第5話 全ての魚の祖先(脚本)
〇古生物の研究室(3Dプリンタあり)
生島宗吾「午前十時三十分、エサやり開始。 本日のエサは、イカのすり身・・・と」
小鳥遊遥「あ、イチローのエサやりやってる! ボクもあげていい?」
生島宗吾「構わないが、 そのイチローというのは何だ?」
小鳥遊遥「三葉虫の名前! 成功例一号だから、イチロー」
生島宗吾「・・・そうか」
小鳥遊遥「あれ、名前つけるのはダメだった?」
生島宗吾「いや、この三葉虫は観察用だからな。 親しみを持つために名前をつけるのはいいんじゃないか」
小鳥遊遥「やった!」
生島宗吾(喜んでいるようだし、ネーミングセンスについては、つっこまないでおこう)
小鳥遊遥「イチロー、たっぷり食べるんだぞー」
小鳥遊が餌を落とすと、
三葉虫はすぐに近寄ってきた。
その動きは思ったより俊敏で、
見ていて飽きない。
小鳥遊遥「与えてからの反応が早いね。 視覚だけじゃなく、嗅覚も使って餌を探しているのかもしれない」
生島宗吾「餌の種類ごとの記録は取っているから、もう少しデータが集まったら検証してみよう」
小鳥遊遥「ふふふ、 三葉虫の飼育も落ち着いてきたねえ」
生島宗吾「そうだな」
小鳥遊遥「というわけで、そろそろ次の生き物を再生しようと思います!」
生島宗吾「わかった」
小鳥遊遥「生島サンは反対かもしれないけど、 ボクはもう決めたからね!」
生島宗吾「わかった」
小鳥遊遥「もうボクを止められるものは・・・ あれ? 今わかったって言った」
生島宗吾「言った」
小鳥遊遥「マジで?」
生島宗吾「俺も一年で5種飼育する条件は覚えている」
生島宗吾「三葉虫の飼育で一か月以上かかっているからな」
生島宗吾「そろそろ次に取り掛からないと間に合わないだろう」
小鳥遊遥「やったー!」
嬉しさのあまり、
小鳥遊はその場で小躍りを始める。
研究者として、落ち着いて問題に取り組むという姿勢はないのか。
小鳥遊遥「よーし実験開始!」
そのまま、
生体3Dプリンタを動かそうとしたので、
俺は慌ててその首根っこをひっ掴んだ。
生島宗吾「待て! また飼育環境も作らずに実験する気か! 少しは学習しろ!」
小鳥遊遥「はっ・・・実験許可が嬉しすぎて、 我を忘れてた・・・」
生島宗吾「犬でもお預けくらいは覚えるぞ」
小鳥遊遥「ちぇー」
生島宗吾「・・・それで? 何を再生するつもりなんだ。特徴を教えろ」
小鳥遊遥「うん。次はこれ! ミロクンミンギア!」
そう言って、小鳥遊は三葉虫のときと同様に分厚いファイルを渡してきた。
そこには相変わらずびっしりと書き込みがある。
小鳥遊遥「まだ2例目だからね。三葉虫と同じで、『飼いやすさ』を基準に選んでみたよ」
生島宗吾「・・・そうか? ずいぶんと、か弱い見た目なんだが」
復元されたその姿は小さく細長く、
生まれたばかりのシラスを連想させた。
生島宗吾(あっという間に死にそうな雰囲気だな・・・)
小鳥遊遥「かわいいよねー。 でも、他の生き物と違って、生態が推測しやすいっていう利点があるんだ」
生島宗吾「そうか?」
現時点では、謎の塊でしかない。
小鳥遊遥「ほら、復元図をよく見てよ。 体の上下についたヒレ、側面にあるエラ」
小鳥遊遥「さて、 これらはどんな生き物の特徴でしょうか!」
生島宗吾「・・・魚類?」
小鳥遊遥「せいかーい! ミロクンミンギアは、地球上で初めて魚類の特徴を獲得した生き物とされているんだ」
小鳥遊遥「ここから進化して、硬骨魚類、軟骨魚類と分化していったみたい」
生島宗吾「ふむ・・・」
小鳥遊遥「いわば、すべての魚類のご先祖様だね」
小鳥遊遥「どう? 魚だよ? 飼育しやすそうって思わない?」
生島宗吾「・・・・・・」
俺は返事をしなかった。黙ったまま、
渡された資料のページをめくる。
〇古生物の研究室(3Dプリンタあり)
小鳥遊遥「・・・なに? どこかおかしい所でもある?」
生島宗吾「頭の部分の拡大図はあるか? 特に、口のあたりがよく見たいんだが」
小鳥遊遥「いいよ」
小鳥遊はパソコンに向かうと、モニターにミロクンミンギアの復元図を表示させた。口を中心に画像を拡大する。
拡大図を見て、
俺は嫌な予感が当たったことを知った。
生島宗吾「こいつ、アゴがないように見えるんだが」
小鳥遊遥「ないよ?」
生島宗吾「な・・・?」
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この時間感覚が地学(地質、古生物、天文学)あるあるで笑いました!誤差の範囲が何万年の世界たからなー