バディ・ザ・アローン

ひであき

第4話 リンスの大暴れ(脚本)

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ひであき

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〇ナイトクラブ
リンス「こ、こんな夜遅くに人がたくさん」
アレク「お子様には刺激が強かったか?」
リンス「そ、そんなことありません!」
アレク「兄ちゃん、エールを一杯」
店員「かしこまりました」
リンス「捜査中ですよ、先輩!」
アレク「飲まないで突っ立ってるほうが逆に怪しい。お前も適当に何か頼め」
リンス「た、頼めって言われても、こういうところに来るの初めてですし」
アレク「ホットミルクはどうだ? 寝付きが良くなるぞ」
リンス「むかっ! 先輩と同じ物を頼みます!」
リンス「お兄さん! エールを一杯!」
店員「かしこまりました」
アレク「お前いくつだ? 見た感じ酒に慣れてるようには」
店員「お待たせしました」
リンス「ありがとうございます!」
アレク「ま、待て! そんなに一気に飲んだら」
リンス「ふう、最悪の味ですね。こんなの美味しそうに飲む人の気が知れません」
アレク「お、おい、大丈夫なのか?」
リンス「見ての通りです。何を心配して」
リンス「はれ? 先輩が二人に見えましゅ」
アレク「言わんこっちゃない。兄ちゃん、水を一杯。俺の分はもういいから」
店員「かしこまりました」
アレク「まったく世話が焼ける。おいしっかりしろ」
リンス「ふみゅ~」
アレク「これじゃ捜査どころじゃないな。こいつをどこかに置いて俺一人でやるしかないか」
リンス「先輩、なんれ私には優しくしてふれないんれすか?」
アレク「何の話だ? そういうのはシラフのときにしてくれ」
リンス「いつも子供扱いさへて心外れふ。先輩のほうが大人失格なふせに!」
アレク「わかった。言いたいことがあるならあとで聞いてやるから今はおとなしくしてくれ」
チンピラ「よう、待ってたぜ。憲兵さんよ」
アレク「お前か。今取り込み中だ。話はあとにしてくれ」
チンピラ「そういうわけにはいかねえのよ」
チンピラ「こいつか? 組織に盾突こうとしてるバカ野郎ってのは」
チンピラ「上玉を連れてるじゃねえか。今晩は朝までたっぷり楽しめそうだ」
チンピラ「こういうわけだ。おとなしく観念しな」
アレク「やっぱりそう来たか。まあ予想通りだな」
チンピラ「つ、強がってんじゃねえぞ! この数が見えねえのか!?」
チンピラ「こいつらだけじゃねえ! ここにいる奴ら全員組織の息がかかった連中だ!」
チンピラ「わかるか? お前らはもうお終いなんだよ!」
アレク「何を言ってる? 一網打尽のチャンスを与えてくれて感謝してるくらいだ」
チンピラ「はったりかましてんじゃねえ! 相棒がそんなザマで何ができるってんだ!?」
アレク「俺は初めから一人でもやるつもりだった。数に訴えないと安心できないお前ら腰抜けとは違う」
チンピラ「言わせておけば! みんなやっちまえ! 女の方は生け捕りにしてあとでみんなでお楽しみだ!」
リンス「うるはいれふ!」
リンス「今私と先輩が喋ってるんれふ。邪魔しないれふださい!」
チンピラ「おっと、立ってるのも辛いなら肩を貸してやるぜ。へへっ」
リンス「だからうるはいれふってば!」
チンピラ「ぐはっ!」
チンピラ「やりやがったなこのアマ!」
リンス「もう! 邪魔しなれふださい!」
チンピラ「ぎゃあ! 目が! 俺の目があぁ!」
チンピラ「こ、こいつ! おい何してる!? 全員でかかれ!」
リンス「女一人に大勢でかかるはんて卑怯れふよ! お仕置きしまふ!」
「ぐえっ!」
「こ、この女強えなんてもんじゃねえぞ!?」
「ば、バケモンだ! こんなの命がいくつあっても足りねえよ!」
チンピラ「お、おいお前ら! 俺を置いて逃げるんじゃねえ!」
アレク「酒癖も悪かったとはな。これはもう飲ませないほうが良さそうだ」
チンピラ「く、クソ! もう後には引けねえんだ! 俺だけでもやってやる!」
リンス「もう黙っててふださい!」
チンピラ「ぐわっ!」
リンス「ほれで邪魔者はいなくなりはした。話の続きをしまふよ」
アレク「よくやったと言ってやりたいが先ずは落ち着け」
リンス「私は落ち着いてまふ! 大体先輩はいふもいふも──」
リンス「うっ」
アレク「お、おい大丈夫か?」
リンス「おろろろろ」
アレク「うわっ! 俺の服にブチまける奴があるか!」
リンス「き、気持ち悪い。うっぷ」
アレク「こっちの気分も最悪だぞ。まったく」
リンス「うえっ。先輩のバカ」
アレク「まだ言ってるのか」
アレク「この状況どう処理すればいいんだ?」

