第五話「思いがけない再会」(脚本)
〇広い和室
大見百合「申し訳ありません・・・ まさか偽物を掴まされるとは」
大見敏明「構わん。あの男・・・コソ泥みたいなことをやっているようだしな。勘がいいんだろ」
大見百合「次は必ず奪ってみせます」
大見敏明「いらん。別の者を立てている」
大見百合「しかし!」
大見が手を叩くと、
護衛が来て百合を捕らえる。
大見百合「お、大見会長! これは・・・!」
大見敏明「お前は姪っ子だから優遇していたが・・・ あまり使えなそうだな」
大見百合「! 叔父様! 助けて。次は必ず──」
大見敏明「連れていけ」
大見百合「お願い! 殺さないで!」
大見百合「いやぁぁぁぁぁぁ!!!」
〇インターネットカフェ
向井俊介(はぁ・・・またネカフェに逆戻りか。 とはいえ、家には帰れそうにないしな)
メモリースティックをPCに差し込むと、
管理者の認証が出て来る。
向井俊介(おそらく・・・本物の小湊なら この認証が可能なはず)
向井俊介(それが本物かどうかを見分ける 唯一の方法かもな)
向井俊介(それにあと一週間で俺は誕生日だ・・・)
向井俊介(4年ぶりにサイコロを 振らなくちゃならない)
向井俊介(だがサイコロセンターには 大見の部下がたくさんいる)
向井俊介(仮に行かなくても、体内のICチップが 作動して死ぬだけだ)
向井俊介(それまでに、なんとしても本物の小湊に メモリースティックを渡さないと)
向井俊介「もしもし・・・え、響子?」
〇明るいリビング
向井俊介「良かったのか? 俺を部屋になんて連れ込んで」
響子「今さら私を襲ったりしないでしょ?」
向井俊介(元妻である響子と別れたのは三年前だ)
向井俊介(由奈のことがあって気まずくなり、 ずっと連絡取ってなかったのに。 どうして急に──)
響子「あなたがそろそろサイコロを振る 時期かと思ってね。元気だった?」
向井俊介「まあ・・・それなりにな」
響子「ねえちゃんと食べてるの? あんまり 寝てない? 目の下にクマできてるけど」
向井俊介「事情があって・・・ ちょっと家に帰れないんだよ」
響子「新しい奥さんと喧嘩でもした?」
向井俊介「バカ。再婚なんかするか」
響子「ふーん。なら慰めてあげようか?」
向井俊介「は?」
響子「次のサイコロでアタリを引いて 後悔しないように」
向井俊介「ぶ、物騒なこと言うな!」
響子「冗談よ。ご飯用意するから先に飲んで」
部屋の隅に由奈の遺影がある。
〇散らばる写真
〇明るいリビング
向井俊介(由奈が死んだとき・・・ 響子は別室で一部始終を見ていた)
〇施設の廊下
向井俊介「響子・・・すまん」
響子「何も言わないで」
向井俊介「俺が──」
響子「由奈はもう帰ってこないのよっ!」
向井俊介「・・・・・・」
響子「あなたが無理やりやらせなければ、 由奈は死んだりしなかった・・・!」
向井俊介「じゃあどうすりゃ良かったんだ! サイコロを振らなくても殺されていた!」
響子「うるさい! もうあなたとはいられない・・・!」
向井俊介「お、おい! 落ち着けって!」
響子から一方的に離婚届が送られて
きたのは、それから二か月後だった
〇明るいリビング
向井俊介(怒りと哀しみの矛先を 俺に向けるしかなかったのはわかる)
向井俊介(でもあまりに理不尽で一方的だった)
向井俊介(なのに今・・・ 響子のほうから連絡をしてくるなんて)
響子「あれ? まだ飲んでなかったの?」
向井俊介「あ、ああ・・・」
響子「なら一緒に乾杯する?」
向井俊介「乾杯って・・・何に?」
響子「理由がないとダメ? 久しぶりに再会した 記念とかでいいんじゃない?」
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