身代わり人形

333×

2 初めての一人旅(脚本)

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〇城の廊下
  キュラの生家
  ラピス家 邸宅
  窓辺にたたずむ一人の女性
  キュラの姉
  ”身代わり人形” アデラ・ラピス
アデラ「・・・キュラ」
紳士「心配召されますな」
紳士「キュラ様は、籠りがちな方でしたが」
紳士「だからこそ──」
アデラ「『我らが”花の国”を見聞する、良い機会』」
アデラ「かしら?」
紳士「ホホホ」
アデラ「そう・・・ね」
アデラ「学びは良い、でも」
アデラ「キュラを出すなら、私にも相談なさい」
アデラ「今は特に」
アデラ「どの地域も騒がしいのだから」

〇アマゾンの森
  大森林に囲まれた”花の国”
  この国は、大きく5つの地域で成立つ

〇赤い花のある草原
  平野と海の南部地域

〇美しい草原
  丘陵と川の西部地域

〇池のほとり
  水源と高山の東部地域

〇荒れた競技場
  荒野と遺跡の北部地域

〇外国の駅のホーム
  そして、工業と政治の中央地域
  首都”アレンヘ”
  その”首都駅”にて
「まさかねぇ・・・運休なんて」
「沿線で爆発騒ぎだと」
「最近物騒だねえ」
キュラ「あー!!もう!」
  キュラは構内のベンチにドンと座って、思案にくれた。
キュラ「とんだ災難よ!」
キュラ「列車は明日まで動かないし、お腹すいたし」
キュラ「疲れたよねー、モコ」
  フワフワのぬいぐるみ、モコ。
  抱き締めて顎をのせるのに十分な程、
  大きなぬいぐるみだ。
キュラ「ようやく一歩進んだと思ったのに・・・」
駅員「もし、お嬢さん」
キュラ「何か?」
駅員「そろそろ駅を閉めるから、構内から出て ほしいのだけど」

〇西洋風の駅前広場
  首都駅前 広場
キュラ「なんで駅が閉まるのよ!」
キュラ(南部領の駅は一日中開いてたのに・・・)
キュラ「宿屋は何処もいっぱいだし」
キュラ「嫌になっちゃうよね、モコ──」
キュラ「あら?」
  さっきまで鞄にいたぬいぐるみが──
キュラ「居ない!!?」
キュラ「うそでしょう!?どこ行ったの」

〇西洋風の駅前広場
  数時間後 
  首都駅前 広場
  モコは、どこにも見当たらなかった。
キュラ(列車は止まるし、独りぼっちだし、雨まで降ってくるし、モコも行方不明だし)
キュラ「うぅ・・・」
  無性に泣けてきたキュラ
  ふと、声がした
「もしもし」
「そこのお嬢さん」
キュラ「私?」
キュラ(昼間の駅員さん?)
  聞けば、駅に落とし物が届いたという。
  コレなんだけど、と差し出されたのは、大きなフワフワのぬいぐるみ。
キュラ「モコ!!」
  ぬいぐるみを抱きしめて喜ぶキュラ。
マリーベル「届けてくれた人が、驚いていたよ?」
マリーベル「「犬が行き倒れてた!」って」
マリーベル「正直、私も驚いた」
キュラ「モコは大きいものね」
マリーベル「・・・ところで」
マリーベル「もう日が暮れるというのに、お嬢さんは帰らないのかい?」
  今日の宿が無い事を、キュラは、すっかり忘れていた。
マリーベル「宿、取っていないのか」
マリーベル「じゃあ、家においで」
キュラ「えっ」

〇レトロ喫茶
  駅のそば 宿屋
  マリーベルの勧めで、一晩の宿を借りることができたキュラ。
マリーベル「着替えてくるから、食事を食べていて」
キュラ(やっとひと息つけるわ)
キュラ「もー!どこ行ってたのよ!モコ」
  大人しくイスに座っているモコ。
マリーベル「ははは。仲良しだね」
キュラ(ぬいぐるみと会話なんて、子どもじみてると思われたかしら)
  キュラは気恥かしくて赤くなった。
キュラ「ご、ごめんなさい・・・おかしいですよね」
キュラ「モコ──ぬいぐるみと話すの、クセで つい・・・」
マリーベル「良いじゃないか」
マリーベル「話し相手が居るのは、良いことだ」
キュラ「そう・・・かしら」
マリーベル「そうだよ」
  他愛もない話をするうちに、ポツリポツリと身の上を語りだしたキュラ。

〇月夜
  キュラの生家は、南部地域に領地を持つ、
  大領主ラピス家
  そのラピス家には、現在二人の娘がいて
  姉のアデラはラピス家の薔薇と称される、まさに理想の人。
  華やかな噂は、駅員のマリーベルにも届くほど。
  一方、妹のキュラは
  学校に行ったとか、行かないとか。
  姉アデラの名声に埋もれて、世間の噂も届かない。
  勉強、社交、周囲の期待・・・
  あらゆる面で、姉妹の差は歴然だった。

