ギャル、憑依します

結花ユイ

第三話「サエ流責任の取り方」(脚本)

ギャル、憑依します

結花ユイ

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〇女の子の一人部屋
ミサコ(なんで・・・ 私は自分の部屋にいるの・・・!?)
ミサコ(教室飛び出して、非常階段に行って・・・それから・・・)
ミサコ(サエさんとビデオ通話して・・・ その後寒気がして・・・)
ミサコ「確認しなきゃ・・・!」
  ミサコは震える手で急いでサエに連絡をと った。
サエ「もしも~し」
ミサコ「サエさん! 勝手に憑依しましたよね?」
サエ「あー・・・ごめん」
ミサコ「ごめんじゃないですよっ! 何でそんな勝手なことするんですか!?」
サエ「勝手に契約解除されるの困るし、ウチも自分のしたことの責任とりたいから」
ミサコ「だ、だからって・・・」
サエ「勝手に憑依したのは本当にゴメン。 あのさ、ウチ今日ミサコに憑依してさ・・・」
サエ「あんたが受けてるいじめってやつがどんなのかすっごくよくわかった・・・」
サエ「今日はカツアゲなかったけどさ、 なんていうんだろ・・・ 教室内のあの独特の空気感っていうの?」
サエ「まじ耐えられなかった・・・ 味方が誰もいない世界って感じで・・・」
ミサコ「・・・・・・」
サエ「あんた偉いよ、ずっとあんな教室の空気に耐えて、あのギャルグループに言われ放題で・・・」
サエ「それも我慢しててさ・・・まじで偉い」
ミサコ「え・・・?」
  思わぬサエの言葉に、ミサコは拍子抜けしてしまった。
サエ「ウチ、絶対にいじめを解決するよ。 約束する」
ミサコ「・・・出来ると思いますか?」
サエ「頑張る!」
ミサコ「・・・変に頑張られて、また勝手に憑依されちゃうのは困るんですけど」
サエ「それは、ごめん・・・ なるべく勝手に憑依しないようにする」
ミサコ「なるべくじゃなくて・・・ あの、テスト中とか授業で指名されてる時に憑依されると困るんで」
サエ「あ~それなら平気! ウチ、こんな見た目だけどそれなりに勉強出来るし!」
ミサコ「・・・私、テストではいつも学年一位をキープしてるんです。 そこは順位を落としたくないんです」
サエ「学年一位!? すごいじゃん! そっか、頭いいから嫉妬されやすいのかもね~」
ミサコ「・・・それはあると思います・・・ その上、地味でダサいし暗いからいじめやすいんじゃないかなって・・・」
サエ「はぁ・・・」
サエ「自分をそうやって卑下するのよくないんじゃない?」
ミサコ「でも・・・事実ですし・・・」
サエ「そうやってさ、自分で自分のことをダサいだの地味だの思ってるからどんどんそうなってくんじゃないの?」
ミサコ「それは・・・」
サエ「まずはさ、少し見た目に興味を持とうよ。そこから少しずつオシャレして・・・」
ミサコ「しましたよ」
  サエの言葉を待たず、ミサコは静かに言った。
ミサコ「せめて人並みの見た目になろうって思って、メイク道具だって揃えて雑誌の見よう見まねでメイクもしてみたし・・・」
ミサコ「でも・・・不器用だから、マスカラで目の周りが真っ黒になっちゃうし・・・」
ミサコ「眼鏡をやめてコンタクトにしようと思って買ったものの・・・ 怖くてつけられないし・・・」
サエ「そうだったんだ・・・」
ミサコ「私は私なりに努力しようと思ったんです、でも・・・うまくいかなかった・・・」
ミサコ「そのうち、見た目にどんどん興味持てなくなって、美容院にも行かなくなって・・・」
サエ「それで髪伸ばしっぱなし、みたいになっちゃってるんだね」
ミサコ「無理なんですよ、私が地味ダサから脱するのは」
サエ「あっ!! そう言えば・・・」
ミサコ「ど、どうかしたんですか・・・? もしかしてまた、何か言い返したんじゃ・・・」
サエ「いやさー、あのギャルグループが地味だのダサいだのずっと言ってくるからカチンと来ちゃって・・・」
サエ「明日はとびっきりのオシャレしてきてあげる。楽しみにしてて・・・って」
ミサコ「えええええ!?」
サエ「まじゴメン!」
ミサコ「ど、どうするんですか? とびきりのオシャレって・・・そんなの私無理ですよ!」
ミサコ「そんなこと勝手に言うなんて・・・ やっぱり契約は・・・」
サエ「わ~待って! ウチがちゃんと責任とるから!」
サエ「大丈夫、ウチのこと信じて! 明日、いつもより一時間早く起きてメイク道具とコンタクトを机のとこに置いといて」
ミサコ「・・・わかりました」
  半信半疑ながら、ミサコはそう答え通話を終えた。

〇女の子の一人部屋
  翌朝。
  ミサコは言われたとおり普段より一時間早く起き、メイク道具やコンタクトを用意し、サエにダイレクトメールを送った。
  ほどなくして、寒気がミサコを襲う。
ミサコ(サエさん・・・ 勝手なことしないでね・・・)
  そう願いながら、ミサコの意識は途切れた。

〇女の子の一人部屋
ミサコ「メイク道具一式そろえてある・・・ ちゃんと、オシャレしようとしたんだね。 偉いよ、本当に偉いよ、ミサコは」
  呟いたサエは、ミサコが用意した道具を使い始めたのだった。

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