Paleorium~古生物水族館の飼育員~

芝原三恵子

第6話 エサとエサのためのエサ(脚本)

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芝原三恵子

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〇水族館前(古生物水族館ver)
斎川理央「博士―、生島さーん、どこですかー?」
小鳥遊遥「斎川サン、こっちだよ!」
生島宗吾「わざわざバックヤードまで来てもらって、すまないな」
斎川理央「新しい生き物の飼育実験をするから、 てっきり研究室にいると思ってたんですけど・・・」
斎川理央「こんなところで何をやってたんです?」
生島宗吾「エサづくりだ」
斎川理央「エサ・・・? 大きなバケツが並んでるだけですけど?」
小鳥遊遥「あはは、斎川サンもそう思うよねー。 でも、実はバケツの中には、めちゃくちゃいっぱいエサが入ってるんだってさ」
斎川理央「えええー・・・? 水しか入ってないじゃないですか」
生島宗吾「肉眼では細かくて見えづらいだろうが・・・バケツごとにそれぞれ別のプランクトンを繁殖させている」
斎川理央「ふむふむ・・・プランクトンですか。 聞いたことがあります」
斎川理央「よく、小さな魚のエサになってる小さな生き物ですよね」
生島宗吾「プランクトンを主食とする巨大魚も少なくないから、そうとも言い切れないんだが・・・」
小鳥遊遥「ジンベエザメが主食にしてる、オキアミもプランクトンだっけ? ・・・おっと」
  ふらふらと落ち着きなく歩いていた小鳥遊が、床の配線を引っかけた。
  バケツのひとつがひっくり返りそうになって、慌てて支える。
生島宗吾「小鳥遊、気を付けて歩け。 ライトを引っかけるな」
小鳥遊遥「ごめーん。 よいしょ・・・これでいいかな?」
生島宗吾「光が当たらないと、光合成の効率が落ちる。角度もちゃんと元に戻せ」
小鳥遊遥「はいはい」
斎川理央「ライトの取り付けてあるバケツもあるんですね・・・うわっ、水がすごい緑色・・・」
生島宗吾「そっちは植物性プランクトンの飼育環境だ」
斎川理央「これもエサ用ですか?」
生島宗吾「植物性プランクトンを好む魚もいるが・・・どちらかというと、 動物性プランクトンのためのエサだな」
斎川理央「えーと? 実験動物のエサとして、 動物性プランクトンを飼育して、」
斎川理央「その動物性プランクトンのエサとして、 植物性プランクトンを飼育してるんですか・・・」
斎川理央「なんだか果てしない話ですねえ」
小鳥遊遥「面倒くさいよねー」
生島宗吾「面倒くさい生き物を飼育しようと言い出したのはお前だろうが」
斎川理央「ミロクンミンギアって、 そんなに大変な生き物なんですか?」
生島宗吾「大きさと口の形状が問題だな。相当に小さくて柔らかいものしか受け付けないだろう」
斎川理央「んんん? でも、大きさだけが問題なら、プランクトンである必要はないような・・・」
小鳥遊遥「イカやエビを細かく砕いて、 ペースト状にして与えたらいいじゃん、 って言ったんだけどね」
小鳥遊遥「生島サンがプランクトン養殖にこだわっちゃって」
生島宗吾「これは変なこだわりで言ってるわけじゃない」
生島宗吾「熱帯魚の稚魚やチンアナゴ、クラゲ・・・」
生島宗吾「細かいものをエサとしている海棲生物の中には生きたプランクトンしかエサとして認識しないものが多いんだ」
生島宗吾「いざペーストを食べないとなってから、 代わりのエサを繁殖させていたのでは、 間に合わん」
斎川理央「あー・・・それでこんなことに」
斎川理央「三葉虫の飼育実験成功からずいぶん間があくなあ、と思っていたのですが、納得しました。時間がかかるわけですよ」
生島宗吾「バクテリアの増殖と同じで、プランクトンの飼育環境を作るのもそれなりに時間がかかるからな」
小鳥遊遥「それにしたって、待たせすぎだよー」
生島宗吾「まあ落ち着け」
生島宗吾「この環境は他の生き物にも応用できる。 次にプランクトンが必要な種を再生する時には、すぐに作業ができるだろう」
生島宗吾「後々の効率を考えれば、 最初に少し時間をかけて作業をするのは、 決して無駄じゃないぞ」
斎川理央「急がば回れってやつですね」
小鳥遊遥「うう、バクテリアに、 プランクトンに・・・こんなのばっかりだ」
生島宗吾「生き物を飼うっていうのは、 だいたいそんなものだ」
斎川理央「ずっと飼育員をやってきた生島さんが言うと、重みが違いますね」
小鳥遊遥「ハア・・・わかったよ」
小鳥遊遥「それで? プランクトン繁殖の最終チェック結果はどうなの? もうミロクンミンギアを再生していい?」
生島宗吾「必要な環境は整ったから、実験していい」
小鳥遊遥「やった!」
  俺の返事を聞くやいなや、
  小鳥遊は研究室に向かって走り出した。
斎川理央「ちょっと、博士?」
生島宗吾「斎川さん、小鳥遊を追ってくれ。 放っておいたら勝手に実験を始めそうだ」
斎川理央「生島さんは?」
生島宗吾「俺は給餌の準備をしてから行く」
斎川理央「わかりました!」

〇古生物の研究室(3Dプリンタあり)
  研究室に戻ると、すでに生体3Dプリンタの準備が整っていた。
  おもちゃを動かしたくてしょうがない小鳥遊は、行儀の悪い子供のようにガタガタと椅子をゆすっている。
小鳥遊遥「生島さん、早く! はーやーくー」
生島宗吾「落ち着け。斎川さん、録画準備は?」
斎川理央「オッケーです」
小鳥遊遥「いいよね? いいよね? やるよ?」
生島宗吾「わかった」
小鳥遊遥「ミロクンミンギア、飼育実験開始!」
  小鳥遊が操作すると、
  すぐに生体3Dプリンタが動き出した。
  培養液の中に、
  ミロクンミンギアの体が描かれる。
斎川理央「思ったより、魚っぽくないですね・・・」
小鳥遊遥「ヒレの形が全然違うからね。 泳ぎ方もかなり個性的だと思うよ」
  プリントが終了すると、他の生き物と同じように体をよじらせ始める。
小鳥遊遥「水槽に移していいよ!」
生島宗吾「わかった」
  体を傷つけないよう、
  そっと水槽に入れる。

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コメント

  • 「次回、ミクロミンギア死す!デュエルスタンバイ!」
    生島さん「勝手に殺すなぁーっ!」

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