの世界に来てるのか?」
ミズチ「・・・し〜っ! 声がデカいよ」
「──ああ、ちゃんと生きているんだろうな?」
ミズチ「やっべ──」
ミズチ「と、とにかく明日童子さんと助けに来るからな!待ってろよ!」
マサヤ「は?おいちょっと待てって──」
──シュルシュルッ
マサヤ(なんだったんだよアイツ、俺を助けるって・・・ 童子?そいつがメイと何か関係あるのか?)
「おお、まだ生きが良さそうじゃねぇか」
マサヤ「あぁっ!──クソジジイ!」
黒田「ちょっと前までだいぶ萎れてましたが、 元気を取り戻してるみたいですね」
マサヤ「こっから出せ!俺は帰りてーんだよ!」
隠神刑部「・・・そうみたいだな」
隠神刑部「いいか、よく聞け お前は明日の宴でオレのメインディッシュになるんだ」
隠神刑部「そん時にめいいっぱい暴れやがれ。 それまで元気を温存しとけよ、ガキ」
マサヤ「──はぁ?どういうことだよ! ふざけんな!クソジジイ!」
隠神刑部「少し煩いな・・・ 静かにしてろ」
マサヤ「うわっ!」
──クラッ
バタン・・・
マサヤ「ぐぅっ・・・」
隠神刑部「明日は大量に客を招き入れるからな。 蔵も全部開けて準備しておけよ。 ・・・そうだ」
隠神刑部「酒呑童子にも招待を送っておけ。 あいつの反応次第ではもう1人のガキも奪えるかもしれねぇ」
黒田「はっ、承知致しました」
マサヤ(もう1人のガキ・・・)
マサヤ「メイ・・・!」
マサヤ「(気を失う)」
〇大きな日本家屋
──ザッ
ドージ「・・・着いたぞ。ここが刑部の屋敷だ」
メイ「ここにマサヤが捕まってるんだよね? ミズチさん」
ミズチ「おう!しっかり助けに来るって伝えたからよ」
メイ「マサヤ・・・」
チビ「うにゃ・・・ あんまり人、来てないね」
ドージ「まだ朝だからな。 とりあえず下見だ」
ミズチ「隠神刑部のやつ、ガキを催し物の景品にして出すって噂が立ってましたよ」
メイ「景品・・・?」
ドージ「ああ。ほぼ全員がサクラのやつな ・・・正攻法で奪ってもいいが、あのジジイがそうやすやすと獲物を渡すとは思えねぇ」
メイ「・・・じゃあやっぱり、忍び込んで助け出すしかないかな?」
ドージ「それが一番確実だが── 正直、全員でバレないように行くのは無理がある」
ドージ「だから、宴が始まったら俺が真正面から『客』として入って気を引く。 その内に身軽なお前らが助け出す方法がいいんじゃねぇか」
メイ「わ・・・私たちだけで・・・ ちょっぴり不安・・・」
ドージ「安心しろ。最悪侵入がバレて騒ぎになったら助けにいってやる。クソジジイの部下共なんざ吹っ飛ばしてやっから」
メイ「ほんとう?」
ミズチ「・・・いや~、アニキが助けにきて暴れられたら建物壊れちゃいますよ」
メイ「えっ・・・」
チビ「うにゃ・・・ そしたらマサヤクンも危ないよ・・・」
メイ「うう・・・」
ドージ「ちっ・・・わーってるよ。 それに、正面から殴り込みで行かなきゃそこまでの惨事にはならねぇだろ」
ミズチ「どーかな〜・・・」
バサバサッ──
ドージ「ん?」
チビ「にゃっ!鳥さんだっ!」
チビ「待て待て〜っ!」
ポトッ──
ドージ「待てアホ、バレんぞ」
チビ「そ、そーだった・・・ ゴメンなさい・・・」
メイ「あのスズメさん、何か落としていったよ なんだろ?これ・・・」
メイ「(落ちていた小さいガラス瓶の中から丸められた紙を取り出す)」
メイ「はたしじょー?ってなんだろう・・・」
ドージ「お、俺宛か?ちょっと見せてみろ」
ミズチ「・・・このタイミングで果たし状? なーんか嫌な予感するんだけど・・・」
メイ「うん、分かった」
ドージ「・・・」
メイ「ど、どうだった?」
ドージ「・・・チッ、俺宛っちゃあ俺宛てだが、 コイツは刑部からだな」
ミズチ「あちゃ~・・・ 張られてますかね、それは・・・」
メイ「・・・?」
ドージ「・・・計画変更だ。 本来なら忍び込んでマサヤを奪ってやる算段だったが──」
