幸福な配信

司(つかさ)

1話(脚本)

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〇幻想
  アイがライブ配信で歌を歌っている
アイ「(今日稼いだのは100万ほどですか)」
アイ「(ボスはこれで喜んでくださるでしょうか)」
アイ「(私はあと・・・どのくらいお金を稼げばいいんでしょうか)」
  その時配信に一人リスナーがやって来る
  アイは一曲歌い終えてからそのリスナーに語りかける
アイ「いらっしゃいませ。シンゴさん・・・ですね。初めまして。私はアイと言います」
シンゴ「・・・・・・」
アイ「気軽にチャットしてください。私はなんでも答えます」
アイ「歌をリクエストしていただければどんな歌でも歌います」
シンゴ「『あの・・・・・・アイさん』」
アイ「はい、なんでしょう?」
シンゴ「『僕は・・・・・・あなたが好きです』」
アイ「え? それは・・・どういう意味でしょうか?」
アイ「だって私たちはまだ会ったばかりのはずです」
アイ「どうして・・・・・・私の事を好きなんでしょうか」
シンゴ「『あなたの歌を聞いた時に思ったんです』」
シンゴ「『僕は生まれてからこんなに美しく透き通った歌声は聴いたことがありません』」
シンゴ「『とても感動しました。凄く力をもらいました』」
シンゴ「『だからつい・・・・・・好きだって言ってしまいたくなったんです』」
アイ「シンゴさんそれは・・・・・・勘違いをしています」
アイ「あなたが私に興味を持つのは別に不思議な事では」
シンゴ「『――僕・・・誰かに恋をするのも告白するのも初めてなんです』」
アイ「え?」
シンゴ「『初めてだったけど、もう言う機会がないかもしれないから』」
アイ「それは・・・・・・どういうことですか?」
シンゴ「『僕は・・・もう長く生きられないんです』」
アイ「生き・・・られない?」
シンゴ「『段々と身体が弱くなっていく病気で、もうほとんど動く事は出来ないんです』」
シンゴ「『最近は目も見えなくなってしまって、正直絶望していました』」
アイ「(目が・・・・・・見えない)」
シンゴ「『あなたの歌を聴いた時僕はいつの間にか泣いてしまっていて・・・同時に鼓動が早くなっているのに気づきました』」
シンゴ「『こんな気持ちは初めてだったんです』」
アイ「シンゴさん。じゃああなたはずっと・・・・・・私の声だけしか聞いていないんですか」
シンゴ「『ええ、あなたの声は素晴らしいです』」
アイ「そんな・・・・・・何かの間違いじゃないですか。私の姿を見てないなんて」
シンゴ「『僕も見たかったんですあなたの姿を・・・・・・でももう見る事は出来なくて。本当にごめんなさい』」
シンゴ「『あなたはトップのライバーなんですよね。きっと姿も綺麗に違いないです。だから沢山お金を送りますね』」
アイ「やめてください!」
シンゴ「『え?』」
アイ「私の姿を見てないのにお金を出すなんて・・・・・・どうしてですか?」
シンゴ「『そんな・・・・・・見た目なんて関係ないです。あなたは素晴らしい声を持ってる。それだけで僕には価値があります』」
アイ「(声だけで価値がある?)」
アイ「(そんな事あり得ません・・・・・・だって・・・私は)」
シンゴ「『あなたの声を聞くと・・・不思議な事に今まで抱えていた不安が収まっていくんです』」
シンゴ「『病気の事も・・・これからの自分も・・・どうしてか大丈夫だって安心できるんですよ』」
シンゴ「『だからもっとたくさん、もっと自由に歌ってください』」
シンゴ「『そのために僕はお金を出したいんです』」
アイ「シンゴさん・・・お気持ちはわかりました」
アイ「でもお金は出さないでください。私は見た目も大切にしてるんです・・・声だけでお金を取る事は出来ません」
シンゴ「『そうだったんですね・・・気分を害してしまったようならすいません』」
アイ「いいんです。だから歌ならいくらでも聴いていって下さい。あなたの気が済むまで歌います」
アイ「(自然とそう言っていました)」
アイ「(歌声だけが好きなんて・・・絶対に聞く事はないと思っていた言葉です)」
アイ「(だからお金は、どうしても取ることは出来ません)」
アイ「(私はボスのために・・・お金を稼いできました)」
アイ「(この声は見た目があってこそ意味があるものです。もちろん私は自分の見た目も声もいい物だとは思っていません)」
アイ「(でも不思議です。この気持ちはなんなんでしょう)」
アイ「(身体の中がポカポカしてくるようなこの気持ちは)」
  アイはそのままシンゴが帰るまで何度も歌い続けていた
  その間アイはずっとシンゴからお金をもらう事については拒否し続けていた

次のエピソード:2話

コメント

  • 温かさと切なさに溢れた第1話ですね。2人の感情や距離感などがダイレクトに胸に響きます……シンゴさんの胸中を想像すると、涙が出そうになります

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