Blue Blossom

管理人。

BlueBlossom side.非日常(脚本)

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〇公園通り
ーーー「・・・は?」
  突然都会に現れた武装人間たち。
  コンクリートに広がる植物。
  そして、紋章を片手に戦う人々。
  ──これから話すのは、僕が経験した非日常の話である。

〇テラス席
  久しぶりに都会へ出てきたゴールデンウィーク某日。
  観光の休憩がてらにカフェチェーン店へ立ち寄った僕は、
  テラス席に腰を下ろし、作りたてのホカホカのパンケーキにナイフを刺そうとしていた。
  ──突然、大きな爆発音のようなものが耳に入る。
ーーー(・・・ん?今凄い音しなかった?)
  顔を上げれば──

〇大樹の下
  カフェの向かいにある公園のど真ん中に、巨大な水柱が立っていたのだ。

〇テラス席
ーーー「・・・え、」
  歩道を行き交う人々は大慌てでその場から駆け出していく。
  ・・・その様子を、僕は椅子に座りカトラリーを両手で構えたまま見つめる。
  不思議と、恐怖なんて微塵も感じない。
  今、僕の中に浮かぶのは憧れの“非日常”の三文字。
  つまりは、今目の前で起きていることは現実なんかじゃなく、
  今の僕はテレビ画面の前でアニメを見ているんじゃないのか。
  そんなおかしな感覚だった。

〇テラス席
  どこからか悲鳴が聞こえてきて、ようやく我に返った僕は、カトラリーをトレーに置き立ち上がる。
  ・・・パンケーキが惜しいが、今はそれどころじゃない。
  テラス席から出て、悲鳴の聞こえた方へ近づく。そこには
  大勢の武装をした人間が集まってきていた。
  人々へ危害を与えてはいないものの、彼らは全員手に武器のようなものを持っている。
  武装服の一人が、水柱へ向けて何かを投げる。
  それは見事水柱へ命中すると、
  空中で大きな爆発音を鳴らした。
  水飛沫は水柱を中心に散らばり、雨のように地上へ落ちていく。
ーーー(これ、やってる事意味わかんないけど・・・本当にやばそう)
ーーー(でも人の集まってる方行ったら・・・?あれ?)
  どこへ逃げようか辺りを見渡していた時、

〇公園通り
  大通りとは反対側に、女性が一人立っているのを見つけた。
ーーー「────」
  彼女は携帯電話を耳に当て、水柱をちらちらと見遣りながら何かを話している。
  戸惑っている様子はあるものの、恐怖で動けなくなっている訳では無さそうである。

〇テラス席
ーーー(あの人何してるんだ!危ないって!)
  僕は人々が逃げていく大通りの方とは別方向──女性がいる方へと掛けて行った。

〇公園通り
ーーー「あの、ここ危ないですよ・・・!早く逃げないと、!」
  女性の前で息を整えながら、そう叫ぶ。
  女性は僕を視界に入れると、驚いたようにそのまま僕を見つめた。
???「・・・いり・・・・ぶ・・か・・・」
  彼女が片手に持つ携帯電話からは、薄らと誰かの声が聞こえてくる。
  その声を気にする様子を見せながら、彼女は僕へ
ーーー「ごめんなさい、私は逃げられません」
  と淡々とした調子で告げた。
ーーー「・・・え?」
ーーー「私は大丈夫です」
ーーー「は?そんな事言ってる場合じゃ──」
???「何をこそこそとしているんだ」
  一つの銃声と第三者の声が、僕たちのやり取りを遮った。
  声の方を振り向くと、そこにはさっき遠目に見ていた武装した人間の一人が居た。
「!?」
武装した人間「何かを企んでいるんじゃないだろうな?」
ーーー「それはこっちのセリフだ! お前らは何なんだ!何のつもりだ!」
  女性を庇うように一歩前へ出て、相手へ質問を返す。
武装した人間「・・・お前、もしや反逆者か」
ーーー「・・・は、反逆者?」
武装した人間「やっぱりな。隠しても無駄だ」
武装した人間「我々は自生植物から人間を守る組織」
武装した人間「我々の活動の邪魔をする者は反逆者以外何者でも無いだろう!」
ーーー「・・・な、何の話だよ!自生植物から人を守る?どういうことだ?」
武装した人間「うるさい!」
武装した人間「反逆者は生け捕りする規則になっている。無理矢理にでも着いてきてもらうぞ」
ーーー「は、はぁ・・・?」
  武装服の言う内容を理解しようと頭を働かせていると、銃声が別の箇所から聞こえてきた。
武装した人間「あっちにも反逆者がいんのか・・・」
  ・・・僕は、武装服がよそ見をしたのを見逃さなかった。
ーーー「おらっ・・・!!」
  不意を打つように、武装服の腹を目掛けて殴りかかる。
武装した人間「うッ・・・!?」
  よろめいたのを見ると、背後にいる女性へ向けて叫んだ。
ーーー「逃げて!! 早く!!」
  彼女は一瞬戸惑う様子を見せたが、僕へ頷いてその場から掛けていく。
武装した人間「・・・ッおい女!! 逃げるな!!」
  武装服は、手に持つ銃器を女性へ向けようとした。
ーーー「・・・!させるかッ!!」
  僕は反射的に、再び殴りかかる。
武装した人間「・・・ッ、邪魔をするな!!」
  しかし二度上手くはいかないわけで。
  力強く蹴りを入れられ、僕は仰向きに倒れた。
ーーー「うぐッ・・・!!」
武装した人間「まあいい・・・まずはお前だ」
  武装服が、痛みで呻く僕へ何かを向ける。
  黒いL字の物体は,何となく拳銃に見えなくもない。
  僕はここの・・・都会の事情を知らない。
  なのに巻き込まれるとか、運が悪すぎる。
  今すぐ逃げないと。
  しかし、身体が・・・重い。
  でも、さっきの女性が逃げられてよかった。
  武装服が、拳銃を構える。
ーーー(────ッ)
  反射的に、双眸を強く閉じた。

