8月3××1日から出られない女(脚本)
〇教室の教壇
もうすぐ、8月3871日が終わる。
私は今日も、夏休みの宿題をやっていない。
葉月「春、かぁ・・・」
葉月「新1年生、かわいかったな」
葉月「・・・私はいつまでここにいるの?」
弥生「葉月(はづき)ちゃん、やっぱりここにいたんだ!」
葉月「弥生(やよい)ちゃん・・・!」
葉月「どうして!?」
弥生「ふふ」
弥生「私、この小学校の先生になったの」
葉月「・・・じゃあ、夢が叶ったんだね」
葉月「おめでとう!」
弥生「ありがとう──」
「・・・・・・」
葉月(弥生ちゃんはすごいなぁ)
葉月(それに比べて、私は・・・)
弥生「ずっと8月31日にいるの?」
葉月「うん。夏休みの宿題が終わらなくて」
葉月「9月に進むのが怖くなっちゃった」
弥生「・・・でも、そのままじゃいけないでしょ?」
弥生「勇気を出して、前に進まなきゃ」
葉月「ッ──」
葉月「簡単そうに言わないで!」
葉月「私が立ち止まってた10年で、みんなはずっと先まで行ってる」
葉月「今さらどうやって追いつけばいいの?」
葉月「取り残された私の気持ちなんて、弥生ちゃんにはわからないよ・・・」
弥生「わかるよ。だって──」
葉月「忘れ物かな」
葉月「あいさつしなくていいの、『先生』?」
弥生「・・・」
弥生「見えてないよ」
葉月「えっ」
弥生「だって私も、3月31日から出られないんだもん」
葉月「宿題かな」
弥生「私たちにできなかったものだね」
「作文、なんて書く? 将来の夢のやつ」
「げー。そんな宿題あったっけ?」
「明日までだってさ」
「マジか。オレ、何もねぇ」
「オレも」
「ま、いっか」
「じゃあな」
「おう、またな」
葉月「将来の夢、か」
葉月「6年生の頃、書いたなぁ」
弥生「なんて書いたの?」
葉月「──忘れちゃった」
弥生「そっか」
葉月「・・・私たちも、帰らないとね」
弥生「そう?」
弥生「葉月ちゃんと一緒なら、ずっとここにいてもいいよ」
葉月「もう」
葉月「さっきと言ってること違うじゃん」
弥生「だってぇ」
「・・・・・・」
葉月「帰ろっか」
弥生「うん」
「また、明日」
坂井さんこんにちは!
先生になった女の子にも違和感があるなあと思っていたらこの子は3月31日から出られないなんて...!
夏休みの宿題は今日も終わっていないというワードがとても頭に残りました👍切なさと怖さとでも二人の友情も感じられて、とても素敵な作品でした!
舞台や話の内容からは、ノスタルジーに溢れた切ない物語に感じられました。ただ、設定を細かく考えたときにはじわじわホラー感も。ホラーやファンタジー、ヒューマンなどのいいとこどりした、充実感のある短編ですね!
成程ホラーでしたか。
私には童心を忘れずにふり返るような、切なくて温かい物語に思えました。
結構大勢の人が一度は考えるであろう願望では? 色々と考察出来そうなところも良いです❤