第1章 第2巻(脚本)
〇公園のベンチ
山田 総一朗「ふーっ・・・服装大丈夫かな・・・ 時間は11時で合ってたよな──」
山田 総一朗「緊張しすぎて胃が痛い・・・ どんな人が来るんだろう・・・」
俺はマッチングアプリに登録し、ある女性と会うことになった。
メッセージのやり取りではとても感じのいい人だった。
山田 総一朗「とはいえ、俺みたいなやつがあんなに可愛い子とデートできるなんて未だに信じられないなぁ・・・」
A子「あらーっ!こんにちは。 山田さんでいらっしゃいますか?」
そんな気はしていたが、やはりそうだった。全然別人だ。年も顔も話し方さえも違う。
山田 総一朗「えーっと、その、山田です。 今日はよろしく・・・お願いします」
A子「そんな緊張しなくたっていいわよ。 私プロだから。でもその前になにか美味しいものでも食べない?」
A子「フォアグラの美味しいお店があるの。 ワインもすごくこだわっててね──」
山田 総一朗「あっ、えっと、その──」
俺は急にめまいと、とてつもない腹痛に襲われしゃがみこんでしまった。
冷や汗がとまらない。
A子「なんか、めんどくさいわねあんた。 見た目も好みじゃないし、どうせお金もないんでしょ」
A子「交通費だけよこしなさいよ! ちっ、これだからブ男はやーね。 じゃ、さようなら」
俺は恐怖のあまり、交通費5000円を支払った。もちろんすぐに姿は見えなくなった。
〇異世界のオフィスフロア
今川 隆太「あーっはっは、朝からそんなに笑わせないでよぉ──ふふっ、あっはっは」
マッチングアプリを始めた理由はこいつだ。
昨日の件を、自称プロの今川に話した。
今川 隆太「山ちん、それよくあるダメなパターンだよ。メッセージそんなにしてないのにすぐ会うって、目的ありすぎ~」
山田 総一朗「目的・・・?」
今川 隆太「ただでご飯食べたいか、お金ほしいか、なんかやましいことがあるか。 運営が女性の入会審査しても本音はわからないからね~」
昨日と言っていること違うじゃないか──
ということは胸にしまいアドバイスを聞くことにした。
山田 総一朗「月額の会員費も払ったし、せめて1ヶ月だけやってみようと思うんだ。どうすればいいかな?」
今川 隆太「それは──女性が素人かプロか、見極めることが本当に出会うための唯一の道! プロ(自称)の俺が言うんだから間違いなし!」
今川 隆太「そもそも写真に自信のある子や、打ちなれていそうな文章を送ってくる子は、俺はガンガン無視しちゃうもん」
確かに言われてみれば、俺は自分の顔写真を載せている。
こんな男と遊びたい子がいるわけないもんな。
今川 隆太「ま、てなわけで次行きましょ、次!」
〇明るいリビング
山田 総一朗「ただいま・・・ってあれ?」
机の上には夕御飯と、手紙があった。
『朝から調子悪くて、検査入院することになったから作り置きしてあるご飯食べてね。』
『すぐ帰れるみたいだから、大丈夫よ』
山田 総一朗「大丈夫かなぁ、早く俺も奥さんもらって子供の顔見せて元気にしてあげたいんだけど・・・」
山田 園花「お兄ちゃん、おかえり~ ママとさっき電話したけど、特に問題なさそうだって」
それなら一安心だな。
風呂からでた俺は食事を済ませ、スマートフォンの画面をみた。
山田 総一朗「な、な、な、なんだこれ?! メッセージ50通?!」
マッチングアプリを開くと、全員別々の女性からメッセージがきていた。
その数50通。
山田 総一朗「なんかおかしいな・・・ とりあえず見てみるか」
山田 総一朗「ん~、どれもこれも似たような文面だな。 普通、初めて話す人にこんな長文送るかなぁ──」
山田 園花「お兄ちゃんが、ニヤニヤしたり、落ち込んだり、壊れちゃったのかな ま、いーや。ご飯たべよーっと」
山田 総一朗「そんなに人の顔観察しないでくれ。 さて、俺も頂こう。 母さん、いただきます」
50通のうち1通だけ、不思議なメッセージがあるのだが、このときはまだ見落としていた──。