Paleorium~古生物水族館の飼育員~

芝原三恵子

第4話 寝ずの番(脚本)

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芝原三恵子

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〇古生物の研究室(3Dプリンタあり)
小鳥遊遥「生島サン、水槽の横に立って!  ボクはこっちに立つから。 それからポーズ!」
生島宗吾「あ、ああ・・・」
斎川理央「ふたりとも笑顔でお願いしますよー。 はい、チーズ」

〇古生物の研究室(3Dプリンタあり)
  カシャッ。
  斎川のスマホがシャッター音を再生すると同時に、俺たちの姿を記録した。

〇古生物の研究室(3Dプリンタあり)
斎川理央「三葉虫ちゃんの写真をもう一枚撮って・・・と。 あ、こっちの角度のほうがかわいいかな?」
  実験成功の証拠写真なら一枚撮れば十分だろうに、斎川は角度を変えて何度も写真を撮っている。
小鳥遊遥「斎川サン、すっかり三葉虫を気に入っちゃったね。まあ、気持ちはわかるけど」
生島宗吾「・・・そうか」
  俺はそれ以上のコメントはしない。
  女性のカワイイにツッこむと大変なのだ。
  それが妻であろうと、娘であろうと。
  しばらく写真撮影をして満足したのか、
  斎川は顔をあげた。
斎川理央「じゃあ、私は堺様のところに戻りますね。直接写真をお見せしたいので」
生島宗吾「お疲れ様」
斎川理央「また来ますね!」
  斎川はばたばたと忙しそうに去っていった。
  研究室は俺たちふたりだけになり、
  静かに・・・
小鳥遊遥「ねえねえねえ、生きてる! 生きてるよ! さすが伝説の飼育員だね」
  ならなかった。
  むしろ生きた三葉虫を目の前にして、
  小鳥遊のテンションが上がりっぱなしだ。
小鳥遊遥「ああああ嬉しい。こういう時は祝杯をあげるべき? でもまだ昼間だしなあ」
生島宗吾「祝杯はまだ早いぞ」
小鳥遊遥「なんで?」
生島宗吾「そこそこの環境があれば、未知の生物であっても数時間生かすことはできる。 だが、長期飼育となれば話は別だ」
生島宗吾「しばらくは二十四時間体制で状態を観察して、最適な環境を探り出すことになる」
小鳥遊遥「え、二十四時間って、生島さん。 これからずっと水槽に張りついてる気?」
生島宗吾「ああ。必要なものはすでに研究室に持ち込んである。一週間程度なら問題ないはずだ」
小鳥遊遥「準備いいね・・・」
生島宗吾「水槽は生体を入れてゴールじゃない。 そこがスタートなんだ。 これから気が抜けないぞ」
小鳥遊遥「真面目だねえ。そこまで気を張らなくても、すぐに複製は作れるんだよ?」
生島宗吾「・・・・・・」
小鳥遊遥「生島サン?」
生島宗吾「・・・俺は、そうは思わない」
小鳥遊遥「ふーん、そう」
小鳥遊遥「わかったよ。 生島サンの納得がいく方法で飼育して」
生島宗吾「もともとそういう契約だ」
小鳥遊遥「そういえばそうだった! あはは」

〇学校の部室
  数か月前
生島宗吾「どういうことですか、支配人!」
支配人「何がだね?」
生島宗吾「先日あげた稟議書です。 全部却下だなんて、ありえない」
支配人「ありえないのは、君の予算感覚だよ。 バカ高い機材ばかり買おうとしないでもらえるかね」
生島宗吾「必要な出費です」
支配人「どうだか。N社の製品に統一したら、 この半額以下で調達できるそうだが?」
生島宗吾「N社の営業に何を言われたか知りませんが、あそこの製品ではダメです。 品質が悪すぎて使い物になりません」
支配人「それこそ君の偏見じゃないのかね。 質はよいと言っていたよ」
生島宗吾「きちんと検証したうえでの判断です」
支配人「どうだか。とにかく却下だ。 N社製品を使え」
生島宗吾「・・・・・・」
支配人「ああそれと、先週もらったイルカショーの回数を減らす提案書だが、あれも却下だ」
生島宗吾「ちょっと待ってください、 イルカを殺す気ですか」
支配人「君は神経質なんだよ。 ちょっとくらいショーの回数が多かったところで、影響なんか出ないよ」
支配人「イルカのほうだって、飼育員に遊んでもらえて喜んでるんじゃないのかな」
生島宗吾「ショーは、 イルカも飼育員も神経を使います」
生島宗吾「現在の過密スケジュールではいつか事故が起きますよ」
支配人「客を集めるには、とにかくショーが必要なんだ。回転数を上げなくては」
生島宗吾「だからといって・・・」
支配人「いい機会だから言っておく。 今後、君の提案は全部却下だ」
生島宗吾「は・・・?」
支配人「確かに、君の飼育センスはすばらしい」
支配人「君のおかげで飼育に成功した生き物は、 十種類じゃきかない。 世界的な賞だってもらった」
支配人「だが、もういいんだ」

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コメント

  • 某築地の漫画で「ウナギやカニはイルカ等と違って一般の人からしたら可愛くないから、食べて美味しさを知ってもらった上で保護につなげるしかない」というやり取りがありました
    それを考えると魚はまだ大丈夫(だいじょばない)として、イルカで事故が起きるのはまずいとか思いつかないんでしょうかこの支配人は……

    そして会社のゴリ押しでよくない機材を押し付けられるのはハイ○ックやウイン○ムだけではなかったと

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