バディ・ザ・アローン

ひであき

第3話 捜査開始(脚本)

バディ・ザ・アローン

ひであき

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〇西洋の街並み

〇英国風の部屋
アレク「誰だ、こんな朝早くから。こっちはまだ昨日の酒が抜けてないってのに」
アレク「また新聞の勧誘か? 二度と来るなって念を押したのに懲りない野郎だ」
アレク「おい、次来たら金玉をナッツみたいに割ってやるってあれほど──」
リンス「おはようございます! アレク先輩!」
リンス「って、何ですかその格好!? 服を着てください服を!」
アレク「頼んでもないのに家に来られてそんな反応されるのは心外だ」
アレク「そもそも何で俺の家を知ってるんだ?」
リンス「スカーレット少佐に教えてもらったんです! いいから早く服を着てください!」
アレク「ったく、レティの奴。個人情報をあっさり教えやがって。管理職の自覚があるのか?」
色っぽいお姉さん「何よ? 朝からうるさいわね」
色っぽいお姉さん「って、誰よこの乳臭い女は」
リンス「えっ、あの」
アレク「起こして悪かった。こいつは俺の新しい相棒だ。昨日話しただろ?」
色っぽいお姉さん「へー、この子が噂の。残念だけど私まだミルクは出ないのよ」
リンス「誰もそんなこと頼んでません!」
アレク「こういうわけだ。今日はもう帰ってくれないか? 埋め合わせは後日する」
色っぽいお姉さん「仕方ないわね。お得意さんだから許してあげるわ」
色っぽいお姉さん「またねアレク。楽しかったわ」
アレク「俺もだ。また頼むよ」
色っぽいお姉さん「ええ。それじゃ」
リンス「今の女性は恋人ですか?」
アレク「まさか。独り身の寂しい男を慰めてくれる夜の女神だ」
リンス「ああ、そういう。昨晩はお楽しみだったんですね」
アレク「まあな。おかげでここ数日の子守の疲れが吹き飛んだ。やっぱり相手をするなら大人の女だな」
リンス「それどういう意味ですか?」
アレク「言葉通りの意味だ。それより何しに来た? 朝飯をたかりに来たのか?」
リンス「誰がそんなこと! それよりいい加減服を着てください!」
アレク「やれやれ。寝起きに女子供の喚き声は頭に響くな」

〇英国風の部屋
アレク「それで、何の用だ? 仕事の話なら仕事のときにしたいんだがな」
リンス「先輩いつも遅刻してくるって聞いたので迎えに来ました」
アレク「勘弁してくれ。お子様に世話を焼かれるほど落ちぶれたつもりはないぞ」
アレク「朝からお手々を繋いで仲良く定時に出勤か? どんな罰ゲームだ」
リンス「アレク先輩と手を繋ぐとか冗談じゃないです!」
リンス「これからカスディアの悪巧みを暴くために協力し合う相棒同士なんです」
リンス「気を引き締めていかないと。そのためにも先ずはアレク先輩の弛んだ性根を叩き直すことにしました」
アレク「なるほど。さてはレティの奴うきうきで俺の家を教えたな」
リンス「私と組むからには遅刻は許しません。今日から毎日迎えに来ますからね」
アレク「おいおい本気で言ってるのか?」
リンス「本気です。あと平日中のお酒は禁止にします。仕事に支障をきたす恐れがあるので」
アレク「ジョークにしても笑えないぜ。それを言ったら他の連中はどうなるんだ?」
リンス「相手は国の上層部に影響力を持つほどの組織です。常日頃から万全の状態を維持して捜査に臨むべきです」
リンス「しばらく女性も禁止です。毎朝遅刻する原因になっているようですし」
アレク「シャバでムショの生活を再現しろってか? 実際にブチ込まれるよりキツいぞ」
リンス「異論は認めません。これから相棒としてしっかり管理させていただきますからね」
アレク「私生活にまで口出しされる筋合いはないんだがな」
リンス「話がわかったところで朝御飯を食べましょう」
リンス「私お肉が食べたいです!」
アレク「朝から食い意地が張ってて何よりだ」
リンス「コーヒーも淹れてくれると嬉しいです」
アレク「やっぱりたかりに来たんじゃないか」
アレク「今日から毎朝この調子か? 毎晩夢に出そうだ」