〇西洋の街並み

〇英国風の部屋
リンス「あれ? ここは一体」
リンス「うっぷ。気持ち悪い。頭痛い」
リンス「ここはどこ? 私昨日何してたんだっけ?」
アレク「ようやく目が覚めたみたいだな」
リンス「アレク先輩? ここはどこですか? 一体何がどうなって」
アレク「やっぱり覚えてないのか。お前もう酒は飲むな。いつかやらかして後悔することになるぞ」
リンス「酒?」
リンス「そっか、昨日は確か潜入したお店でお酒を飲んで、そのあとのことは覚えてなくて」
リンス「それで気付いたらここにいて、多分ここは先輩の家だから──」
リンス「!」
アレク「何だどうした? やっぱり二日酔いか?」
リンス「先輩あなたって人は!」
リンス「意識のない私を家に連れ込んで何をしたんですか!?」
アレク「何って、お前を介抱して」
リンス「信じられません! 意識のない女の子を思うが儘に辱めるなんて!」
リンス「ぐーたらな人だけどそんなことはしないって信じてたのに!」
アレク「お前さっきから何の話をしてるんだ? 俺はただ」
リンス「変態! ロリコン! すけこまし! 最低男!」
アレク「おい枕で叩くな! 変な勘違いしやがって。これだから恋愛脳のお子様は」
リンス「この枕おじさん臭いです!」
アレク「面と向かって言われると傷付くなそれ」
アレク「とにかく事情を説明するから先ずは落ち着け!」
リンス「落ち着けるわけないじゃないですか! 大人ぶってたくせに結局私に手を出したんですね!」
アレク「誤解だ! そんなことしたらレティに殺される!」
リンス「この状況で他の女の名前を出しますか普通!? なんて人!」
アレク「まったく、これだから子守は嫌なんだ」
アレク「昨晩もうんうん唸って夜泣きをしてたからおちおち眠れなかったぞ」
リンス「やることやっておいてまだ子供扱いするつもりですか!?」
アレク「──誰かこいつを何とかしてくれ」

〇英国風の部屋
リンス「お、お騒がせしてすみませんでした」
アレク「まったくだ。朝から無駄な体力を使ったぞ」
リンス「す、すみません」
アレク「誤解が解けたならいい。危うくレティに殺されるところだったがな」
リンス「やっぱりスカーレット少佐と先輩はそういう関係なんですか?」
アレク「やっぱりってなんだ、やっぱりって」
アレク「俺とお前を組ませると判断したのはあいつだ。これで間違いがあったらあいつの信頼を裏切ることになる」
リンス「口ではああ言ってるのに少佐のことを大切に想ってるんですね」
アレク「あいつにもあいつの親父さんにも世話になってるからな。無下にはできない」
リンス「その話立ち入らないほうがいいですよね?」
アレク「わかってるなら一々口に出すな」
リンス「もう! せっかく気を遣って言ったのに!」
アレク「落ち着いてきたところで、そろそろ本題に入ってもいいか?」
リンス「そうだった! あのあとどうなったんですか?」
アレク「連中は通報を受けて駆け付けた憲兵に取り押さえらえた」
アレク「俺はお前を連れて現場から逃げてきた。命令を無視して捜査してると他の憲兵にバレたら面倒だからな」
リンス「す、すみません。私が暴れたせいで」
アレク「気にするな。お前がやらなくても俺がやってた」
アレク「俺ならもっとスマートに連中を締め上げてただろうけどな」
リンス「うぐっ、何か言い返したいけど今回は立場が悪いから何も言えない」
アレク「それで俺の家にお前を運び込んだってわけだ。おかげでさっきは偉い目に遭った」
リンス「ねちねちと嫌味ったらしいですね。さっきから謝ってるじゃないですか」
アレク「何か言ったか?」
リンス「いえ何も!」
アレク「捕まった連中は今頃尋問を受けてるだろうが、どうせ証拠不十分で釈放される」
アレク「軍の上層部と連中はずぶずぶの関係だからな」
リンス「せっかく組織に繋がる男を見付けたのに私のせいで」
アレク「いや、それに関しては問題ない」
リンス「どういう意味ですか?」
アレク「こういう意味だ」
チンピラ「むーっ! むーっ!」
リンス「あっ、その人!」
アレク「家がないって言うからクローゼットのなかに泊めてやったんだ」
アレク「寝心地はどうだった? 体中がバキバキになっただろ」
チンピラ「クソ! 全部聞いてたぞ! 朝からイチャつきやがって!」
リンス「い、イチャついてません!」
アレク「全部聞いてたなら話は早い」
アレク「昨日は俺たちを盛大にもてなしてくれて嬉しかったぜ。パーティの飾り付けがなかったのはいただけないがな」
チンピラ「ち、ちくしょう! こんな、こんなことになるなんて」
アレク「思わなかったか? 俺も同じ気持ちだ」
アレク「さて、お前が知ってる組織の情報を洗いざらい吐いてもらうぞ」
アレク「お前に訊くより金玉に訊いたほうが早いならそうするが、どうする?」
リンス「わ、私隣の部屋で待ってますね」
チンピラ「またこのパターンかよ!? 俺を置いていくな!」
チンピラ「ああ、そんな!」
アレク「これで二人きりだ。いや、お前の金玉を合わせたら四人か」
チンピラ「か、勘弁してくれ! これ以上余計なことを話したら今度こそ殺されちまう!」
アレク「今度こそ? お前次があると思ってるのか?」
チンピラ「ど、どういう意味だ!?」
アレク「あれだけの兵隊を動かして失敗したんだ。俺がボスならお前を消してるぞ」
アレク「それとも、お前のボスは神父様みたいに寛容なのか?」
チンピラ「あ、あんたの言う通りだ。ボスはそんなに甘くない」
アレク「だろうな。俺がお前をシャバに放り出したらどうなると思う?」
チンピラ「ま、間違いなく殺される」
アレク「そういうことだ。お前に残された選択肢は二つある」
アレク「俺たちに協力してムショで生き永らえるか、組織に殺されるかのどちらかだ」
チンピラ「な、何が聞きたい?」
アレク「さっきも言っただろ。全部だ。全部話してもらうぞ」

