小説に書かれた日、

立坂雪花

小説に書かれた日、(脚本)

小説に書かれた日、

立坂雪花

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〇黒
  幸せになってほしいから
  ささやかですが
  プレゼントを贈ります

〇黒
  小説に書かれた日、

〇イルミネーションのある通り
  クリスマスまであと1週間
  街は踊っている
  キラキラと輝いている
  ぼんやりとそれらを眺めながら私は歩いている

〇綺麗な一戸建て

〇一階の廊下

〇女性の部屋
  家に帰り、部屋を明るくすると

〇女性の部屋
  すぐに、ある物を手に取った。

〇白
  それは、本。

〇白
  今朝、うちの郵便受けの中に
  “倉持あやか様” と、私の名前だけ書かれている封筒が入っていた。
  気になったので封を切り中を覗くと、1冊の本が入っていた。
  朝、時間が無かったので、急いでそれを部屋に置くとすぐ職場に向かった。

〇女性の部屋
あやか(本当に不思議・・・・・・)

〇白
  本を開くと、こんな事が書いてあった。
  2021年、クリスマス。
  
  僕達は、17時ちょうどに駅前で待ち合わせをして、喫茶ボヌールへ向かう。
  それだけ。次のページからは真っ白で何も書かれていなかった。

〇女性の部屋
あやか「え!? これだけ? 意味がわからない」
  ちなみに “喫茶ボヌール” は、実際に存在している場所だった。

〇黒
  怪しさもあり、当日までとても迷ったけれど結局好奇心が勝ち、行ってみることにした。

〇雪に覆われた田舎駅
  懐かしい人達がいた。
  高校の同級生達だった。

〇木造校舎の廊下
  いつも一緒にいた、りか。
  彼女はいつも笑顔で明るくて、引っ込み思案な私を引っ張ってくれていた。

〇木造校舎の廊下
  物静かで考える事が好きな、つきちゃん。

〇木造校舎の廊下
  思った事をすぐ行動に移す、ようちゃん。

〇木造校舎の廊下
  つきちゃんとようちゃんは、
  二卵性双生児。

〇黒
  高校卒業してからも遊んでいた。
  なんで遊ばなくなったんだっけ?
  思い出せない・・・・・・。
  でも、今は思い出せなくてもいいや!

〇雪に覆われた田舎駅
りか「あやか! 久しぶりー!」
ようちゃん「5年ぶり・・・・・・」
つきちゃん「いや、6年ぶりだ」
りか「あはは、つき、細かーい」
  それから少しだけ他愛のない話をして
つきちゃん「寒いから車に乗るぞ」
  ようちゃんの運転する車に乗った。

〇走行する車内

〇走行する車内
  運転席にはようちゃん、助手席につきちゃん。
  後ろの席には、りかと私が座った。

〇走行する車内
あやか(久しぶりだけど、普通に会話できてる。 良かった!)
あやか(高校生の時に戻ったみたい。楽しい!)

〇走行する車内
りか「そういえば、今日駅に来たの、家によく分からない本が届いていたからなんだよね・・・・・・」
あやか「え!? うちにも来てたよ!」
りか「まじで!?」
あやか「うん。17時に駅前って」
りか「そうそう。てか、どこ行くんだっけ?」

〇走行する車内
ようちゃん「喫茶ボヌールだよ!」

〇走行する車内
りか「そうそう! それ!」
りか「えっ!? よう達のところにも本が来たの?」

〇走行する車内
ようちゃん「うん。来たよ! 今そこに向かってるからね」

〇雪山の山荘
  駅から30分ぐらい車を走らせると
  喫茶ボヌールに着いた。

〇カウンター席

〇カウンター席
ようちゃん「荷物、そっちの部屋置いといて」
りか「うん」
あやか「置きに行こっか」

〇カウンター席
ようちゃん「ちょっと待っててね。今準備するから」
つきちゃん「よう、これ、テーブル持って行って」
  ふたりは、テキパキと料理の準備をしている。

〇カウンター席
  色々な食べ物が出てきた。
  私が昔から大好きなイチゴオレも。

〇カウンター席
りか「ここで働いている人みたい」
ようちゃん「ここ、おじさんの店だから手伝ったりしてるんだ。冬は閉まってるから自由に使っていいって」
りか「へぇ、てか集まれて良かった。楽しいね!」

