第1章 第5巻(脚本)
〇テーブル席
菜花 京子「はじめまして、京子です」
山田 総一朗「はじめまして、山田です」
山田 総一朗(よかったー! 写真と同じ人だし雰囲気も同じだ)
菜花 京子「もしよかったら、『総ちゃん』ってよんでもいいですか?」
山田 総一朗「もちろん。 じゃあ俺は『京ちゃん』って呼ぼうかな」
山田 総一朗「あと年齢も同じくらいだし、敬語じゃなくてもいいんじゃないかな」
菜花 京子「じゃ、お言葉に甘えてそうするね。 ここのパンケーキすごく美味しいー!」
京ちゃんは初めて会ったけれど、すごく話しやすい。時間の限り色々なことを話した。
菜花 京子「お母さんのことは、辛いね。 でもお母さんを大切にする人って素敵だなぁ」
山田 総一朗「そういってもらえると嬉しいよ。 マザコンじゃん!とか思ってない?」
菜花 京子「そんな人じゃありませんー。 ひどいなぁ、まったくもう」
今まで女性の優しさに触れることのなかった俺は、あっという間に惹かれていた。
菜花 京子「お腹いっぱい。 まだ時間あるならどっか行こうよ」
山田 総一朗「そうだね。 じゃあお会計してくるよ──」
菜花 京子「なに言ってるの、私も食べたんだから割り勘でしょ」
菜花 京子「さては、奢ったらやましいことできるとか考えてるのかなー?」
山田 総一朗「いやいや、そんなつもりは全くないよ。 男性が奢るのが普通かと思って」
菜花 京子「気持ちだけで十分だよ。 次行こ、次ー!」
自然体でありのままの彼女に、より惹かれていく。これが好きって気持ちなのだろうか。
正直、パンケーキの味など全然わからなかったが、この楽しい時間を続けたい。その一心で店を出た。
〇海辺
菜花 京子「わー、きれい。 久しぶりの海だー!」
菜花 京子「ここのところ、ずっときたかったんだけど忙しくてこれなかったから嬉しい~」
山田 総一朗(彼女と海水浴するとなれば、 究極のダイエットが必要だ)
山田 総一朗「喜んでもらえてよかった。 よかったら、また来ようね」
菜花 京子「あ・・・うん!そうだね」
菜花 京子「ちょっと肌寒くなってきたし、 今日はそろそろ帰ろうかな~」
山田 総一朗「うん。じゃあ駅まで送っていくね」
山田 総一朗「今日は本当に楽しい時間、ありがとう。 また会えるといいな」
菜花 京子「私も楽しかったよ。 じゃあ、またね総ちゃん」
山田 総一朗「う、うん。またね、京ちゃん」
彼女を見送って、俺も帰りの電車に乗った。
〇明るいリビング
山田 総一朗「たっだいま~」
山田 園花「おかえり。 ってか──」
山田 園花「なんだそのニヤニヤした顔は! すごく気持ち悪いんですけど」
山田 総一朗「ニヤニヤなんかしてないよぉ~ ふっふっふん~♪」
山田 園花「ママ、お兄ちゃんが壊れる通り越して、気持ち悪くなりました・・・」
山田 総一朗「なんとでも言うといい」
山田 総一朗「今俺は、幸せの最高潮にいる! ランランララン~♪」
山田 園花「気持ち悪いけど、まぁいいや」
山田 園花「お母さんそろそろ退院するってー」
山田 総一朗「それはよかった。 じゃあ俺部屋行くね」
山田 園花「ご飯はー?!」
山田 総一朗「ルンルン~♪ ララララ~♪」
山田 園花「聞いてないし! 食べちゃおーっと」
俺は今日の思い出に浸りながら、部屋へ向かった。
〇一人部屋
山田 総一朗「今日は本当に楽しかった。また行こうね」
山田 総一朗「よかったらこれ、俺の連絡先だからメール待ってます!よろしくね~じゃあおやすみ」
京ちゃんに自分の連絡先を載せたメッセージを送り、布団にはいった。
山田 総一朗「なんかドキドキして眠れないなぁ」
山田 総一朗「もしかして俺、京ちゃんが好きなのか?」
山田 総一朗「いやいや、今日会ったばかりだぞ。 落ち着け、俺」
言葉とは裏腹に、高まる気持ちはおさまらない。
山田 総一朗「母さんも喜んでくれるかな~」
山田 総一朗「次はどこへ行こうかな~」
山田 総一朗「水族館?いや、映画館?」
山田 総一朗「新しく出来たショッピングモールもいいなぁ」
しばらく返事を待ってはみたものの、一向に来ないので寝ることにした。