読切(脚本)
〇見晴らしのいい公園
彼は思い出の場所を目指していた
彼の初恋だった彼女に、今なら会える気がしたからだ
坂を登ると、そこには変わらぬ彼女の後ろ姿があった。彼はたまらず駆け寄る。たくさんの言葉が胸に詰まる
司「お待たせ」
彼が必死に絞り出した一言に、彼女は振り返り、悪戯な微笑みをみせ
青葉「来るのが早い!」
一喝した
司「へ? あれ? なんで怒られるの? 普通、逆じゃない?」
青葉「やれやれ、女心が分からないのは相変わらずだね」
そう言って彼女は無邪気に笑う。とてもストレートに感情を表に出すその姿に、彼もまた安堵の笑みをこぼす
司「あなたも変わらないですね。ここも、あなたに連れまわされた日の最後に連れてこられる場所だし」
青葉「君と見るこの景色が好きだったからね」
屈託のない彼女の姿を見て、彼は過去の思い出と現在の幸福な瞬間が重なり合うような感覚を抱いた
青葉「だから、君を待つなら、ここしかないよ。もう一度だけ、二人で街を眺めたかったから」
それから二人の思い出話に花を咲かせた。思い出すたび、彼は彼女のことが好きなのだと、改めて思い知る
司「また連れまわしてくれますよね?」
その言葉を彼女は受け止めながらも、首を振る
司「どうして?」
青葉「私が病気で死んだとき、君はたくさん泣いてくれたよね。なら、分かるはずだよ。君はまだこっちに来るには早いよ」
諭すような彼女の言葉に、彼は驚きと悲しみに頭を振る
司「あなたがいなくなってから、ずっと頑張ってきたんだ。でも、もう疲れたよ。また一緒にいさせてよ。帰れなんていわないでよ」
青葉「私は君よりお姉さんだからね。責任なく我儘は言えないんだよ」
司「本心は?」
青葉「私だって一緒がいいもん! 君を思い切り抱き締めて赤面する姿とか見たいし、思わせぶりな態度でからかったり、あとあと!」
司「ろくでもないな」
青葉「うん、ろくでもない大人だよ。本当はこのまま、君を引き留めたくて仕方ないもの」
彼女の精一杯の微笑み。瞳は涙で光って見えた
司「なら!」
彼は拳を強く握り、必死の思いで手を差し出す
青葉「それは出来ないよ。だって、そんなの君が恋したお姉さんじゃない。大好きな君に胸を張れる私じゃないもの」
司「次、いつ会えるのかも分からないのに?」
青葉「決心を鈍らせないでよ」
彼は差し出した手をおろし、彼女に背を向ける
司「・・・分かったよ」
司「今度、来たときは、もう子供扱いさせないから。我儘言わせるから!」
青葉「うん。今度は、私を待たせて拗ねさせてよね」
彼は振り返ることなく、彼女の言葉に頷いて帰ってゆく
また出会う日を、信じて──
「来るのが早すぎる」と怒られてるうちが華で、いつか司が青葉の年齢を遥かに追い越したら「まだ来てんじゃねえよ」って怒られそうで怖い。年齢差のある恋愛ってあの世でもこの世でも難しいなあ。
ひょっとしたら、、いや……、とタイトルで感じ、途中で確信に変わるも、キレイなストーリーにすぐ関心を奪われてしまいました。セリフからも伝わる2人の関係性、イイですね!
何で早く来たのに怒られるのだろうと最初は疑問でいっぱいでしたが、読んでいるうちに、そういう事だったのかと思い悲しくなりました。会いたい人に会いたいときに会えるのは当たり前じゃないのだと再認識しました。