ドージ「真正面からマサヤを奪い取ってやることにした」
「えっ!?」
ミズチ「はははー・・・ やっぱそうなりますよね・・・」
メイ「あ、あの、手紙にはなんて書いてあったの?」
ドージ「・・・『お前らの捜し物であるニンゲンのガキは俺が預かっている。コイツが欲しけりゃ連れのガキと共に宴に来い。』」
ドージ「『お前が俺が主催する宴の競い合いで優勝すれば、景品としてガキを渡してやる。今日の夜、屋敷に顔を出しに来い』」
ドージ「──だとよ」
ミズチ「いや、めちゃくちゃ挑発じゃないスか!? それで真正面からいったら相手の思うつぼじゃ・・・」
ドージ「ははっ、分かってねぇな これは『駆け引き』の一つだ」
ミズチ「・・・と言うと?」
ドージ「あいつは俺が来ても門を閉じない訳だ。 だったら突破の必要もない」
ドージ「大手を振ってあの敷居を跨げる。だからついでにウチのもんも纏めて連れて行っちまえばいい」
ミズチ「えぇ!?そんな一触即発状態にするんスか? 下手したら暴動になって正面突破より酷くなりますよ・・・」
ドージ「だからそれが狙いだっての。 そんな状況になりそうなら、アイツは絶対にマサヤを隠すだろ」
ドージ「そんで俺は隠されてることに疑念を持たずにそのまま催しを進める。 その内にお前らが別道して助け出すって寸法だ」
ミズチ「な、なるほど」
ドージ「ったく・・・余裕こきやがってクソ狸。 俺一人になら勝てると考えてやがんのが癪に障るぜ」
ドージ「あいつ、この手紙を見て俺がキレて一人で宴に来ると思ってんだろうな。 だったら敢えて乗っかった上で、更に撹乱してやるよ」
ミズチ「・・・いや~でも、そん時にマサヤを人質にされたら厳しいんじゃないですか?」
メイ「・・・うん、私もそう思った」
ドージ「いや、それは無ぇな」
メイ「どうして?」
ドージ「忘れたか?刑部の目的は自分の力の誇示だ。マサヤを食うことじゃねぇよ」
ドージ「人間を食うところを見せつけることで、他の妖共の求心力を高めて自身の領域を拡げようとしてやがる」
ドージ「そこで拮抗してる俺たちと鉢合わせて、そんなダセェ真似してみろ。それこそ俺たちより弱いって言ってるもんだろ」
ミズチ「あー・・・確かにそうッスね」
メイ「・・・???」
ドージ「・・・要するに、アイツの目的はマサヤを食う事じゃなくて、宴を成功させることって訳だ」
ドージ「今回の宴が上手くいかなくても、マサヤさえいりゃまた後で開催できるチャンスは出来る」
ドージ「だからアイツは偽物を立てるなり、暗幕をかけたりして誤魔化し、本物のマサヤを隠すだろうよ」
ミズチ「そこを俺たちでかっさらおうって事っすよね」
メイ「な・・・なるほど・・・ そんな上手くいくのかな・・・」
ドージ「ったりめぇだ。 ・・・俺はあんま部下頼みにして群れたりするのは好きじゃねぇんだが、宴に連れてくるくらいなら構わねぇよな」
ミズチ(・・・ 俺のことはめっちゃコキ使ってる けどな~)
ドージ「ってかチビ、聞いてたか?」
チビ「うん! よーするにマサヤクンが隠れてるところを助ければいいんだよね!」
チビ「みんなを呼ぶってことは、久しぶりに ドージさんのお友達とも会える?」
ドージ「・・・あー、そうだな。 宴とはいえ、部下共をクソ狸のところに送るのは骨が折れるしな・・・」
ドージ「・・・やっぱあいつに頼むしかねぇか」
メイ「あいつって?」
チビ「うにゃ!キクさんだよ!」
ドージ「螭、お前鬼共に声掛ける時アイツんとこ行ってないよな?」
ミズチ「いやいや、行ってないッスよ。 俺なんか門前払いだし・・・ 何より菊千代さんに動かれたら滅茶苦茶になるかもしれないし・・・」
メイ「あの・・・キクチヨさんって?」
ドージ「あーそうだな── ・・・説明すんのめんどくせぇから とりあえず見せてからな。会いに行くぞ」
メイ「う、うん。わかった・・・」
