Sparking Carats!

西園寺マキア

第10章 錯乱(脚本)

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西園寺マキア

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〇病室(椅子無し)
さくら「・・・ゆきはもう来ないかもね」
はるか「えっ」
  はるかが驚いていると、ゆづきがさらに申し訳なさそうな顔をした。
ゆづき「ごめん・・・私たちもよくわかってないんだけどね・・・」

〇劇場の楽屋
ゆづき「はるかが倒れて楽屋に運ばれた後・・・」
ゆき「通して!お願い!」
ゆづき「ゆきちゃんが慌てて入ってきて、はるかと何か話しているのが見えたの」
ゆづき「二言三言交わした後、ショックを受けたような顔で出てきてさ・・・」
ゆき「今日はごめん・・・ 今まで、ありがと──」
ゆづき「って言ってさ、走って行っちゃったんだよね・・・」

〇病室(椅子無し)
はるか「そうだったんだ・・・」
さくら「カゴちゃんはさ、覚えてないんだよね? 何を話したのか・・・」
はるか「うーん・・・」
  はるかは頭をひねって考えてみたが、まるで記憶に穴が空いたような感覚で、何も思い出せなかった。
さくら「それならゆきから聞くのが早いか・・・ゆきの家知ってる?」
  二人は首を横に振った。
はるか「うち、何か余計なこと言ったのかな・・・」
ゆづき「あの後救急車に一緒に乗っちゃったから、私たちゆきちゃんに会ってないの・・・だからわからない」
  全く思い出せない・・・だが、ゆきを傷つけてしまったのは事実のようだ
はるか「謝りたい・・・夏休みだけど、学校に来てくれるかな・・・」
さくら「どうかな、もう部室に来るつもりはないんじゃない?」

〇学校の部室
  さくらの言う通り、一週間経ってもゆきは学校に現れなかった。

〇散らかった職員室
先生「個人情報ですから、勝手に教えるわけにはいきません」
  先生も住所を教えてくれなかった。
  ゆきが今どこにいるのかさえ、誰も知らない。

〇学校の部室
ゆづき「今日も来ないね・・・」
さくら「そもそもメンバーだったわけじゃないんだし、引き止められないでしょ?」
はるか「・・・」
ゆづき「はるかは今日も練習見学する?」
  はるかはすっかり意気消沈していた。
  大会のショックに加え、ゆきを傷つけてしまった事実が、心に重くのしかかっている。
  とりあえず部室には来ているものの、特に何をすることもなく過ごしていた。
はるか「うーん、お医者さんにも安静にしてって言われたし・・・」
ゆづき「じゃあ、次の目標を決めるとか・・・」
はるか「うーん、二人で決めていいよ・・・」
「・・・」
  ゆづきとさくらも、はるかの様子がおかしいことに気が付いていた。
  なんとか元気付けようと二人は色々と話しかけてくれるが、本人にはあまり響いていない。
  部室の空気はいつになくどんよりとしている。
はるか「うちがいると話しにくいよね・・・また明日ね・・・」
ゆづき「あっ・・・はるか!」
  はるかは呼び止める声も無視をして、部室を出た。

〇公園の入り口
はるか「はぁ・・・逃げてきちゃった・・・」
  はるかは公園のブランコに腰を下ろした。
  あたりを見回すと、何人かの少女たちがスピーカーの周りでダンスの練習をしているようだった。
はるか「練習・・・最近しっかり踊ったの、いつだっけ・・・」
  はるかが感傷に浸っていると、公園の隅の方で鈍い音がした。
  誰かがダンス中に転んだようだ。
はるか「すみません、大丈夫────」
  途中まで言いかけて、はるかは目を丸くした。
ゆき「・・・」
  倒れていたのは、ゆきだった。
はるか「ゆき・・・」
ゆき「・・・っ!」
はるか「待って!」
  逃げ出そうとするゆきの腕を掴んだ。
  肌にじんわりと汗がにじんでいるのを感じた。
はるか「ゆき、どうして最近部室に来てくれないの・・・?」
ゆき「それは・・・だって・・・」

〇劇場の舞台

〇劇場の楽屋
はるか「ゆきが・・・」

〇公園の入り口
ゆき「・・・大会で勝てなかったのは、私のせいよ」
はるか「違う!そうじゃない! gladiolusだっていたし、そもそも・・・」
ゆき「私のせいよ!!!」
  ゆきの剣幕に圧倒されて、はるかは口をつぐんだ。
ゆき「中途半端な練習スケジュールだった、無理だとわかっていた大会に出場させた、それに・・・」
ゆき「本番前に一番やってはいけないことをした・・・」

〇舞台袖
ゆき「はるか、センターを降りて」

〇公園の入り口
ゆき「友達を最後まで信じてあげられなかった・・・」
はるか「ゆき・・・」
ゆき「はるか、楽屋であなたに言われて気が付いたのよ」

〇ホールの舞台袖
「私は、幼いころに諦めた夢をあなたたちに背負わせた・・・」
「自分の苦しみをあなたたちに押し付けていた・・・」

〇劇場の楽屋
はるか「・・・ゆきが、」
はるか「・・・」

〇公園の入り口
ゆき「私が、あなたたちのステージを、夢をめちゃくちゃにした」

〇劇場の楽屋
はるか「ゆきが・・・いなかったら・・・」

〇公園の入り口
はるか「ゆきが・・・いなかったら・・・」
  はるかは思い出した。
  頭を打ったあの時、ゆきに何を言おうとしていたのか・・・
  そして、伝える途中でゆきが出ていってしまったことも・・・
はるか「ごめん!」
ゆき「・・・私がいなかったら良かったんでしょう?」
はるか「違うの、本当は・・・」

〇劇場の楽屋
はるか「・・・ここまで成長できなかった」
はるか「ありがとう・・・」

〇公園の入り口
はるか「本当は、そう言いたかったんだ」

〇中庭
はるか「中庭でダラダラやっているだけだった私たちが、」

〇中庭
はるか「目標を定めて努力するようになって、」

〇劇場の舞台
はるか「ぼろぼろだったけれど、大会にまで出場できた」

〇公園の入り口
はるか「一緒に頑張ってくれてありがとうって、そう伝えたかったんだ」
  はるかがそこまで言い切ると、ゆきの目から大粒の涙がこぼれた。
ゆき「じゃあ、わたし・・・わたし────」
はるか「これからも、ゆきと一緒に頑張りたい!」
はるか「それに、もしよければ一緒にステージの上で頑張りたいなって思うんだけど、どうかな・・・?」
  ゆきは涙を手首でぬぐいとると、はるかの方へ向き直った。

〇宇宙空間
ゆき「私も、一緒に頑張りたい!」

次のエピソード:第11章 彼方の出来事

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