第12話 滅びゆく世界の果てで(脚本)
〇荒野
勇者マリー「ミシェル様・・・ なんで・・・」
第二王子クレール「マリー! ミシェル殿を追うぞ!」
勇者マリー「でも・・・」
第二王子クレール「ミシェル殿は死ぬつもりかもしれない!」
第二王子クレール「あれが最後の会話でいいのか!?」
勇者マリー「・・・ダメだよ! そんなのダメ!」
第二王子クレール「ならば行くぞ!」
宮廷魔導師リゼット「殿下! マリー様!」
勇者マリー「リゼットさん!」
宮廷魔導師リゼット「ご無事で戻られたのですね! よかった・・・」
勇者マリー「なんか、すごく久しぶりに 会った気がしますね」
宮廷魔導師リゼット「ええ、本当に」
第二王子クレール「リゼット、なぜここに?」
宮廷魔導師リゼット「ユーグ殿の行方を追っているのです」
宮廷魔導師リゼット「わたしの捜査では、ユーグ殿は お2人を異世界に送還したのではないかと」
第二王子クレール「ああ、そのとおりだ」
勇者マリー「ユーグさん、逃げちゃったの?」
宮廷魔導師リゼット「ええ・・・ 申し訳ありません」
第二王子クレール「ユーグのことはひとまず捨て置くぞ」
勇者マリー「うん」
勇者マリー「ミシェル様を追いかけなきゃ!」
宮廷魔導師リゼット「お待ちください!」
宮廷魔導師リゼット「ミシェル・・・殿下は いったいどうされたのですか!?」
第二王子クレール「説明している時間はない!」
第二王子クレール「ヴァレリー、後は頼んだぞ!」
騎士団長ヴァレリー「御意!」
〇谷
巫女マイカ(傷口からどんどん魔力が流れていく)
巫女マイカ(早く聖地に戻らねば)
巫女マイカ(聖地で眠るイーリャを消し 神力を奪えば・・・)
巫女マイカ(シュガールを消すことなど造作もない)
巫女マイカ(この娘の身体を完全に乗っ取るのは その後でもいいだろう)
巫女マイカ「ふふふ・・・」
〇荒地
皇帝トビアス「マイカ、いったいどこへ・・・」
皇帝トビアス「あれは・・・ミシェル王子か」
皇帝トビアス「まずいな・・・ オレたちを追ってきたのか?」
皇帝トビアス「マイカを狙われる前に こちらから打って出るか・・・」
皇帝トビアス「・・・ん?」
宮廷魔導師ユーグ「こ・・・皇帝トビアス・・・!」
皇帝トビアス「・・・リュテスの魔導師か」
皇帝トビアス「なぜここにいるのかはわからないが」
皇帝トビアス「使えるかもしれぬな」
宮廷魔導師ユーグ「風よ・・・!」
宮廷魔導師ユーグ「ぐあっ」
皇帝トビアス「・・・急がねば」
〇森の中
第一王子ミシェル「・・・いったいどこへ行ったんだ」
第一王子ミシェル(あの召喚士がマリー様の妹君・・・)
第一王子ミシェル(なぜガンディアにいるのかはわからないが)
第一王子ミシェル(彼女を止めなければ 取り返しのつかないことになる)
第一王子ミシェル(・・・マリー様は僕を恨むだろうか)
第一王子ミシェル(・・・それなら、なおさら・・・)
第一王子ミシェル(僕がやらなければ・・・)
勇者マリー「ミシェル様!」
第一王子ミシェル「あ・・・」
勇者マリー「待って!」
勇者マリー「ミシェル様・・・」
第一王子ミシェル「・・・・・・」
第一王子ミシェル「・・・あの召喚士は マリー様の妹君なのですね」
勇者マリー「・・・うん」
第一王子ミシェル「彼女は帝国に与し リュテスを滅ぼそうとしている」
第一王子ミシェル「ならば、わたしは彼女を倒します」
第一王子ミシェル「・・・クレール様 マリー様を連れてお戻りください」
第二王子クレール「死ぬのは自分だけで十分だと?」
第一王子ミシェル「・・・そんなつもりでは」
第一王子ミシェル「ただ・・・ 相打ちになる覚悟はしています」
勇者マリー「どうして・・・」
第一王子ミシェル「マリー様」
第一王子ミシェル「あなたに出会わなければ、僕は・・・ 臆病でなにもできないままだった」
第一王子ミシェル「クレール様やリゼットの影に隠れて 嵐が過ぎ去るのを待つしかなかった」
第一王子ミシェル「だけど、今は違います」
