見える女

Akiyu

見える女(脚本)

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「お姉さん。もしかして俺の事見えてるの?」

〇線路沿いの道

〇線路沿いの道
鮎川月奈(あー、見えてない。見えてない。何も見えてない。私は何も見えてない)
鮎川月奈(自然に。冷静に。 静かに歩いていけばいいの)
鮎川月奈(足ないし!!幽霊だし!!嘘でしょ!! なんで見えるのよ、私!!)
鮎川月奈(めっちゃ怖いんですけど!! しかも話しかけてきてるし!!)
新崎七生「あっ、大変だ。 スカートがめくれてパンツが見えてますよ」
鮎川月奈「えっ!?嘘!?」
新崎七生「ほら、やっぱり俺の声聞こえてるじゃん」
鮎川月奈(しまったぁ・・・。やらかしたあ・・・)
鮎川月奈「わ、私に何か用?」
新崎七生「うん。ちょっとお願いがあってさ。 俺この通り、死んでるんだ」
鮎川月奈「見ればわかるわ。足がないもの」
新崎七生「実はさ、死ぬまでにどうしてもやりたかったことがあるんだ」
鮎川月奈「やりたかったこと?」
新崎七生「うん。女の子とデートした事ないんだ。 今から俺とデートしてくれない?」
鮎川月奈(うわー、幽霊にナンパされちゃった。 どうするのよ、これ)
鮎川月奈「デートしてあげたら大人しく成仏してくれる? 後、私を襲ったりしない?」
新崎七生「約束する。襲ったりしない。 俺はあの世に持っていく素敵な思い出が欲しいだけなんだ。頼むよ」

〇海水浴場
鮎川月奈「それで?どうして夜中の海なの?」
新崎七生「俺さ、夜中の海ってみた事なかったから見てみたかったんだよね。昼間とは違う魅力がある」
鮎川月奈「そっか」
新崎七生「俺、新崎七生っていうんだ。 七回生きるって書いて七生」
新崎七生「名前負けだろ?」
鮎川月奈「ふふっ、ほんとね。 私は鮎川月奈」
新崎七生「月奈さんか。良い名前だ」
鮎川月奈「七生君はさ。 ・・・その、最期はどんな感じだったの?」
新崎七生「交通事故で意識不明でさ。ついに力尽きてそのままって感じ」
鮎川月奈「そっか」
新崎七生「月奈さんみたいな美人の女の子とデートできてよかった」
鮎川月奈「ありがとう。お世辞でもそんな事言ってくれると嬉しいよ」
新崎七生「・・・ほんと。あの時の女の子がこんなに綺麗になってるのを見て、俺は嬉しいよ」
鮎川月奈「どういうこと?」
新崎七生「君が子供の頃の事だ」

〇大きい交差点
新崎七生「危ない!!」

〇海水浴場
鮎川月奈「・・・嘘? まさかあの時、私を助けてくれた・・・おにい・・・さん?」
新崎七生「ああ、そうだよ。やっと会えたね」
新崎七生「本当に大きくなった」
鮎川月奈「どうして・・・」
新崎七生「君みたいな道路に飛び出すようなお転婆な女の子の行く末が心配だった」
新崎七生「だからずっと見守っていた」
新崎七生「生きられなかった俺の分の人生を、君が泣いたり笑ったりして一生懸命生きてくれた」
新崎七生「俺はこの子の人生を守ったんだ。そう思うと誇らしいよ」
新崎七生「ありがとう」
鮎川月奈「そんな・・・。感謝するのは私の方だよ」
鮎川月奈「だから今、言わせて」
鮎川月奈「助けて頂いて、本当にありがとうございました」
  そう言うと、彼は、にっこりと優しく微笑んだ後、私の頭をポンポンと撫でた
新崎七生「車には気を付けるんだぞ」
  ――そして。
  すっと消えていった。

コメント

  • 序盤の2人の温度差(…当然ですが)から、ラストの真相までの移ろいがとても自然で引き込まれるようでした。心地いいラストシーンでスッとした気分になりました!

  • ワケアリのナンパな幽霊と思っていたら、とんでもなく優しいスピリトの存在でした。彼女に彼の存在が見えるように操作したのは、彼なんでしょうか? 成仏、彼はすでにその域ですね。

  • 自分が命を落とすきっかけとなった女の子を恨むどころか成長を見守るだなんて、七生は心底いい人ですね。名前の通りあと6回は転生して幸せな人生を送ってほしいです。

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