第四話「イメチェンの力」(脚本)
〇教室
ミサコ(・・・どうして私は教室にいるの)
予鈴が鳴る中、自分の席で意識を取り戻し たミサコは愕然としていた。
ミサコ(サエさんに言われた通り、早起きして・・・ そこからおそらく憑依されて・・・)
ミサコ(っていうか、ちょっと待って!? 私、メガネしてない・・・?)
ミサコ(サエさんが化粧したってこと・・・? え、待って、どうなってるの? か、鏡。鏡見ないと・・・)
慌ててカバンの中から手鏡を出し、確認をする。
ミサコ(な、なにこれ・・・!)
鏡の中には、全くの別人がいた。
ミサコ(え、これどういうこと・・・? サエさんがメイクしてくれたから・・・? メイクだけで、こんなにも変わるの?)
信じられない気持ちでいっぱいで、鏡を見ていると先生が教室へ入ってくる。
ミサコ(サエさんに詳しいこと聞きたいけど・・・また後にしよう)
〇教室
キーンコーンカーンコーン・・・
休み時間になり、ミサコはすぐさま席を立ち上がった。
が、クラスメートに囲まれてしまう。
クラスメートA「ねえねえ、どこの美容院行ったの? すっごくいいかんじだよ!」
クラスメートB「メイクはどうしたの? 自分でしたの? 私にも教えて~!」
次から次へとクラスの女子生徒がミサコに 声をかける。
しかもそれらは全て悪意に満ちていない。
ミサコ「あ、えっと・・・」
自分の状況がまだ把握しきれず、ミサコはたどたどしく声を出した。
ミサコ「あの、ごめん、どういう状況かわからないんだけど・・・」
クラスメートA「あっはは、おもしろいね~ 朝はあんなに強気だったのに急に大人しくなっちゃってる」
クラスメートB「でも、正直ちょっとスカッとしたよ」
ミサコ(強気・・・? スカッとした・・・?)
ミサコ(い、嫌な予感しかしないんだけど・・・ サエさん、今日は何をしでかしたの・・・?)
今すぐ何があったのかサエに聞きたい。
しかし女子生徒達がこんなに友好的に話しかけてくれてる今、それを遮って教室を出るという選択肢は、ミサコにはなかった。
ミサコ(こんなに、居心地がいいんだ・・・ みんなが私を嘲笑しない教室って・・・)
クラスメートA「ねえねえ、今日一緒にお昼食べようよ!」
クラスメートB「うん! メイクの話聞きたいし!」
ミサコ「う、うん!」
メイクの話なんて出来ない。
だが、ミサコは素直に嬉しかった。
誰かにお昼を誘ってもらえたことが。
〇教室
いつも、昼休みはひとりでパンをかじって いたミサコ。
そこへヒナやユキがやってきてみんなに聞こえるようミサコをバカにする。
だが、今日に限ってはそんなことはなかった。
クラスメートA「ミサコって意外と話しやすいんだね~」
クラスメートB「思った! 頭いいし、いっつもひとりだから、うちらのこと見下してるのかなって思ってたから・・・」
ミサコ「そんなことないよっ・・・私、みんなと仲良くなりたいと思ってたよ・・・」
ミサコ「でも、地味だし、暗いし・・・どう会話に混ざっていいかわかんなくて・・・」
クラスメートA「・・・ごめん、うちらミサコのこと誤解してたんだね」
クラスメートB「・・・今更、虫のいい話だと思うよね、こんな風に話しかけて」
ミサコ「う、ううん・・・そんなこと・・・」
確かに、今更話しかけてきてなんなんだと 思わないこともない。
だが、それ以上にミサコはクラスメートと何気ない会話が出来ることの方が嬉しかった。
しかし、気がかりなことがあり会話を心の底から楽しめないのも事実。
ミサコ(このままじゃサエさんに連絡出来ない・・・)
みんなと話したい、サエと連絡を取りたい。
そんな気持ちの狭間の中で、ミサコはその日の学校生活を終えたのだった。
〇女の子の一人部屋
ミサコ「サエさん!」
帰宅後、一番にしたのはサエへの連絡だっ
た。
サエ「な、なに、すごい勢いで」
電話口に出たサエは、あまりのミサコの勢いに驚いている。
ミサコ「何があったのか教えて!」
サエ「何がって・・・朝メイクして、髪セットして学校行っただけだよ」
ミサコ「本当に? 本当にそれだけですか? 誰かに何か言い返したりしてませんか?」
サエ「あっ・・・」
ミサコ「・・・その反応、やっぱり何か言ったんですよね?」
サエ「ご、ごめん・・・朝ね、学校行ったら あんたのこといじめてるギャル達が来て さ・・・」
サエ「アイラインずれてたからなおしちゃった」
ミサコ「え・・・ええええ!? メイクなおしたって・・・」
サエ「でもでも、気に入ってるカンジだったよ?」
サエ「もしかして、そのせいで何か言われた・・・?」
ミサコ「そういえば・・・今日は何も言われなかったし、何もされませんでした」
ミサコ「ずっと、クラスの子と話してたからかもしれませんけど・・・」
サエ「そっかそっか、クラスの子と話せたんだね!」
サエ「ってことは、イメチェン作戦は大成功ってとこかな?」
ミサコ「そう・・・ですね。正直、サエさんがメイクしてくれなかったら、クラスの子と会話することもなかったし、」
ミサコ「今日もあの二人にいじめられてたと思います」
サエ「で、どう? そのメイク」
ミサコ「あ・・・そうだった・・・! メイクのことも聞きたかったんです」
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