〇集落の入口
ドージ「・・・見えてきたな」
チビ「わーいっ! 集落だ〜」
メイ「すごい・・・ おばあちゃんの実家がある村みたい」
ミズチ「結構遠いのに、俺何回も行かされてるんだよここ数日・・・」
メイ「あ、あはは・・・ ゴメンね」
ミズチ「メイちゃん。 ・・・こういっちゃ何だが、あんまり菊千代さんに近づきすぎないようにしな?」
メイ「・・・? どうして?」
ミズチ「結構気難しんだよ。 それこそ玉藻さん以上に・・・」
ミズチ「アニキには物凄く素直なんだが・・・ その・・・メイちゃんに気をかけてることに腹を立てるかもしれない・・・」
メイ「そ・・・そうなの?」
チビ「うにゃ?そんなことないよ!」
チビ「菊千代さんはいい人だよ?」
ミズチ「そりゃ、チビちゃんは気に入られてるからな・・・」
メイ(・・・よく分からないけど、あんまり刺激しないように気をつけようかな)
ドージ「お前ら、何してんだ? さっさと着いてこい」
ミズチ「あ、すいませんアニキ」
チビ「行こっか!」
〇村の広場
???「オラオラッ!もうギブかぁ? ウチはまだまだいけるぞっ!」
妖「いや~・・・ やっぱあの人は呑み比べじゃ負け知らずだな・・・」
妖「ぐあ・・・もう・・・無理・・・」
バタンッ──
菊千代「──っはは! 弱え癖に挑んでくんなよな!」
菊千代「やっぱウチの酒が一番美味いな・・・ お前らもウチの店から買えよ~」
ドージ「ほぉ? 京の都の酒とどっちが好みだ?」
菊千代「なっ・・・ドージっ!」
メイ(・・・女の人? なんか、すごい気が強そう・・・)
菊千代「お、お前── わざわざここまで何しに来たんだよ!?」
ドージ「ちょっとした『仕事』を頼みに来たんだ。中で話すぞ」
菊千代「・・・へぇ!珍し~な! おい、お前ら!呑み比べはお開きだ!」
菊千代「ほらっ、ウチの家はすぐそこだぞっ。 中入れよ」
ガラガラッ──
ミズチ「ふぅー・・・酒入ってて良かった・・・」
メイ「な、なんかすごい豪快だね・・・あの人」
ドージ「そうだな。 ・・・とりあえずあいつとの会話は俺に任せろ。余計なことあんま喋んなよ」
ミズチ「りょーかいッス」
メイ「あ、そういえばチビちゃんは?」
妖「キャ~ッ!チビちゃん大きくなってる〜」
チビ「えへへっ!おっきくなったよ!」
妖「前はあんなにちっちゃかったのに・・・ でも可愛い~」
ドージ「チビ?早く来い」
チビ「はーい!」
〇古民家の居間
ガラガラッ──
菊千代「で?で?なんだよドージっ! ウチに頼み事ってことだろ!」
ドージ「・・・まぁ、とりあえず落ち着け。 招いたんなら腰を下ろさせろよ」
菊千代「おうっ! 好きに座っていいぞ!」
メイ(普通の民家っぽい・・・・・・ でもあの人も妖怪なんだよね? 一体なんの妖怪なんだろ)
チビ「うにゃっ! キクさん!ひさしぶりっ!」
菊千代「あっ?チビ? デカくなったな~」
菊千代「お前のおもちゃ、まだ取ってあるぞ ・・・ほれっ」
チビ「わーい!ヘビさんのおもちゃ!」
ミズチ「・・・そんな趣味の悪いおもちゃで遊んでるのか・・・?」
ドージ「菊?」
菊千代「お、おう! それで仕事ってのは?」
ドージ「・・・隠神刑部の宴、今日の夜あるのは知ってるよな?」
菊千代「おう!知ってるぞ! ──もしかしてぶっ壊しにいくのか!?」
ドージ「・・・違ぇよ」
ドージ(あながち間違っちゃ居ねぇが・・・)
ドージ「お前の声で人を集めてくれ。 アイツの宴に大人数で参加して欲しい」
菊千代「はぁ? なんであのクソ狸の宴なんかに・・・」
ドージ「客として入って、呑んでるだけでいい ・・・頼めるか?」
菊千代「そりゃ人集めんのは余裕だけどよ・・・ 刑部ん所なんてぜってー揉めるぞ」
ドージ「ああ。向こうでは俺も参加する。 想定外の揉め方はしないように手は回すからよ」
菊千代「うーん・・・ ウチは別にいいけどよ・・・」
