エピソード58(脚本)
〇闘技場
さぁ、みなさんお待ちかね!
今年もまたあの番人に挑戦する者が現れました!!
挑戦者は今大会、すべてのギアーズを一撃で再起不能にしてきた男、ニル!
ニル選手はついにあの絶対王者を下すことができるのでしょうか?
それともこれまでの挑戦者のように、蹂躙されてしまうのでしょうか!
会場が割れんばかりの喚声に包まれる。
ニル「番人・・・? 今までのギアーズとなにか違うのかな?」
グゥルルゥゥ
ニル「!!」
入り口からただよう気配に、ニルの右腕はピリピリと血が沸くような疼きを感じた。
ズシン・・・、ズシン・・・
入り口の奥から鈍重な足音が響く。
ニルは闘技場の入り口に向かってヴェラグニルを構えた。
すると、入り口の暗闇から小さなギアーズの頭が現れた。
ニル(まだ足音は遠くに聞こえるけど・・・)
ニル「!!」
頭の次に首が見える。
そして・・・まだ首が続く。
ズシン・・・、ズシン・・・
入り口から姿を現したギアーズはゆっくりと首を起こした。
さあああ!
ついにその姿を現した”番人”!
ニル選手、どうするのか!?
ギャァァァ
首の長いギアーズは一声大きく鳴くと、ニルに鋭い目を向ける。
・・・しかしニルは首の長いギアーズには目もくれず、その後ろにある闘技場の入り口をじっと見ていた。
どうしたのでしょう・・・?
ニル選手、ピクリとも動きません!
ニルは先ほどから感じる気配・・・。
首の長いギアーズではなく、その後ろの
入り口から漏れる気配に意識を向けていた。
ニル(俺はこの気配を知ってる・・・)
首の長いギアーズは反応しないニルに業を煮やしたのか、またひと際大きな声で鳴くと、ニルに近づいてきた。
ついに”番人”が動きました!
さぁニル選手!どうするのでしょうか!
〇闘技場
アイリ(・・・?)
エルル「ニルさん! どうしたんでしょうか!」
〇闘技場
すると、突然首の長いギアーズは動きを止めたと思うと後ろを振り向いた。
そして前を向くと、怯えたようにニルの横をすり抜けてニルが出てきた入り口へと突進していった。
な、なんと!
どうしたのでしょうか・・・
あの“番人”が慌てふためいて逃げております!
なにがあったのでしょうか!?
ニル(・・・・・・)
ニルはじっと首の長いギアーズが出てきた入り口からその気配の主が現れるのを待っていた。
首の長いギアーズが立てた煙の中から、ひとりの女性が姿を現した。
ヤン「・・・・・・」
こ、これはどういうことでしょうか!?
ここからは小さくて見えませんが、闘技場に女性が入ってきたように見えます!
ニルは黙って再度剣を構えた。
確かヤンと呼ばれていた女性からは、あのときと同じ危険な匂いをビシビシと感じる。
ヤン「はぁ・・・、なんでこんな面倒な仕事を・・・。 まぁ陛下に頼まれたのでやりますけど」
ヤン「君には申し訳ないけど、さっさと終わらせてもらいますよ」
そう言うとヤンはうずくまるようにして四つん這いになった。
ニル(!! あのときと同じだ)
見る間にヤンの体が変化していく。
そして先ほどの首の長いギアーズを上回る巨大なドラゴン型のギアーズが現れた。
グゥルルル・・・、ゴァァァアアア!
な、なんと、突然巨大なギアーズが現れました!
会場は突然現れた見たことのないギアーズに騒然としだした。
〇闘技場
ミリアドラ(くふふ・・・、せっかくの祭りじゃ。 このような余興は大切じゃろう)
ミリアドラ(ヤンには手加減するなと言ってある。 さて、ニルのお手並みを拝見させてもらうぞ)
〇闘技場
状況はわかりませんが、このドラゴンがニル選手の次の対戦相手のようです!
ニル選手、”番人”が逃げ出すほどの相手にどのような戦いを見せてくれるのでしょうか!?
ゴァアアアア!!
ヤンが叩きつけてきたかぎづめをニルは紙一重で避けた。
そして跳んだ先に迫る踏みつけをさらに避ける。
ニル(くそっ・・・!)
ニルは先ほどからずっと攻撃を避け続けることを強いられていた。
致命傷になる攻撃が際限なく続いていて反撃の糸口が見いだせない。
ニル(せめて一瞬でも隙があれば・・・)
そう考えている間にもカギづめ、尻尾、体当たり、と流れるように攻撃がやまない。
ニルは縦横無尽に素早く動きながらヤンの攻撃をかわし続けていた。
ニルは体ごと突っ込んでくるような踏みつけを避け、横から飛んできた尻尾を後ろに跳んで避けた。
と、避けたと思ったヤンの尻尾が突然にゅっと伸びる。
ニル「!?」
ニルは間一髪で右腕をブレードへと変化させて尻尾を受けた。
なんとか直撃は避けたものの、ニルの体は吹っ飛び、地面に叩きつけられるように転がる。
ニル(な、なにが起きたんだ!?)
ヤンを見ると、伸びた尻尾がすっと短くなっていく。
ニル(まさか・・・)
ガァァァアアアアア
ヤンがとどめとばかりに突っ込んできて叩きつけてくるかぎづめを、ニルは横に跳んで避けた。
かぎづめは攻撃の瞬間にシュッと伸び、ニルがさっきと同じように後ろに跳んでいたら通ったであろう場所をえぐった。
ニルは先ほど見た、ヤンがギアーズに変形していく様を思い出していた。
攻撃の際に伸びたかぎづめは、変形のときと同じように動いて元の長さに戻っていく。
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