エピソード57(脚本)
〇英国風の図書館
ニル「だめだ・・・。 なにも書いてない」
ニルは膝の上に置いた本をぱたんと閉じると、横に積まれた本の山の一番上に置いた。
ニル「はぁ・・・。 ここに来ればすぐになにか見つかるかと思ってたけど・・・」
ニル「そううまくはいかないね」
アイリ「こっちにもなし・・・。 弱音を吐いても意味がないわ。 次に行きましょう」
アイリ「エレナ、これはもう全部見たわ。 次を持ってきてもらえる?」
司書「かしこまりました」
エレナは積まれた本の山のひとつを抱えると本棚の列へと消えた。
アイリ「それで、今まで見つけたのはなに?」
ニル「えーっと、これは魔女の呪いで人の形をしたギアーズへと姿を変えられた王子が長い旅の果てに姫のキスで元の姿に戻る本」
アイリ「それ、物語でしょ?」
ニル「じゃあこれ・・・、実は街には人に化けたギアーズがたくさん住んでて夜な夜な人を殺して回ってるって本」
アイリ「それも物語ね」
ニル「これは? 」
ニル「今から350年前、ドルズブラって街を人の姿をしたギアーズが襲ったときのことを書いた本」
アイリ「それは参考になりそうね」
ニル「で、そのとき超能力に目覚めた『私』は襲い来るギアーズをばったばったと・・・」
アイリ「・・・それも物語なのね」
アイリ「ねぇちょっとニル、小説以外はないの?」
アイリ「私たちはお話の中じゃなくて現実にいる人型のギアーズについて知りたいのよ・・・」
ニル「今のところは・・・」
アイリ「はぁ・・・」
ニル「ごめん」
アイリ「謝る必要なんてないわよ」
ニル「アイリは毎日付き合ってくれてるのに・・・」
アイリ「なに言ってんのよ。言ったでしょ? 私もあのゼノンについて調べたいの」
アイリ「私が好きでやってるんだからあんたは気にする必要ないのよ」
ニル「そうだね・・・。 ありがとう、アイリ」
ニル「・・・・・・」
アイリ「う~ん」
アイリは立つと大きく伸びをした。
アイリ「はぁ・・・、でも朝からずっとここで本を読んでたから、おなかがすいたわ。 休憩にしましょうか」
ニル「そうだね。 俺もおなかが減ったし休憩に・・・」
司書「ニル様、アイリ様、新しい本をお持ちしました」
エレナはニルとアイリの近くにまた新たな本の山を置いた。
アイリ「そうね、じゃあこの本だけ調べたら休憩にしましょ?」
ニル「そうだね」
ニル「・・・・・・」
ニル「ちょっと待って、これ、ゼノンに関係してるかもしれない」
アイリ「どれ?」
アイリはニルの横に座ると一緒に本を覗き込んだ。
どうやらこの本の著者は行商人で、旅の最中に見聞きしたある「人型のギアーズの伝説」についてまとめているようだ。
『そのギアーズはあるところでは神とあがめられ、あるところでは悪魔と忌み嫌われている』
『しかしどこの伝説にも共通するのは「白色の髪」で「ギアーズのような機械の両腕」を持った「少年のように見える男」』
『災厄と共に現れ、人を蹂躙するときもあれば、荒れ果てた村を助け、その再生に手を貸すときもある』
『助けたり、困らせたり、長い間人のそばで暮らしたと思えば、すぐに姿を消すこともある』
『いくつもの伝説に出てくるその男は容姿以外まったく一貫性がない』
『まるで神話に出てくる気まぐれな神のようだ』
『私が集めた伝説ではその正体は皆目見当がつかなかった』
『果たしてそれは神なのだろうか、それとも悪魔なのだろうか?』
『私にはそれが別のなにかであるような気がしてならない』
『彼の正体を知るものは、どうかこの本に書き加え語り継いでほしい』
アイリ「「白色の髪」で「ギアーズのような両腕」を持った「少年のように見える男」・・・?」
アイリ「・・・確かにゼノンに似てるわね」
ニル「でもゼノンは左腕は機械だけど右腕は人間と同じような見た目をしてたよ」
アイリ「うーん・・・そうね。 結局これだけじゃなんとも言えないわねこれも創作かもしれないし」
ニル「そうだね・・・」
アイリ「もうちょっと調べる必要があるわね。 これは借りていきましょう?」
アイリ「エレナ、この本は借りられるかしら?」
司書「はい、その本は持ち出し可となっております」
司書「ではいつものようにこちらのシートに氏名と滞在先を・・・」
〇英国風の図書館
『果たしてそれは神なのだろうか、それとも悪魔なのだろうか?』
『私にはそれが別のなにかであるような気がしてならない』
ニル「・・・・・・」
アイリ「はい、ニル。用意できたわ」
ニル「あ、うん!」
アイリ「じゃあどこか食べに行きましょ?」
ニル「そうだね」
アイリ「ようやく明日から闘機祭だしね。 今日は好きなものをおなかいっぱい食べて、明日に備えましょう」
ニル「じゃあムザル麺」
アイリ「・・・本当に好きねあなた」
〇闘技場
──闘機祭開催初日
巨大な闘技場の観客席は人々で埋め尽くされ、これから始まる催しを今か今かと待ち望んでいる。
会場の上部には巨大なほら貝のような機械が置かれ、そこから会場全体へとアナウンスが行われていた。
『さぁ、今年も始まりました!闘機祭!』
『まずはじめに、この大会の主催者、われらが皇帝陛下からご挨拶をいただきましょう!』
そう言われて壇上に上がってきた姿を見て、ニルは驚愕した。
ニル「あ、あれは・・・。 ミリアドラ!?」
壇上に立つのは間違いなくアドラの街で出会った少女だった。
ミリアドラ「・・・! ・・・!」
ニル(ミリアドラが・・・、このハイドン帝国の皇帝!?)
エミリア「うむ・・・、陛下と呼ばれていたと聞いてまさかとは思っていたが、本当にニルが会ったのは皇帝陛下その人だったのか」
ニル「・・・・・・」
ミリアドラ「では、ここに闘機大会の開催を宣言する!」
『ワァァァァァァァ!!』
割れんばかりの大歓声が闘技場を包む。
エルル「さぁ、やってきましたね」
エミリア「あぁ、腕が鳴るな」
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