〇公園通り
  ──その時。
  乾いた銃声・・・では無く,何かが落ちる鈍い音だった。
  なぜか、身体に痛みは感じない。
武装した人間「・・・ッ!?」
  何が起きているのだろうか。
  身体は動かさないまま、瞼を薄らと開く。
  不思議なことに、武装服は視界から消えていた。
  ・・・いや、目の前に倒れていた。
  その代わり、
  ──視界の中に青髪の男性が一人。
  僕へ背を向けるように立っていた。
ーーー「・・・え、」
  立て続けに起こる不可解な出来事に,驚きのあまり口から声が漏れる。
  声が聞こえていたのだろうか。僕の存在に気づいた青年が振り返る。
  彼は、
ーーー「うわ・・・面倒だな」
  そう一言吐き捨てると,不機嫌そうな表情を浮かべては舌打ちを一つ落とした。
  ・・・え?なんで?
ーーー「ハイド!被害者は?」
  ・・・と思ったが、どうやら違うようで。
ーーー「・・・セーフ。気失ってる」
ーーー「そうか、間に合ったんだね」
ーーー「ここは僕に任せて。彼を頼んだ」
ーーー「は、俺?」
ーーー「早く!」
ーーー「・・・はいはい」
  そのようなやり取りが聞こえる。
  この人たちは何者なんだ?そんなことを考えていると、
  地面に固定されていると錯覚するほどに重かった身体が浮いた。
  青髪の人に担がれたんだろう。
  それにしては雑じゃないか・・・?
  バレないように、顔を上げて目を開く。
  気絶のフリをさせてもらおう・・とは思ったが、非日常への興味は抑えられなかった。
  ちら、と辺りを見渡してみる。
  ・・・彼の肩越しに見えた景色に釘付けになった。
  コンクリートに覆われているはずの地面が
  緑色に染まっていたのだ。
  草原の上に立つ緑髪の男性と、
  彼を警戒する武装服たち。
ーーー「────」
  緑髪の人が、何かを叫ぶ。
  その途端、
  防護服たちの手にあった銃器が、全て地面に落ちた。
ーーー「──!?」
  今、何が起きた?
  男性は何も手を出してはいないし、他に仲間がいる様子もない。
  武装服たちは突然の出来事に動揺している。
  彼の片方の手の甲で、何かが光ったように見えた。
  よく目を凝らしてみる。確かに、緑色に光っている。
  あれはいったい──
  ──男性と目が合ってしまった。
ーーー(あっ、やば)
  慌てて伏せようとしたが、明らかに僕へ目を合わせている。
  ・・・バレた。
  しかし彼はただ口角を上げるだけである。
  黙っていてくれるのか。
  内心で安堵して顔を背けようとした時、
ーーー「・・・”おやすみ”」
  微笑んだ彼の口元が、そのように動いた気がした。
  すると、
ーーー(・・・あれ・・・何でた・・・?)
  唐突に眠気が襲ってきて、瞼が落ちていく。
  もう、何が何だか分からない。
  今まで目の前で起こった出来事は、現実なのか?
  銃器を持ち襲ってきた防護服たち、今僕を担いでいる人、そして今の不思議な現象を起こした人。
  彼らは何者なのか?
  増えるばかりの疑問は、解消されることは無かった。
  そのまま、視界が暗転する。