第一王子ミシェル「・・・急がなければ・・・」
勇者マリー「あっ、待って!」
第二王子クレール「速度を上げるぞ! 振り落とされるなよ!」
〇山中の滝
第一王子ミシェル「待ちなさい!」
巫女マイカ「おまえはリュテスの・・・」
第一王子ミシェル「帝国の蛮行の数々 許すわけにはいかない」
第一王子ミシェル「あなたを倒し、平和を取り戻します!」
巫女マイカ「・・・ほう?」
巫女マイカ「おまえが戦うのは 本当に祖国のためか?」
第一王子ミシェル「なにを・・・」
巫女マイカ「あの女が好きなのだろう?」
巫女マイカ「わたしはこの世界を滅ぼし 新たな世界を創る」
巫女マイカ「そこには恋を許さぬ者もいない 神を縛る忌まわしき制約もない」
巫女マイカ「わたしだけの世界・・・」
第一王子ミシェル「なにを・・・ 言っている・・・?」
巫女マイカ「おまえはこの世界が嫌いなのだろう?」
巫女マイカ「母を虐げ、自分を冷遇した 祖国の者たちに復讐したくはないか?」
第一王子ミシェル「それは・・・」
巫女マイカ「おまえが望むのならば 新たな世界に招いてやってもいいぞ?」
巫女マイカ「あの女が元の世界に戻らず おまえのもとに留まる」
巫女マイカ「そんな世界を望んでいるのではないか?」
第一王子ミシェル「・・・わたしは・・・」
第一王子ミシェル「そんな世界は望んでいない!」
巫女マイカ「なっ・・・」
第一王子ミシェル「みんなを恨まなかったとは言わない」
第一王子ミシェル「・・・マリー様に残ってほしいと 思わないと言えば嘘になる」
第一王子ミシェル「だけど・・・」
第一王子ミシェル「妹が自分を殺そうとしていると知ったら きっとマリー様は傷つく」
第一王子ミシェル「だから、僕がおまえを倒す!」
巫女マイカ「・・・妹を斬ったと知ったら あの女はおまえをどう思うだろうな?」
第一王子ミシェル「・・・・・・ そんなこと、関係ない」
第一王子ミシェル「マリー様にどう思われようが 彼女が傷つかないのなら・・・」
第一王子ミシェル「だから、覚悟しろ!」
巫女マイカ「くっ・・・」
「待て!」
皇帝トビアス「ミシェル王子、これを見るがいい!」
第一王子ミシェル「ユーグ・・・!?」
宮廷魔導師ユーグ「ミシェル様、お助けください!」
巫女マイカ「リュテスの魔導師か よくやった、トビアス」
巫女マイカ「わたしは聖地で神力を癒やす」
巫女マイカ「それまでその男を足止めしていろ」
第一王子ミシェル「ま、待て・・・!」
〇荒野
リュテス兵「ありがとうございます、リゼット様!」
騎士団長ヴァレリー「リゼット殿の治癒魔法のおかげで 死人は出ませんでした」
騎士団長ヴァレリー「騎士団長として、お礼を申し上げます」
宮廷魔導師リゼット「いえ、わたしは・・・」
騎士団長ヴァレリー「お疲れでしょう 少し休まれてはいかがです」
騎士団長ヴァレリー「たいしたものはありませんが 飲み物を用意させますよ」
宮廷魔導師リゼット「しかし・・・殿下がたが戦っているのに」
騎士団長ヴァレリー「殿下と勇者殿が戻られたら リゼット殿の魔法が必要になるでしょう」
騎士団長ヴァレリー「そのときのために 少しでも英気を養うべきかと」
宮廷魔導師リゼット「では・・・お言葉に甘えて」
宮廷魔導師リゼット(ミシェル、マリー様、クレール殿下・・・)
宮廷魔導師リゼット(どうかご無事で・・・)
〇山中の滝
第一王子ミシェル「人質を取るとは卑怯な・・・」
皇帝トビアス「なんとでも言うがいい」
皇帝トビアス「さて、武器を捨ててもらおうか」
第一王子ミシェル「くっ・・・」
宮廷魔導師ユーグ「ミシェル様・・・ 申し訳ありません・・・」
皇帝トビアス「それでいい」
皇帝トビアス「では、死んでいただこう」
宮廷魔導師ユーグ「ま、待て! 武器を捨てたのに、なぜ!」
皇帝トビアス「リュテス王家に連なる者を 生かしておくはずがなかろう」
宮廷魔導師ユーグ「よ、よせ!」
第一王子ミシェル「・・・ッ!」
「燃えろーッ!」
皇帝トビアス「・・・っ!?」