〇英国風の部屋
リンス「あっ、話はついたんですか?」
アレク「まあな。頭を下げて頼んだら快く話してくれた」
リンス「どうだか」
リンス「それで、有益な情報は聞き出せましたか?」
アレク「明日の夜に下っ端を集めた定例会議があるそうだ。そこに組織の幹部が一人現れるらしい」
リンス「そうですか。昨日あんなことになったのに定例会議なんてやるんでしょうか」
アレク「俺なら足がつかないよう中止にするが、他に手掛かりはない。一応現場に足を運ぶつもりだ」
アレク「お前はそれまでに二日酔いを覚ましておけ。薬をやるから飲んでおくといい」
リンス「変な薬じゃないですよね?」
アレク「お前まだ疑ってるのか?」
リンス「だってこのあいだ変な薬を横領しようとしてたじゃないですか」
アレク「あれは誤解だ。ちゃんと然るべき機関に引き渡すつもりだった」
アレク「成分表は今奴の口から聞けたからブツはもう必要ないしな」
リンス「何か言いましたか?」
アレク「いや何も」
アレク「とにかくそういうわけだ。お前は明日に備えて休んでおけ。今日は休むとレティに伝えておく」
アレク「動くのが辛いなら俺のベッドを使ってもいい」
リンス「気持ちだけ受け取っておきます。この布団おじさん臭くて嫌です」
アレク「それ止めろ。本当に傷付く」
リンス「毎晩女を連れ込んでるんですよね? いやらしい! ちゃんと洗ってますか? 不潔! 変態!」
アレク「人聞きの悪いことを言うな。俺ももう年だ。そこまでお盛んじゃない」
リンス「だから薬に頼ろうとしてるんですか? 信じられない!」
アレク「いやまあそれは」
リンス「やっぱり! 先輩の変態すけこまし! 不潔ドスケベモンスター! もう知らない!」
アレク「お子様の情緒は不安定だな。対応に困る」
チンピラ「へへっ、あんたも隅に置けねえな。嫉妬しちゃって可愛いじゃねえの」
アレク「あれはそういうのじゃないだろ」
アレク「お前も恋愛脳か? もっと実のある大人の話がしたいもんだ」
チンピラ「どうしてもって言うならああいう女もイチコロにできる薬も調合できるぜ」
アレク「お前最低だな。そんな物騒なものに頼らないと女を口説けないほど俺は落ちぶれちゃいない」
チンピラ「ムスコがギンギンになる薬は欲しがってたじゃねえか」
アレク「自分に使うのと相手に使うのじゃ話が違う」
アレク「俺が困ってるのは女を満足させてやれないことだ。お前も年を取ればわかる」
チンピラ「ちっ、カッコつけやがって。あとで後悔するなよ」
アレク「後悔なんかするか」
アレク「ああいう跳ねっ返りがいるなら俺たちがしたことも少しは報われる」
チンピラ「何の話だ?」
アレク「こっちの話だ。お前はもう黙ってろ」
アレク「しばらくはうちで匿ってやる。ムショにブチ込むまでおとなしくしてろ」
チンピラ「縛られたままじゃ何もできねえよ! これを解いて──」
アレク「黙ってろと言ったはずだ」
チンピラ「むーっ! むーっ!」
アレク「まったく、今の俺を見たらあいつらは笑うだろうな」

次のエピソード:第5話 アレクの日常

コメント

  • リンスは暴れ上戸だったのか!?
    アレクに同情します😅

  • 終始リンスのお子様感が……ww
    お酒に不慣れで、コテコテの酔い方をして、挙句翌朝の誤解……読んでいてニヤニヤしてしまいますね!

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