〇田舎の病院の病室
???「──それで,一人でこの子を連れて来たと」
???「クラブに単独で遠くへ離れるのは避けてと言われなかったの?」
???「・・・もう過ぎたことだしいいだろ」
???「そうだろうと思っていたけれどさぁ・・・」
  ──目が覚めると,知らない話し声が耳に入る。
ーーー「・・・ん、?」
  恐る恐る目を開けると、蛍光灯に照らされた白い天井が視界に入った。
  自分はベッドに寝かされているのだろう。
  頭を動かして辺りを見回す。
  ・・・と、
ーーー「・・・あ!」
  一人の男性──ついさっき出会った青年が,ベッドの柵に寄り掛かっていた。
???「・・・ねえ、こいつ起きてるけど」
???「・・・!本当?」
  もう一人、白髪の男性が僕の傍へと近寄ってくる。
ーーー「起こしてしまったかな。具合はどう?」
  白髪の男性は、終始不機嫌そうな青髪の人とは対照的に保健室の先生を連想させる優しい笑みを浮かべていた。
ーーー「ここは郊外の病院。テロが発生した市街地からは離れているから安心して」
ーーー「テロ・・・・・・ッ!!」
ーーー「あの、俺────ッ!!」
  起き上がった途端、ズキ、と身体に鈍痛が走る。
ーーー「痛っ・・・」
  きっと何も考えずに勢いよく起き上がってしまったせいだろう。
ーーー「まだ寝ていた方が良い。 傷が開いてしまうよ」
  よろめく僕の様子を見て、白髪の男性は咄嗟に体を支えてくれた。
  そのまま、身体をゆっくり寝かせてくれる。
ーーー「・・・す、すいません」
ーーー「取り乱してしまうのも仕方がないよ。 あんなことがあった直後だからね」
ーーー「君はテロ現場で倒れていたんだ」
ーーー「詳しいことはそこの彼に──ハイドに聞いて欲しい。彼が君を助けた第一人者なんだ」
  そう言いながら、白髪の男性は青髪の男性へ視線を向ける。
  彼の視線を追って、僕もハイドと呼ばれた人を見上げた。
ーーー「・・・」
  しかしその人は、何の反応を示さずに目を逸らす。
  しまいには病室から出て行ってしまった。
ーーー「おい、ハイド!」
ーーー「・・・ごめんね、悪気は無いんだ」
ーーー「あ、いえ・・・」
  何だか不思議な人だな、と内心で思いながら苦笑をこぼした。
ーーー「・・・っあの、」
  気まずくなった空気の中、僕は口を開く。
ーーー「どうしたの?」
ーーー「・・・今から言うこと、笑わないで欲しいんですけど」
ーーー「・・・?うん」
ーーー「・・・俺、あそこで魔法みたいなやつを見たんですよ」
ーーー「今の、ハイド?っていう人と知り合いなんですよね?」
ーーー「魔法みたいなやつについて何か知りませんか?」
  気絶する前に疑問に思っていたことを、言葉を選びながら彼へ伝える。
ーーー「・・・魔法か」
  男性は、手を顎に当てて何かを考える仕草をする。
ーーー「・・・それは夢だよ」
ーーー「笑わないでくださいって・・・え?」
ーーー「君が見たその魔法は、全部夢だ」
  予想通り否定された。笑いはしないが信じてくれていないようだ。
ーーー「きっと、夢と現実を履き違えちゃったんじゃない?」
ーーー「え、でもあれは──」
  笑い話で終わりにしない為にも説明しようとしたが、その時、勢いを遮るようにコール音が響く。
ーーー「・・・あ、ごめんね。僕の携帯だ」
ーーー「ちょっと席を外すね」
ーーー「あ、はい・・・」
  男性は僕へ申し訳なさそうに会釈をして、早足に病室を出ていく。
  ──僕は見逃さなかった。
ーーー(・・・?あれは・・・)
  男性の手の甲に、うっすらと何かが描かれていたことに。

