それを知ってるのは私だけ 

名も無き者

プロローグ(脚本)

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〇幻想空間
  この物語はフィクションです
  実在する国、人物、団体等とは一切関係ございません
ラヴィアリス「っ! ここは!?」
  黒いドレスを着た女性が目を覚ました。やけに重たい体を起こして辺りを見渡した。
ラヴィアリス「やっぱり私は”死んでしまった”のね・・・ 此処は【死後の世界】で間違いなさそうね」
  落ち着いた様子で一人納得し再び辺りを見回した。今度は離れた所だったが、何かが置かれてる教壇のようなモノを見つけた。
ラヴィアリス「あれは何かしら?」
  近づいて確かめると、置かれていたのは一冊の本だった。
  読みにくいが金色の文字でタイトルと思われる文字が刻まれていた。
ラヴィアリス「【Fairy CAROL フェアリーキャロル】? 名前からして小説のようね。どうしてこんな所に・・・」
ラヴィアリス「忘れ物とは思えないわ・・・此処は【死後の世界】、神様の忘れ物としか・・・それも無いわね・・・」
  なんか”気にしては”いけない気がする。
  
  ・・・.理由はどうあれ、これを私に読めと誰かが言ってるね
ラヴィアリス「とにかく読んでみよう」
  彼女は本を手にとり、ペラペラとページをめくった。
  中は文字ばかりで時々絵がはさまっている、本当に小説のようだ。
  貴族の女性『ラヴィアリス』は小説のタイトルを口にして小説を開いた。
  Fairy CAROL フェアリーキャロル

〇西洋の街並み
  『不思議な力を持つ少女『キャロル』はとても美しい少女でした。まるでこの世に降り立った天使のような少女です。
  光輝く金髪に愛らしい桃色の瞳、人形のような整った顔立ち・・・まさに生きる芸術品と言っても良いでしょう』
ラヴィアリス(プロローグからヒロインとなる『キャロル』のべた褒めの嵐、まるでポエムを読んでるようだわ。読んでるこっちが恥ずかしい・・・)
  『ある日キャロルは町で怪我をした老婆を見つけ、老婆に癒しの力を使いました。
  癒しの力を使えるキャロルを見た王家の使者はすぐさま彼女を王宮に連れていきました。
  どうやら大怪我をし意識を取り戻さない王妃がいるそうです。その力で彼女を救って欲しいとの事でした。

〇謁見の間
  急な事に困惑するキャロルでしたが目の前で消えそうな命を無視できず、彼女は眠る王妃に癒しの力を使い彼女を癒しました。
  直後、癒しの力を受けた王妃の至るところの怪我が綺麗に消え、王妃は意識を取り戻しました』
  『目を覚ました王妃、喜ぶ使者、キャロルの力で王妃が目を覚ましたという事はあっという間に国中に広がり
  なんと国王の耳にまで届きました。国王は妻を救った恩人であるキャロルに聖女の称号を与えました。
  しかしキャロルはいりませんと言いました。
  『私は聖女になりたくてこの力を使ってる訳ではないのです。私はこの力を上手く使ってもっと沢山の人を助けたいのです』
  そう答えたキャロルの意思に感動した国王夫妻はキャロルを【フェリスターナ学園】に特待生として入学させました。
  平民でありながも、国王夫妻と言う名の後ろ盾を持って──

〇ファンタジーの学園
  彼女は自身に宿る癒しの力について学び、多くの人を救えるような人間になりたいと胸に抱き学園生活を送ることになりました。
  しかしこの学園生活により・・・キャロルは力の真実を知るだけでなく
  国王と王妃の息子である王太子
  彼の従者である騎士の青年
  ちょっと口の悪いが優しい同級生
  年上の先輩
  そして
  謎多き青年・・・
  運命の相手とも出会うのでした・・・
  ・・・・・・
  プロローグを読み終えたラヴィアリスは次のページをめくった
  そのページには作品タイトルとサブタイトルが書かれていた。
  ラヴィアリスが読んでいるこの小説の名は・・・・・・
  【Fairy Carol フェアリーキャロル 鮮血の狂剣編】
  ・・・・・・そう書かれていた・・・・・・