メイ「・・・お、お願いします・・・!」
菊千代「んん? ・・・そういや気になってんだが、そのガキの妖はなんだ?座敷わらし?」
ドージ「・・・コイツは人間だ」
菊千代「──っ!」
菊千代「二、ニンゲンんんーーーーッッ!?!?」
ドージ「声がデケェよ、莫迦」
菊千代「なっ・・・なんで人間のガキなんか連れてんだよ!?」
ドージ「・・・あーめんどくせぇ」
メイ「え、えっと・・・」
メイと童子は、メイが饗宴場に迷い込んでいたことからマサヤのことまで
一部始終余す所なく説明した・・・
菊千代「う〜・・・ 頭こんがらがってきやがった・・・」
ドージ「・・・要するに、お前は人数集めて刑部の宴に参加し、奴らを牽制してるだけでいいってことだ。余計なこと考えんな」
菊千代「・・・分かった それでドージの役に立つなら・・・」
ドージ「よし、決まりだな なるべく多い方がいい。任せたぞ」
菊千代「・・・ったくぅ 自分で集めりゃいいのに・・・」
ドージ「群れんのは趣味じゃねぇんだよ 手下とか部下とか連れ回したりな」
菊千代「・・・お前はいっつもそうだよな! あたしが京の都でお前の下についた後だって、全然一緒に連れてってくんなかったし!」
ドージ「・・・そんな昔の話まだ根に持ってんのかよ」
メイ「京の都・・・?」
ドージ「・・・ああ。 コイツとは昔からの知り合いでな」
ドージ「俺がまだ人間の世界に顔を出してた時の飲み仲間だったんだ」
菊千代「はっ、全然ウチのこと連れてってくれね〜クセによく『仲間』なんて言えたもんだな!」
ドージ「宴の時は一緒に呑んでるだろ。 何が不満なんだよ」
菊千代「ウチはお前と二人で呑みたいんだよッ!」
メイ「!?」
・・・
・・・
・・・
菊千代「なっ、なんか言えよ!バカッッ!」
メイ「・・・ふふっ」
菊千代「わ、笑ってんじゃねぇ!このガキ!」
ドージ「・・・はぁ。コトが済んだら一緒に飲んでやるよ。だから今回は頼むぞ、菊」
菊千代「ほっ、ホントだな! ぜったい、ぜったいだからな! 『約束』だぞ!」
ドージ「ああ、『約束』だ」
菊千代「──っしゃあ! だったらこの『菊千代』こと、 『茨木童子』様が手伝ってやる!」
メイ「い・・・『茨木童子』?」
ドージ「コイツが勝手に名乗ってるだけだ、気にすんな」
菊千代「へへっ、楽しみにしてっかんな! ドージ!」
ドージ「・・・はいはい もうお前に任すから」
ドージ「っし、お前ら、細かい作戦を練ってから刑部の所まで戻るぞ」
メイ「わ、わかった!」
ミズチ「はいはーい、りょーかいッス」
チビ「お・も・ちゃ!お・も・ちゃ! むふ~っ」
ドージ「・・・チビにも説明しとけよ、螭」
ミズチ「・・・へーい」
〇集落の入口
ドージ「・・・さて、これで大体準備は整ったな」
メイ「う、うん・・・」
ドージ「あとはお前の覚悟だけだ、メイ。 刑部を出し抜いて、獲物となったマサヤを助け出す覚悟──さっさとつけやがれ」
ミズチ「ちょ・・・プレッシャーですよそんな言い方したら──」
メイ「覚悟なら、もうとっくに決めてるよ 私、絶対マサヤを助け出すから!」
ドージ「・・・ならいい。やりてぇことがある時は迷うな、どんなことがあってもな。 そうすりゃ必ず、物事はいい方向に転がっていく」
ドージ「最後まで自分の願いを信じること── それが土壇場でツキを呼び込む秘訣だ」
メイ「──うんっ!わかった! 私、絶対に信じ切るよ」
ドージ「さて、そんじゃ── 刑部のハナを明かしてやるとするか!」
メイ「うんっ!」
チビ「心配しないで、メイちゃん。 チビとミズチさんで精一杯サポートするからね!」
ミズチ「ま、いざとなったらアニキも菊千代さんも居るし、余裕でしょ」
メイ「頼りにしてるよ!みんな!」
チビ「いえーい!」
メイ「・・・」
メイ(マサヤ・・・待っててね。 絶対助け出してあげるから・・・!)
このまま一気呵成か?
そうは行かないよね