〇城の廊下
スカーレット「おはようアレク。定時で出勤するお前を初めて見たぞ」
スカーレット「リンスと上手くやっているようで何よりだ。ぷくく」

〇ヨーロッパの街並み
アレク「やれやれ。この状況を見て笑うとは趣味が悪いな、レティの奴」
リンス「私スカーレット少佐のこと誤解してました。もっと冷たくて恐い人だと思ってました」
リンス「あんなによく笑う人だったんですね!」
アレク「レディの笑顔は宝石以上の価値があるが、あんな笑われ方をされるのは心外だ」
リンス「今日はどうします? 今のところそれらしい情報は入ってませんけど」
アレク「そうでもない。最近やけに羽振りが良くなった男がいるってジェシーから情報が入った」
リンス「ジェシー? 誰のことですか?」
アレク「今朝会っただろ」
リンス「ああ。あの人そんな名前だったんですね」
アレク「彼女たちは情報通だ。下だけじゃなくて仕事でも世話になってる」
アレク「夜通し聞き込み捜査をしてたってわけだ。わかったなら女禁止を取り下げてくれ」
リンス「情報を仕入れるだけなら一晩を共にしなくてもいいのでは?」
アレク「謝礼を弾むのは当然だろ? お互い良い思いをしながら仕事ができるんだ。悪い話じゃない」
リンス「相手がそう思ってるわからないじゃないですか」
アレク「今朝のあれを見てもそう思うのか?」
アレク「やれやれ。お子様に大人の距離感がわからないのは当然か」
リンス「何か?」
アレク「何でもない。例の男のところへ行くぞ」
リンス「あっ、待ってください! まだ話は終わってません!」
アレク「お前がそうでも俺は終わった」

〇建物の裏手
チンピラ「へへっ、毎度あり。お客さんも好き物だねぇ」
チンピラ「あんまり飲み過ぎるなよ。一晩中ナニがバキバキになって女無しじゃ眠れなくなるぜ」
アレク「そいつは良いことを聞いた。最近ムスコの元気が無くなってきて困ってたところだ」
チンピラ「て、てめえはこの前の!?」
アレク「昨晩も早めにタップしちまってな。年は取りたくないもんだ。俺にも売ってくれないか?」
チンピラ「クソ! また捕まってたまるかよ!」
リンス「逃がしません!」
チンピラ「ぎゃあ! あ、足が! 俺の足がぁあ!」
アレク「おい、町中での魔法は──」
リンス「状況に応じて使用を許可されているのが私たち憲兵じゃないですか」
アレク「それはそうだが無闇に使うのはどうかと思うぞ」
リンス「規則破りの常習犯らしくない台詞ですね」
チンピラ「クソ! 一度ならず二度までも! てめえら俺に恨みでもあるのか!?」
アレク「たまたま網にかかった魚がお前だったってだけの話だ」
アレク「それで、さっきの薬の話は本当か?」
チンピラ「あ、ああ! 入用だってんならあんたにタダでくれてやってもいい! だからこの氷を何とかしてくれ!」
アレク「話が早くて助かる。氷を解除してやれ」
リンス「目的を間違えてませんか!?」
アレク「ジョークに決まってるだろ。頭の固い奴だ」
リンス「先輩が軟派すぎるんです!」
チンピラ「お、おい! さっきから何の話をしてるんだ!? 早く氷を何とかしてくれ!」
アレク「それはお前の返事次第だな」
チンピラ「な、何だと!?」
リンス「あなたにはカスディアに関与している嫌疑がかかっています」
チンピラ「な、何の話だ!? お前ら令状は!? こんなことしてタダで済むと思うなよ!」
アレク「必要なら用意してくるが、今は時間が惜しい。お前の金玉に話を訊いたほうが早そうだ」
チンピラ「ひ、ひぃ! な、何をするつもりだ!?」
アレク「そんなの一々説明しなくてもわかるだろ」
リンス「わ、私、人が来ないかあっちで見てるので早めに済ませてください」
チンピラ「お、おい待て! こいつを何とかしろ!」
アレク「さて、野郎と二人きりは趣味じゃなくてな。一秒でも早く話を済ませたい。協力してくれるよな?」
チンピラ「く、クソ! 俺から何を聞き出そうってんだ!?」
アレク「お前が連中のブツを捌いてあぶく銭を稼いでるのは調べがついてる」
アレク「その罰としてケツの穴を恋しく想ってる連中のところにお前をブチ込むのは簡単だ」
アレク「話はわかったな? 質問には迅速に正しく答えろ」
チンピラ「み、見返りは!? 話せば俺の命はねえ! 何とかしてくれるんだろうな!?」
アレク「返事次第だ」
チンピラ「わ、わかった。俺から何を聞きたい?」
アレク「連中のアジトはどこだ?」
チンピラ「し、知らねえ」
アレク「お前の金玉がそう言ったのか?」
チンピラ「ほ、本当だ! 俺は組織の仲介を通してブツを仕入れてるだけだ。売り上げの大部分は連中の懐に入る!」
アレク「つまり連中に売上を渡すタイミングがあるってことだな?」
チンピラ「金を受け取った連中が組織の奴とは限らねえ」
チンピラ「俺みてえな下っ端を何人も経由して金を受け取ってるはずだ」
アレク「なるほど。お前も替え効く手駒の一人ってわけか」
アレク「それで、お前の金を受け取る奴はどこにいる?」
チンピラ「裏通りの〈蛇の丸飲み亭〉って店だ! そこでいつもブツと金のやり取りをしてる!」
チンピラ「これ以上のことは何も知らねえ! なあもういいだろ!?」
アレク「そうか。金の引き渡しはいつだ?」
チンピラ「こ、今晩だ。一日の締めに毎日金を渡してる」
アレク「わかった。お前には協力してもらうぞ」
チンピラ「だから見返りは!? 安全は保障してくれるんだろうな!?」
アレク「もちろんだ。憲兵団で保護してやる」
アレク「それとこいつは俺が預かっておく。アブない成分が入ってないか調べておきたいからな」
チンピラ「それは俺のオリジナルだ! 合法な成分しか入ってねえ!」
アレク「なら成分表もあとで寄越せ。こういうのを調べるのも俺たちの仕事だからな」
チンピラ「あんた使いたいだけじゃねえか?」
アレク「金玉は一つあれば十分だと思わないか?」
チンピラ「い、言う通りにする! 約束は守ってくれよな!」
アレク「もちろんだ。おいお嬢ちゃん!」
リンス「その呼び方止めてください!」
アレク「お前が一人前になったら考えてやる」
アレク「話がついた。こいつの氷を解除してやれ」
リンス「了解いたしました。まったくもう」
チンピラ「ふ、ふう、霜焼けになるところだったぜ」
アレク「わかってるとは思うが」
チンピラ「逃げたりなんかしねえよ!」
チンピラ「憲兵団と組織のどっちかに付かねえと命はねえ!」
チンピラ「約束は守ってもらうぞ! いいな!?」
アレク「お前何か勘違いしてないか?」
チンピラ「ひ、ひぃ! と、とにかく今晩〈蛇の丸飲み亭〉で待ってるからな!」
リンス「行かせて良かったんですか?」
アレク「一先ずはこれでいい。それより今晩〈蛇の丸飲み亭〉に集合だ。それまで自由行動にする」
リンス「あっ、待ってください!」
リンス「これは私が預かっておきます」
アレク「何だ、全部聞こえてたのか?」
リンス「聞き耳を立てる職業柄ですから。まったく、油断も隙もないですね」
アレク「そいつは合法な薬だ。持ってても使っても法律違反にはならない」
リンス「あの男の言ってたことが本当だなんて保証はありません。万が一違法な薬だったらどうするつもりですか?」
リンス「本当に合法な物なのか然るべき機関に調べてもらいます」
アレク「仕方ない。どうにかして奴から成分表を入手するしかないな」
リンス「何か言いましたか?」
アレク「いや何も」
リンス「先輩のぐーたらは目に余ります。この調子で引き締めていくので覚悟してください!」
アレク「困ったな。俺が手綱を握る立場なのに逆にこの有様か」
アレク「──お前が恋しいぜ、ローガン」

