DAY22: 大丈夫って信じたい(脚本)
〇雑踏
大人になるのは
降り注ぐ雨が、地上で泥水に変わっていくのに似ている。
キレイな感情も薄汚れた欲望も纏いながら
僕らは落下していく。
雑音だらけの濁った毎日の中へ。
この世界で、僕にとって君は
限りなく透明で無垢な雨だった。
キラキラ零れる
清らかでやさしい魔性の雨。
僕はいつもずぶ濡れになって
泣いたり、喚いていたりしているだろう。
それでも僕を満たすのは
君の雨の音だけでいい
泥だらけの世界で僕は、
胸を掻きむしりながら
その冷たい熱に、ずっと焦がれている。
〇学校の屋上
三澤梨々花(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
三澤梨々花(先生の小説・・・なんかすごかった)
三澤梨々花(恋愛小説って初めて読んだけど 冒頭から主人公が『彼女』を好きなことが激しく伝わってきた)
三澤梨々花(でもその思いは切なくて苦しくて・・・ 本を閉じても・・・胸が痛い まるで自分の中に同じ感情があるみたいに)
三澤梨々花(紅さんは恋愛は幸せになるためにするって言ってたけど・・・ それだけじゃないんだね)
三澤梨々花(たくさんの人が先生の小説に共感するのは そういうところなのかなぁ)
三澤梨々花(たしかにヒロインは キリエさんに似てる気がした・・・ ワガママで奔放で、でも魅力的で・・・)
三澤梨々花(・・・先生はこんな風に、キリエさんが好きなの?)
三澤梨々花「なんでかな・・・・・・ すごく引き込まれたけど、続きは読めないかもしれない・・・」
三澤梨々花(読んでる間も胸がざわざわして・・・ 影響されてるのかな?)
上杉睦「あれ・・・三澤?」
三澤梨々花「睦くん、どうしたの?」
上杉睦「いや、おれは昼寝しに ・・・1人でメシ?」
三澤梨々花「あ〜うん・・・ 美森とはちょっとあって・・・」
三澤梨々花「あ、土曜日はありがとう 遊園地楽しかったね」
上杉睦「ああ、そうだな それはいいんだけど・・・」
上杉睦「大丈夫、なのか? その、土曜日吉沢が先に帰ったのも ケンカしたからなんだろ?」
三澤梨々花「・・・・・・うん ごめんね、何も話してなくて」
三澤梨々花「私が悪いんだ・・・ でも話すきっかけが作れなくて」
三澤梨々花(今朝も挨拶したらムシされちゃったし・・・ 休み時間もどっか行っちゃうし)
上杉睦「・・・・・・あのさ、原因って」
上杉睦「貴島に告られたから?」
三澤梨々花「・・・・・・・・・・・・・・・・・・!」
上杉睦「やっぱりか・・・ アイツも様子変だったからさ」
上杉睦「それを吉沢に見られた、とかなんだろ?」
三澤梨々花「睦くん、知ってたの? 里見くんの・・・ 美森の気持ち・・・」
上杉睦「まあ、一緒にいればなんとなく 貴島は吉沢の気持ちは知らないと思う 三澤しか眼中にないしな・・・」
三澤梨々花「・・・やっぱり私って鈍感だよね 美森に愛想つかされても仕方ないね ほんと、サイアク・・・」
上杉睦「三澤のせいじゃないだろ 貴島は女子には誰にでもやさしいし 勘違いさせることも多いし でも・・・」
上杉睦「本命にはビミョーに態度 違ったりするんだよな 吉沢はそれに気づいてたのかもな」
上杉睦「その相手が三澤なら複雑だったと思う 一番仲がいい友達なんだろうし だからつい感情的になっちゃったんじゃないか?」
三澤梨々花「・・・私、里見くんのやさしさは 当たり前のものだと思ってたの 友達だからって」
三澤梨々花「だから好きって言われても どうしたらいいかわからなくて」
上杉睦「三澤はさ・・・貴島とつきあうとか考えたことないのか?」
三澤梨々花「私は・・・里見くんのことは好きだけど 考えたことなかった」
三澤梨々花「大切な友達だから今のままがいい ずっと4人で仲良く出来たらいいって・・・ 違うカタチになりたいなんて 思ったことなくて」
三澤梨々花「みんなの『好き』は同じだって思ってた ・・・バカだよね」
三澤梨々花「里見くん、なんで私なんて・・・ 美森の方が他人思いでいつも一生懸命で いい子なのに」
上杉睦「吉沢がいいヤツってことは 貴島だってわかってるよ でもだから恋愛感情が生まれるってわけじゃ ないと思う」
上杉睦「理由とか理屈とかよくわからないけど いつのまにか目で追ってたりとか なんとなくほっとけないとか」
上杉睦「知らないうちに気になってるもんじゃないかな・・・たぶん 三澤はそういう経験ないの?」
