エピソード59(脚本)
〇闘技場
ミリアドラ「な、なぜじゃ!? わらわの結界をすり抜けて来られるはずがない!」
ミリアドラ「なぜあやつがここにいる!?」
ミリアドラはじっと闘技場のはるか上空に浮かぶ小さな点をにらむ。
ミリアドラ「く・・・、まずい、まずいぞ!」
〇闘技場
ニルは地面に倒れたヤンへと駆け寄った。
ニル「だ、大丈夫ですか?」
巨大なドラゴンの体はカタカタと音を立てて折りたたまれていき、人型のヤンの姿へと変わった。
ヤン「うぅ・・・」
ヤンの右腕と右足は、まるで皮膚がはがれたかのように金属の骨格があらわになっていた。
ニル「す、すみません!!」
ヤン「いや、君が謝る必要はないよ、全力で戦ってたんだしこれくらいはね」
ヤン「はぁ・・・。 でもこれどうしようかな・・・」
ヤン「面倒だし治さなくてもいいかな、これはこれでなんかカッコいいし」
ニル「・・・・・・」
大会の職員が恐る恐る寄ってきて、ヤンの手をチラチラと見ている。
兵士「きゅ、救護室まで運びましょうか・・・?」
ヤン「ううん、大丈夫。私は自分で行・・・け・・・?」
突然ヤンはバッと上を向いた。
ヤン「ちょっと待って、なんでアイツがここに!?」
ニル「ヤン・・・、さん? どうしたんですか? なにか上に・・・」
ニル「!?」
ヤンにつられて上を見上げたニルも、上空からほとばしってくる不穏な気配を感じた。
ニル(こ、この気配は・・・!?)
上空に見えた小さな点は、あっという間に大きくなっていく。
ミリアドラ「危ないぞ! ニル!」
ニル「!?」
突然ニルは横から突き飛ばされた。
その次の瞬間、さっきまでニルがいた場所に轟音とともに土煙が立つ。
煙の中を悠々と立ち上がる銀髪の男を見てニルは戦慄した。
ゼノン「久しぶりだね。ニル」
ニル「・・・・・・」
メルザムでの出来事がニルの脳裏をよぎる。
廃墟と化したメルザムの街が。
残忍な笑顔を浮かべてニルに左腕を向ける男の姿が。
おぉっと、これはいったいどうしたのでしょうか?
突然土煙が立ちましたが・・・
な、なんとまたもや乱入でしょうか。
しかもあの姿は皇帝陛下!?
〇闘技場
アイリ「!?」
〇闘技場
ミリアドラ「・・・久しぶりじゃのう。ゼノン」
ゼノンはニルからゆっくりと目を離すと、ミリアドラの方を向いた。
ゼノン「あれ? ミリアドラじゃないか。 なんでここにいるの?」
ニル(ミリアドラはゼノンを知ってるのか!?)
ミリアドラ「よくもぬけぬけと・・・、またわらわの民を殺しに来たのか?」
ゼノン「興味ないね。今僕は忙しいんだ。 長いこと探して、やっとニルをまた見つけられたんだ」
ゼノン「ほっといてくれ」
それを聞いて、ミリアドラは恐ろしい殺気を放ちながらゼノンをにらんだ。
ミリアドラ「貴様に用がなくともわらわにはあるぞ?」
ミリアドラ「以前貴様がここに来たとき多くのギアーズと人が犠牲になった。 忘れたとは言わせぬ」
ミリアドラ「あのときは取り逃がしたがまさかここにのこのこと戻ってくるとは・・・。 いい度胸じゃな」
ゼノン「もう、ちょっと待っててくれよ。 ニルを殺したあとで君たちの相手をしてあげるから」
ゼノン「それに・・・」
ゼノン「君の弱点はもうわかってるんだよ」
残忍な笑顔を浮かべたゼノンは、周りにいる観客席に向かって左腕を向けた。
ニル「!?」
ミリアドラ「!?」
ゼノンはにやっと笑うと観客席に向かって光の弾を打ち出した。
ミリアドラ「貴様ァッ!」
〇闘技場
ミリアドラは目にもとまらぬスピードで観客席の前に移動すると光の弾を撃ち落とした。
ミリアドラ「ローデリア!!」
ローデリア「はっ!」
ミリアドラ「観客を避難させろ! 今すぐにだ!」
ローデリア「すでに始めております」
ミリアドラ「さすがだな、頼んだぞ。 あやつを相手にするならそちらに気を回せぬ」
〇闘技場
ゼノン「ふふふ、そんなにトロくさくて間に合うのかな~?」
そう言うとゼノンは四方八方に向けて光の弾を撃ち始めた。
ミリアドラ「ぐっ・・・」
ミリアドラはそれらをすべて撃ち落としていく。
ゴォオオオ!
ニル「はぁあああ!」
ヤンは右腕と翼は不完全ながら、再びドラゴン型へと変形しゼノンへと襲い掛かる。
ニルもあわせてヴェラグニルでゼノンへと斬りかかった。
しかしゼノンが左腕をブレード状へと変化させて、余裕の表情で一閃した。
グゥオオオ!
ニルは吹き飛ばされ、左腕を切り落とされたヤンは苦しそうな声を上げる。
ミリアドラ「ヤン! 頼む、客が逃げるまでの間、壁を作れるか!」
ヤン「は、はい!」
ヤン「・・・・・・」
ォオオオオ!
ドラゴンのヤンは大きく吠えると、身体がカタカタと伸びていく。
そして見る間にゼノンを囲む高い壁を作り出していった。
しかし次々と立ち上がる壁は半分もできないうちにみるみるスピードを落とし、止まってしまった。
ミリアドラ「ヤン!」
す、すみません・・・、今の私ではこれ以上は・・・
ゼノン「ほらほら! 隙間だらけだぞ!」
ゼノンは壁の隙間から観客席に向けてまた光の弾を撃ちだす。
ミリアドラ「くっ・・・」
ミリアドラは光の弾を撃ち落とすと、壁を作り出しているヤンの元へと飛んだ。
そしてヤンの首元に手をかざすと、ミリアドラの手から数本の緑色の管が伸び、ヤンの首へと入っていった。
ミリアドラ「これでどうじゃ?」
ありがとうございます。いけます!
止まっていた壁がまた動きだし、カタカタと広がっていくと、観客席を守る高い壁が出来上がった。
ゼノン「ふーん・・・」
ゼノンは壁に向けて何発か光の弾を打ち出したが、壁は傷ひとつつかなかった。
ゼノン「うーん、まぁこれはこれでいいかな?」
ゼノン「邪魔は入らないわけだし、ニルと遊んでからあのふたりはゆっくりと片付ければいいしね」
ニルはよろよろと立ち上がると、剣を構えてゼノンをにらみつけた。
そんなニルを見てゼノンはにやにやと笑っている。
ミリアドラ(くっ・・・、今はこれが最善策じゃ・・・)
ミリアドラ「ニル・・・、すまぬが避難が終わるまで頼むぞ、あやつを止めてくれ」
ニル「はい!」
ニル(・・・そうは言ったものの、俺にあいつを倒せるのか・・・?)
ニル(あのときの記憶はおぼろげだけど、何度攻撃を叩きつけてもあいつが倒せなかったことは覚えてる)
ニル(そして気が付いたときにはゼノンは消えていた)
ニル(くそっ・・・、どうすれば・・・)
ゼノン「来ないのかい?」
ゼノン「なら、僕から行ってもいいかな?」
ゼノン「はぁぁ」
ゼノンがニルに迫り、ニルはヴェラグニスの柄をぎゅっと握りしめた。
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