〇ヨーロッパの街並み
アレク「さて、行くとするか」
アレク「奴が言ってた店はこの辺りのはずだ」
リンス「アレク先輩!」
リンス「あれ? その格好どうしたんですか?」
アレク「それはこっちの台詞だ。そんな恰好で乗り込んだらホシに逃げられるぞ」
リンス「す、すみません。そこまで思い至りませんでした」
アレク「やる気は買うが空回ったんじゃ意味がない」
アレク「今すぐ着替えてこい。なるべく目立たない恰好でな」
リンス「家に戻る時間がないので近くの店で買ってきます!」
アレク「ああは言ったが、若者のああいう初々しい姿を見るのは久しぶりだな」
アレク「我ながらジジ臭くなったな。年は取りたくないもんだ」

〇ヨーロッパの街並み
「お待たせしました!」
アレク「やっと来たか。どこかで道草でも──」
リンス「遅くなってすみません! さあ、急ぎましょう!」
アレク「────」
リンス「どうかしましたか?」
アレク「──いや、何でもない」
リンス「何か様子が変ですね」
リンス「あっ、さてはこの格好の私に見惚れたんじゃ」
アレク「そんなんじゃない」
アレク「少し、昔を思い出しただけだ」
リンス「昔、ですか?」
アレク「独り言だ。気にするな」
リンス「先輩がそう言うならそうしますけど」
リンス「それより他に何か言うことがあるんじゃないですか?」
アレク「馬子にも衣装だな」
リンス「それ絶対言うと思ってましたよ!」
アレク「着替えで遅れてきた奴の言い草じゃないな」
リンス「うぐっ、それを言われると何も言い返せないです」
アレク「初めからその格好で来てれば他に言い様もあったんだがな」
リンス「どういう意味ですかそれ?」
アレク「わからないならいい」
アレク「行くぞ。遅れた分はしっかり働けよ」
リンス「遅刻の常習犯に言われると何か腑に落ちないですね」
アレク「何か言ったか?」
リンス「い、いえ何も!」
アレク「前置きはここまでにして、連中の尻尾を掴みに行くぞ」
リンス「はい!」

次のエピソード:第4話 リンスの大暴れ

コメント

  • 思わず吹き出してしまいました😁
    そのうちこんなストーリーも書きたいですね😊

  • あらあら、とっても色っぽい朝からですねwww 硬軟織り交ぜたストーリー展開と2人の会話内容で、見ていて高揚感を覚えます!

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