勇者マリー「ミシェル様、だいじょうぶ!?」
第一王子ミシェル「マリー様、なぜ・・・」
第二王子クレール「ミシェル殿がこんな無茶をなさるとは 以前では到底考えられなかった」
第一王子ミシェル「クレール様・・・」
第二王子クレール「蛮勇までマリーに影響されなくても いいのではないか?」
勇者マリー「ちょっと! それってどういう意味・・・」
勇者マリー「あっ」
勇者マリー「それより、舞花を探さなきゃ!」
第一王子ミシェル「しかし彼女は・・・」
皇帝トビアス「そうはさせぬぞ!」
皇帝トビアス「この者の命が惜しければ武器を捨てろ!」
「・・・・・・」
第二王子クレール「その男はわたしたちを害し リュテスに不利益をもたらした」
第二王子クレール「煮るなり焼くなり、好きにするがいい」
皇帝トビアス「なんだと?」
宮廷魔導師ユーグ「ゆ、勇者殿・・・!」
勇者マリー「あたしを消そうとしたくせに・・・」
勇者マリー「ちょっと虫がよすぎるんじゃないの?」
第二王子クレール「・・・だそうだ」
第二王子クレール「その男に人質の価値はない」
第二王子クレール「残念だったな、皇帝トビアス」
勇者マリー「じゃ、舞花を追いかけよう!」
皇帝トビアス「お、おい・・・」
宮廷魔導師ユーグ「ミシェル様! お助けください!」
第一王子ミシェル「・・・・・・」
第二王子クレール「ミシェル殿 マリーを追いかけてくれ」
第二王子クレール「わたしは皇帝に話がある」
第一王子ミシェル「・・・わかりました お気をつけて」
第二王子クレール「皇帝 あの娘の正体を知っているのか?」
皇帝トビアス「・・・マイカは異世界からやって来た」
皇帝トビアス「太陽神の声を聞き、恩恵を賜り 強大な力を得た」
皇帝トビアス「あの力があれば、帝国も救われ・・・」
第二王子クレール「やはりわかっていなかったのか」
皇帝トビアス「・・・なんだと?」
第二王子クレール「わたしと勇者は異世界に飛ばされ 月󠄃神イーリャとお会いした」
第二王子クレール「教えてやろう 月󠄃神が語ったことを──」
〇湖畔
第一王子ミシェル「マリー様!」
勇者マリー「ミシェル様・・・」
第一王子ミシェル「その・・・ だいじょうぶですか?」
勇者マリー「・・・なにが?」
第一王子ミシェル「皇帝に向かって魔法を放ったでしょう」
第一王子ミシェル「人を傷つけるのも、傷つけられるのも ・・・恐ろしいですよね」
第一王子ミシェル「わたしも、そうでしたから」
勇者マリー「・・・・・・」
第一王子ミシェル「わたしに任せて マリー様はここで待っ・・・」
勇者マリー「・・・だから舞花を倒そうとしてるの?」
勇者マリー「あたしが・・・傷つかないように」
第一王子ミシェル「それは・・・」
勇者マリー「ありがと、ミシェル様」
勇者マリー「でもあたし、行かなきゃ」
勇者マリー「・・・舞花の中には 邪神になったエグスキがいる」
勇者マリー「エグスキはこの世界を滅ぼそうとしてる」
勇者マリー「舞花の身体で悪いことなんかさせない」
勇者マリー「エグスキを追い出して舞花を元に戻す!」
勇者マリー「・・・それに」
勇者マリー「誰かに傷つけられたり 誰かを傷つけたり・・・」
勇者マリー「そんな当たり前のことから逃げてたら なにもできなくなっちゃう」
第一王子ミシェル「・・・・・・」
勇者マリー「でしょ?」
第一王子ミシェル「・・・そう、ですね」
第一王子ミシェル「では、わたしも参ります」
勇者マリー「え、けど・・・」
第一王子ミシェル「さあ、行きましょう」
勇者マリー「あ・・・ ちょっと待って!」
〇水たまり
巫女マイカ「・・・これですべてが終わる」
巫女マイカ「わたしを縛るすべてが・・・」
ミシェルさま、カッコ良すぎ、、、!
緊迫感あるシーンが続く中、心の片隅で人質ユーグさんについてモヤっていたのですが、クレール王子に気持ちよく代弁してもらえましたww デスヨネー!
クライマックス感が漂う中、次回、勇敢なミシェルさまと蛮勇(!?)の真理さんの活躍が楽しみです