〇田舎の病院の病室
  あの後、僕は白髪の男性が戻ってくるのをしばらく待っていた。
  しかし、次に病室へ入ってきたのは医者と看護師だった。
  医者からは数日間の入院が告げられ、そのまま今後の説明がされる。
  ダラダラとした説明は、当たり前だが頭に入らない。
  僕はただ、病室の扉から先程の男性が戻ってこないかだけを気にしていた。
  ・・・しかし残念ながら、僕が入院している間に、彼らと再び話すことは叶わなかった。
  ──その数週間後。
  ゴールデンウィークが開けて、一時の非日常からいつもの大学生活へと戻っていった頃のこと。
  僕は非日常で邂逅した彼らの正体を、思いもよらない形で知ることとなる。

〇講義室
ーーー「みんな、はよ!」
???「おー!お前今日早かったじゃんか!」
ーーー「へへ!だろ?」
???「・・・まあこれが普通だけどな」
ーーー「そんな事言うなよ・・・」
  一限目の始まる数十分前。
  いつもは開始ギリギリか遅刻するかの二択の僕は、珍しく余裕を持って友達たちの元へつくことが出来た。
???「お前が朝早いとか、今日雪でも降るんじゃねーの?」
???「俺、槍に一票」
ーーー「そんなに珍しい?」
???「お前が時間に余裕を持ってくるのってサークルくらいじゃないの?」
ーーー「んな訳!俺だってやれば出来るんだよ!」
  本当に、何か用事があった訳ではない。
  ただ、今日はだるい身体が軽く感じられたし、他の身支度もすぐに終わっただけだった。
  本当に、それだけ。
  あと強いて言えば、今日は何かいつもと違うことが起きそうな予感がしているくらいである。
???「・・・おっ!!なぁなぁ!」
???「急に大声出してどうしたんだよ」
ーーー「・・・ん?何何?」
???「これ見ろよ!すげーから!」
  突然大声を上げた一人が、俺を含めた他の奴らへ半ば押し付けるようにスマホの画面を向ける。
  俺は他の友達の反応を伺いながら、奴らと同じようにスマホの画面を覗き込んだ。
  すると、そこには。
ーーー「・・・ッえ、」
  見覚えのある──見覚えのありすぎる光景が動画に残されていた。
  己の目が捉えたものを疑いながら、再度画面に目を向ける。
  ある通りの車道の上で、武装服を着た複数の人々が、1人の男性を取り囲んでいる。
  通りの舗装道路が一瞬にして緑色になる。
  映像はそこで終わっていた。
  動画のタイトルには、「伝説の組織APD、都心にあらわる?」という文字があって、
  コメント欄には武装服の人々を避難する発言や、APDの活躍に対し喜びの声を上げるもので溢れている。
???「APDだってよ!やっぱ居たんだな〜!」
ーーー「APD・・・」
  ──『APD』。
  流行りに疎い僕も、この組織の名前だけは何度も聞いたことがあった。
  なんでも、APDはここ最近存在が明るみに出てきた組織で、警察官でも自衛隊でもないという。
  SNSや掲示板では確実な証拠は無いものの、ネットのどこを見ても話題が頻繁に上がるほど有名だったのを記憶していた。
  様々な憶測がネット上に飛び交っているらしいが、確実なのは他の二点だけ。
  国から特殊な命を受けそれを遂行するための組織だということと、
  ──特別な力を持っているということ。
ーーー「・・・う、嘘だろ・・・?」
  僕の反応をさぞ不思議そうにながめる友達を他所に、点と点が繋がった僕は、意外なる再会に頭を抱える。
  この動画はまさに、僕が巻き込まれたテロ事件の一部分。
  この武装服たちは街を占拠していたテロ集団で、
  この男性は──緑髪の男性は、紛れもなく僕があの場で会った人物。
  そしてコンクリートに広がるこの緑の絨毯が、本当にこの男性が出したものとするならば。
  ・・・僕が助けられたのは。
ーーー「・・・あのさ」
???「んー?」
ーーー「この前・・・そこで、その人に助けられたんだよね・・・」
???「・・・」
???「・・・はぁ!?」
  僕は今にも質問攻めを始めそうな友達へ向けて、苦笑をこぼすしか無かった。

〇木調
  『BlueBlossom』読み切り、
  これにて閉幕。

コメント

  • 夢、現実、非現実の世界がとても上手く組み合わさって、想像力を掻き立てられるストーリーでした。改めて眺める非現実の世界は、まさに夢のようで。

  • まさにこれからAPDの真の目的や能力など、その活躍ぶりが読めるとワクワクしてたらまさかの読み切り。特殊能力で街を緑で覆っていくシーンは、映像化されたらかなりファンタジックで神秘的な光景になるでしょうね。

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