〇カウンター席
  みんな仲良かった時のような気持ちに戻っていた。
  会話はずっと続いて、笑いが絶えなかった。
  途中、つきちゃんが仕事の書類やらなきゃと少し隣の部屋に行ったけど。

〇カウンター席
  0時になり、26日になった瞬間だった。

〇カウンター席
  突然店が暗くなった。

〇カウンター席
  1分ぐらい経つと明かりはついた。
りか「びっくりしたー!」
あやか「え!? なんでこれがここにあるの?」

〇カウンター席
  それぞれが座っていた席に、例の本が置いてあった。
りか「なんで!? カバンに入れておいたのに」
あやか「私が持ってきたのもある」
  ぱらぱらとめくってみた。

〇カウンター席
あやか「なに・・・これ・・・・・・」

〇白
  真っ白だったページにはまるで物語のような文章が追加されていた。
  車に乗る前、3人は久しぶりに会ったからかすぐに話は盛り上がり、寒いのに話はなかなか終わらない。
  だから僕は「寒いから早く車に乗るぞ」と声を掛けた。
  それにしても3人が笑顔で良かった。
  僕のせいで、心が苦しんでいるのかもしれないと思っていたから

〇カウンター席
あやか「私、思い出したんだけど」
りか「うん。私も・・・・・・」

〇黒
  6年前、つきちゃんは事故で亡くなった。
  クリスマスの日だった。
  その時も、毎年のように4人で会う約束をしていた。
  その前に、伝えたいことがあるからふたりで会いたいと言われた。
  先に、りかと買い物に行く約束をしていたからそれが終わってから会う約束だった。
  買い物が予定よりも長引くと、すでに待ち合わせ場所にいたつきちゃんがこっちに来てくれる事になった。
  こっちに向かってくる途中でつきちゃんは・・・・・・。
  それ以来、集まる事はなくなった。
  りかも私も自分を責めていた。
  それを責める必要なんてない。という事も書いてあった。

〇カウンター席
ようちゃん「つき、夢に出てきたんだ」
ようちゃん「そして書いて欲しい内容も伝えてきて、本を届けるように頼んできた」
ようちゃん「クリスマスの日だけ、こっちに来れる事になったからってさ」
りか「ってか、つきちゃん、離れてからも私たちの事分かりすぎだよ」
あやか「うん。本でめちゃくちゃ分析されてる」
あやか「・・・・・・」
あやか「今日は、ありがとう」

〇カウンター席
  その時、勢いよくドアが開いた。
  3人は、外に向かった。

〇青(ダーク)

〇青(ダーク)
  一瞬、映像を巻き戻すかのように舞い降りてくる雪が空に昇っていった気がした。

〇青(ダーク)

〇青(ダーク)
あやか(離れていても、ずっと一緒だからね)

〇黒
  彼の夢は、誰かを幸せにする小説家だった。

コメント

  • 謎や不安や驚きといった、あやかの揺れる心情の描写が精緻ですね。作品世界に引き込まれます。ラストもとても美しい、魅力的なファンタジーですね。

  • 何故こんなに大切なことを忘れてしまっていたのだろう….。
    そういう暗示か、それともショックでの記憶障害…?
    でもクリスマスに再度会えて、思い出せて、そしてこんなに思ってくれる友達もいて、みんな幸せ者ですね!

  • クリスマスの魔法みたいな感じのお話でした。
    亡くなってからも、ずっとお友達を見守っている彼との一夜の魔法みたいな。
    心に染みます。温かい気持ちが。

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