孤独を愛する神様 過ちの記憶

スカーレット

エピソード1(脚本)

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〇一人部屋
神森優華「なんで、人間はすべてを壊そうとするのか。理解できない。いやもしかしたら、私がおかしいのかもしれない」
神森優華「普通なら、人間がこの世界に不必要なんて、考えないだろうな」
  彼女の名前は神森優華。普通の高校生だ。
  ただ一つ悩んでいた。それは、人間が本当にこの世界に必要なのかについてだ。
  環境を壊し続ける人間が、家族を苦しめ続ける人間がこの世界に必要なんて、優華には思えなかった。
  今日もいつもと変わり映えのしない夜。だが、少し違った。
  優華に語り掛けてくる声が一つあった。優華はその声に耳を傾けた。
  『我は地球。今そなたの頭に直接語り掛けている者だ』
  
  聞いていて、とても安心する声だ。
  『我は人間が許せない。奴らは生態系を破壊し尽くし、多くの命を無駄にしている。私はどうしても人間を滅ぼしたい』
  『そこで、そなたの力を貸してもらえないだろうか』
  
  優華は不思議に思った。滅ぼすのなら地球自身の力で足りるだろうからだ。
神森優華「なんで、私に頼むんだ? 君自身の力でどうにかならないのか?」
  『それは我が力を行使すると、他の生物にも影響が及ぶからだ。故に、誰かを神にせねばならん』
  『そこで知能が高く、人間のことを我と同じように思っているそなたが適任だと考えた』
  『どうか神になり、人間を滅ぼしてくれないだろうか』
  
  優華はその提案に少し悩み、結論を出した。
神森優華「わかった。協力しよう」
  『ありがとう』
  
  そう聞こえた瞬間、強烈な眠気に襲われた。優華はその眠気に身を委ね、静かに目を瞑った。

〇一人部屋
  翌朝起きると、そこには別人がいた。絹のように白い髪に、白磁の肌、ルビーのような紅い瞳を持つ、美しい少女だ。
  どうやら神になったことで、姿が変わったらしい。
  そして、神になる前とは明らかに違う感覚がある。それは、体の中を流れる血とはまた違う別の力を感じることだ。
神森優華「もしかして、魔力か?」
  ラノベなどでよく見た、魔術などを使うのに大切な力のことだ。優華は試しに魔力を意識して、水をイメージしてみる。
  すると、手元に水の玉ができた。それはとてもきれいだった。
神森優華「これが私の力、か・・・・・・」
  優華は決意した。この力をもっと研究して、必ず人間を滅ぼそうと。

〇通学路
  それから優華は夢中で魔術の研究をした。何度も何度も休みは一切なしで。
  優華を心配する両親や兄妹、祖父母の声を無視して、ただひたすら研究した。
  優華が神になってから一ヶ月がたった。そして、時は満ちた。
  優華は自分の部屋から出て、そのまま家を出た。夜なので外は真っ暗だった。
神森優華「時は満ちた。今から、断罪を行う」
  その言葉とともに、優華はゆっくりと浮上した。大気圏くらいまで上がったところで制止する。
  そして、一ヶ月の間で出来上がった無慈悲な魔術を発動させた。

〇宇宙空間
  優華の発動させた魔術はゆっくりと姿を現していく。その姿はただの槍。細いだけのただの槍。だが、数は桁違いのだ。
  何百何千何万何億本の槍が出来上がっていく。やがて、その数が人間の数と同じになったとき、一斉に地上へ矛先を向けた。
神森優華「己が罪を贖え 神技『裁きの槍』」
  槍は人間に向かって一直線に飛来した。一つ一つの命を丁寧に刈り取り、苦しみすら与えず塵に変える。
  この日人類は、滅亡した。

〇一戸建て
  優華は地上に降り、ある家を見つめる。そこにはまだ人間が寝ていて、今なら確実に殺すことができる。だが・・・
  ポタポタと涙が落ちる。
神森優華「ごめんね、父さん、母さん。不出来な娘で。ごめんね、お兄ちゃん。不出来な妹で。ごめんね、たくと。不出来な姉で」
  あの家は、優華の家族の家だ。優華は最後の最後まで、家族だけは殺すことができなかった。
  どうやら優華は、神に向かないのかもしれない。
神森優華「でも、泣くのはここまでだ」
  優華は涙を拭い、現実と向き合う。
神森優華「もう戻れない。帰れない。立ち止まることは許されない。だから、お別れだ。・・・さよなら」
  家族との別れを告げ、優華は背を向け血塗れの夜道を歩くのだった。

次のエピソード:エピソード2

コメント

  • 全知全能の神様になるということは、分かり合える存在がいなくなるということだから、常に絶対的な孤独とセットなんでしょうね。人間の心の名残があって家族を最後まで殺せなかったシーンは切ない。神様になって人類を滅ぼした優華がこれから何をするのか興味があります。

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