三澤梨々花「うん・・・ ヘンかもしれないけど 誰かを特別に好きにならない方がいいと思ってきたから」
上杉睦「それって引越しが多かったことと 関係してる?」
三澤梨々花「うん、それもあるかな・・・」
上杉睦「他に何かあったのか?」
三澤梨々花「・・・ううん ただ、私は変わらないでいられる方が 安心するんだ」
三澤梨々花「でもある人に もっといい関係になるためには、時には変えることも大切って言われたの」
三澤梨々花「だから・・・ 今まで美森とはぶつかったりしたことはなかったけど、ちゃんと向き合ってみようと思う 聞いてくれないかもだけど」
三澤梨々花「里見くんともね 都合いいかもしれないけど これからも友達でいたいから」
三澤梨々花「あっ、でも睦くんには迷惑かけちゃうかも しばらく二人とはギクシャクするかもしれないし・・・」
三澤梨々花「ごめんね💦」
上杉睦「気にすんな それに大丈夫だよ おれはこの4人がダメになるとは思ってないから」
上杉睦「二人も三澤と話すの待ってると思うよ だから頑張れ」
三澤梨々花「ありがとう ごめんね、お昼寝タイムが相談になっちゃって・・・」
三澤梨々花「でもそう言ってもらえて心強いよ また4人でいられるように、ちゃんと気持ち伝えてみるね!」
上杉睦「ああ おれはとりあえず見守ってるけど・・・」
上杉睦「いつでも話聞くし 加勢が必要なら言ってくれ 無理すんなよ」
三澤梨々花「うん! じゃあ私教室戻るね また部活で!」
上杉睦「4人で・・・・・・か」
上杉睦「・・・おれも損な役回りだな」
〇学園内のベンチ
「先輩、おつかれさまでしたー」
吉沢美森「おつかれさまー 気をつけてね」
三澤梨々花(あっ・・・・・・)
三澤梨々花「美森!!」
吉沢美森「・・・・・・何? 急いでるんだけど」
三澤梨々花「あ、あのね・・・・・・」
三澤梨々花「今じゃなくていいから・・・ 話すチャンスもらえないかな?」
吉沢美森「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
三澤梨々花「このまま終わりたくないの 美森は初めて出来た親友だから・・・」
三澤梨々花「今更だけど、美森と本音で話したいの 気持ちも全部聞きたい ・・・待ってるから」
吉沢美森「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
三澤梨々花「引き止めてごめんね じゃあ、また明日ね」
吉沢美森「・・・・・・あ・・・」
〇学校の校舎
三澤梨々花(よかった・・・ ちゃんと言えた)
三澤梨々花(不安だけど・・・信じて待とう 睦くんが言うように、大丈夫・・・ ダメになったりなんて絶対しない・・・)
三澤梨々花(もし美森が許してくれたら・・・ 私も、少しずつ話していこう 自分のこと・・・)
三澤梨々花「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
三澤梨々花「うん、信じよう!」
三澤梨々花「よーし、気持ち切り替え! じゃあ先生のところに寄って帰ろ 週末掃除出来なかったし、ごはん食べてるのかも心配だし」
三澤梨々花(里見くんはもう帰っちゃったみたいだから 明日話しかけてみよう・・・)
〇平屋の一戸建て
〇ボロい家の玄関
三澤梨々花(豚のしょうが焼きの材料買ってきちゃった)
三澤梨々花(土曜日の・・・迷惑かけちゃった お詫びの品を用意しようと思ったけど・・・)
三澤梨々花(年上の男の人って 何あげたらいいかわからないし なんとなく、先生は物だと喜ばない予感がするし・・・)
三澤梨々花(だったら、気に入ってくれたごはんを作ってあげる方がいいよね 先生の健康のためにも!)
三澤梨々花(私の料理、おいしいって言ってくれたし)
───ガラガラガラ・・・(引き戸の開く音)
三澤梨々花(・・・ん?)
扇谷「・・・あれ」
扇谷「君────」
梨々花ちゃんが一歩踏み出す成長回……と同時に上杉くんの好感度爆上がり回ですね!彼には幸せになってほしいと心から思ってしまいました、、、本作では珍しいクセの無いキャラですし(←失礼しました)
冒頭のはるか先生の著作、詩的で好きです!
もうただただ上杉君が不遇だなと思ってしまいます…
間違いなく良い人のはずなのに!!!
毎回次が気になる終わり方にするのずるいです!
これからも無理なさらずに頑張ってください!