〇綺麗な図書館
  ラヴィアリスは目次を確認し【本文】を読んだ。
  Fairy Carolフェアリー キャロルは全部で5冊あります。
  ヒロイン『キャロル』が誰と結ばれる、もしくは誰に告白するのかはキャロルが選んだルートによって変わります。
  こちらは謎多き青年とキャロルの物語です。
  学園に入学し、自身に宿る特別な力について調べていたキャロルはある日、学園の図書室の隅で立って本を読んでいる青年を見た。
  服装からこの学園の生徒ではない、軍服のような黒衣を身にまとい、右腰に長剣を装備していた。
  集中している彼の邪魔をしないようにそっと移動した時
  キャロルは本を落としてしまい音を立ててしまった。
  音に反応した青年は静かに視線を動かしてキャロルを見た。目の前に現れた天使のような少女を見て一瞬驚いた顔をした。
  しかしキャロルが生徒だと分かると、何事も無かったかのような素振りで目線を本に戻した。
  刺客だと思ったのだろう・・・邪魔はしないようにしよう。
  それから数日後
  この日もキャロルは調べモノをするため再び図書室を訪れていた。
  そこには白銀の髪と青い瞳をした女子生徒と親しげに話してるあの青年がいた。
  物静かなやり取りだがとても楽しそうだ
  時々、女子生徒を愛しく見ていたりしていた。女子生徒は顔を赤らめさせ、恥ずかしそうな反応をしていた。
  以前見た真剣な顔をしていた人物とはとても考えられない
  誰がどう見ても二人は恋人同士だ。既に結婚してても可笑しくないくらいラブラブだった。
  女子生徒の名は『ラヴィアリス・ローライト』
  ローライト伯爵家の令嬢、学園の生徒であり
  謎多き青年こと『ジェド=シュバルツ』の婚約者である
  彼女は女子生徒を優しく見つめる青年に目を奪われた
  いけないとわかっていてもキャロルは青年に恋をしたのだった
  《ラストまで省略》(この学園は三年制です)
  
  物語の終盤

〇ファンタジーの学園
  キャロルとラヴィアリスが卒業する日になった。
  卒業式のパーティーにはジェドも参加していた。
  王太子は婚約者の令嬢と共に食事をしていた。他の者達も大切な人や兄妹とパーティーを楽しんでいた。
  一方・・・
  キャロルは少し憂鬱な気分だった。
  彼女が思いを寄せていたのはジェド・・・
  ジェドはキャロルの誘惑に惑わされず最後までラヴィアリスを選んだ。
  勇気を出しての告白の結果は失恋に終わった。

〇大聖堂
  エピローグ
  その後 学園を卒業したキャロルは癒しの力を使って多くの人を助ける為、聖女の試練を受け無事に合格し王国の聖女となった
  失恋をした彼女だったが、後に素敵な男性と出会い、恋に落ち、彼と幸せに暮らしたのだった。
  そして
  ラヴィアリスが学園を卒業後、二人は結婚し晴れて夫婦となった。
  心から愛し合っている二人の仲を裂くのは誰にも出来ないだろう・・・
  最後までありがとうございました。
  全5冊のうちヒロインが失恋、フラれる話はこの『鮮血の狂剣編』ジェドとの話のみです。
  攻略対象キャラクターがヒロインではなく、婚約者を選ぶのもジェドルートのみです。
  以下略』
ラヴィアリス「・・・・・・」
  数時間かけてようやく読み終わった。

〇幻想空間
  小説を読み終えたラヴィアリスは目を閉じて色々考えた。
  この小説に登場した自分と同じ名前の少女『ラヴィアリス・ローライト』
  この名前は小説を読んでいた彼女の旧姓でもある。
  彼女が読んだのは小説、ただの【小説】なのだ。
  彼女は小説に登場したラヴィアリスの行動と小説を読んでいた自分の過去の行動が全く同じだと気付いた。
  いや・・・
  気付いてしまったのだ──
  これが偶然では無い・・・最初から決まっていた事だとしたら・・・
  小説を読んでいたラヴィアリスは・・・
  小説に登場したラヴィアリス本人なのだ・・・
ラヴィアリス「まさか私が・・・いいえ、私自身も・・・そして私がいたあの世界、存在していた全てが小説の中のモノ・・・」
  最初から何もかも決められていた・・・決まっていたのか・・・
  そして・・・この瞬間からラヴィアリスは自身が生きていた世界が【作り物の世界】であることを知った・・・
  同時に・・・
  世界が【作り物の世界】なのだと【彼女だけ】が知った・・・
  それを知ってるのは【私】だけ・・・・・・

〇黒背景
  己すらも作り物・・・ヒロインを引き立てる存在【悪役令嬢】として生み出されたキャラクター・・・
  小説の人物が【悪役令嬢】と言うワードを知ってる訳がない。
  それに小説の中で生きていたとはいえ、
  その世界の全てが命を宿して生きていた。動いていた、喋っていた、感情を持っていた、誰かを愛していた
  今を生きる存在だった
  しかし小説・・・いや、
  物語には【シナリオ】が存在する
  
  世界はあらゆるモノ達を無理やり動かして【シナリオ】の通りにする
  【シナリオの強制力】、異世界に転生、生前に好んで遊んでいた乙女ゲームと呼ばれるモノの世界に転生した人物・・・
  それらの物語に登場する人物に転生・憑依した者達が最も恐れている存在とも言える・・・
  いくら内容や結末を既に知っていて、その為に最悪の結末を避けようと奮闘しても・・・
  【シナリオの強制力】には抗えない・・・
  しかし、彼女ラヴィアリスは違う。
  確かに物語の登場人物だが、彼女は正真正銘の物語の登場人物そのもの・・・
  よく聞く【転生者】【転移者】とやらではない
  話を戻して、彼女ラヴィアリスは自身がいた世界が恋愛小説の世界こと【作り物の世界】であることを知った。

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コメント

  • ラヴィアリスの人生と物語は別物とのことですが、だとすればこれを書いたのは結局誰なのか、なんの目的で書いたのかが気になるところです。「シナリオの強制力」という言葉が特に印象的でした。

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