〇華やかな裏庭
  ただ、周囲の評価はともかく
  幼い頃より、ミミはキュラのことをかわいがったし
  それは、アデラも同様だった。
  寂しい家の中で、二人だけが
  キュラの居場所だった。

〇レトロ喫茶
キュラ「ミミは、アデラ姉さまと入れ替わりで、故郷に帰っちゃったけど」
キュラ「でもね、代わりにモコがいる」
キュラ「モコはね、ミミが去る時に作ったの」
キュラ「まあ、私が縫えたのは片耳だけで」
キュラ「切って、縫って、綿を詰めて、仕上げてくれたのはミミとアデラなのだけど」
マリーベル「そうか」
マリーベル「モコは二人の姉さまから貰った、プレゼントだったのか」
キュラ「プレゼント?」
マリーベル「妹が、さみしくないように、って」
キュラ「姉さま達からの、プレゼント・・・」
マリーベル「私も、きょうだいにプレゼントしたことがあるよ」
キュラ「寂しくないように?」
マリーベル「寂しくとも・・・慰めになるように、かな」

〇レトロ喫茶
  話はやがて、キュラの目的地、リーベリー城塞に向いた
マリーベル「どうしてまた、あんな北の端へ?」
マリーベル「もしや、ミミさんを訪ねて?」
キュラ「えっと、私”身代わり人形”のこと、調べて回っていて、それで・・・」
マリーベル「身代わり人形?」
  マリーベルは顎に手を当て、眉を寄せた。
マリーベル「身代わり人形・・・リーベリー城塞・・・」
マリーベル「人が人形になれる、なんて噂を聞いたことがあるけれど」
マリーベル「本当なのかい?」
キュラ「噂ですわ! でも、行って見るのも一興でしょう?」
キュラ「もし、噂が本当なら、私も──」
キュラ「私も・・・『私』を取り戻したい」
  しばしの沈黙の後、マリーベルが呟いた。
マリーベル「・・・本当に居るんだね」
キュラ「え?」
マリーベル「”身代わり人形”だよ」
  言われた意味が分からず、キョトンとするキュラ。
マリーベル「名家のお嬢さんには、”身代わり人形”なんて、居て当たり前なのかい?」
  知識階級──領主やその一族には、居ても不思議のない存在、”身代わり人形”
  しかし、一般人には縁遠い、存在なのだ。幽霊や妖精・・・おとぎ話と同列に。
キュラ「身代わり人形は居るわ!ただ、迎えるには、いくつか条件があって」
キュラ「だから、そのへんには居なくて・・・」
キュラ「・・・詳しくは、言えないけど」
  マリーベルは、キュラの背を優しく叩いた
マリーベル「貴女の持つ知識も、情報も、価値ある財産 のようだね」
キュラ「価値ある、財産・・・?」
マリーベル「むやみにひけらかすと、泥棒に狙われるってことさ」
キュラ「私は、マリーベルだから話したの!むやみになんて話しません!」
マリーベル「わかった、わかった。 さあ、もうおやすみ。部屋は二階だ」
キュラ「おやすみなさい」
マリーベル「・・・身代わり人形、ね」

〇外国の駅のホーム
  少し昔の首都駅
マリーベル「落とし物?」
マリーベル「ふふっ、随分とまぁ大きいこと」
マリーベル「お前のご主人はどこへ行ったんだ──ん?」
マリーベル「あれは」
(南部の薔薇・・・身代わり人形の姫君、か)
(しかし様子がオカシイような)
マリーベル「もし、どうなさったので──」
アデラ「それ!それです!!」
  それ
アデラ「あ、ご、ごめんなさい私ったら」
アデラ「大事な妹の人形なの。 見つかって良かった」
アデラ「ありがとう、ええと」
アデラ「お名前は?なんと仰るの?」
マリーベル「マリーベルと申します」
「モコー!!姉さまー!!うわーん」
アデラ「キュラ!?あぁ、マリーベル、それではね」
「キュラ!あったわ!見つけたわ──」
  ぬいぐるみ一つ必死に探して、小さな子をなだめて──
  ”身代わり人形”と言ったって、普通の人と何が違うんだろうか。
  マリーベルは、このとき思ったのだった。

〇ヨーロッパの街並み
  店の外
マリーベル「キュラの出発は明日」
マリーベル「準備をしておけ」
  暗がりから、返答がかえる。
「はーぁい」

次のエピソード:3 ゆきゆく

コメント

  • 久しぶりの更新!嬉しいです😆
    待ってた甲斐がありました!面白かったです🙌

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