小豆洗いの小吉の相談(脚本)
〇女の子の一人部屋
朱織の部屋
巴 朱織(三人ともいい人だったな・・・ それに、同級生の人と喋ったのいつぶりだろ)
巴 朱織(あんな感じのあやかしもいるんだ いつもみてたのは、黙って座ってたり、うろうろしてるだけだもんな)
巴 朱織「バイトをしてみれば私も・・・」
巴 朱織(明日、見学して決めよう。 もう寝なきゃ)
〇学校脇の道
学校終わり
安倍 千明「おーい」
巴 朱織「!!」
安倍 千明「待ったせたか?」
巴 朱織「ううん大丈夫だよ」
安倍 千明「なら、よかった カフェに行こう」
巴 朱織「うん」
〇古民家の居間
カフェ
安倍 晴彦「ああ、千明。おかえりなさい。 それから朱織さんも、学校お疲れ様です」
安倍 晴彦「まだ、営業時間なので終わってから小吉さんのところへ向かいます。 それまで待っていてくださいね」
巴 朱織「はい」
巴 朱織「和カフェだから、制服は着物なんだね」
安倍 千明「おう。 朱織がバイトで入ったら着物は、用意してやるよ」
巴 朱織「あはは、まだ決めてないけど・・・ ありがとう」
坂口 龍弥「はい。お二人さん♪これどーぞ!」
巴 朱織「わぁ! かわいいし、おいしそう!」
坂口 龍弥「サービスでーす! ゆっくりしててね♪」
巴 朱織「はい!ありがとうございます♪」
巴 朱織「やっぱりみんな優しいね」
安倍 千明「ああ 2人とも昔っから家族ぐるみで仲良いし、優しいんだよな」
巴 朱織「だからかな? 和カフェってもっと堅い喫茶店みたいな感じかと思ってたけど、すごく明るくて来やすいね」
安倍 千明「ああ。若者向けだからな。 古民家改装したり、おしゃれにしたり色々工夫したみたいだぜ」
巴 朱織「すごいなあ!」
安倍 千明「そういえば、俺のことは千明って呼んでくれ バイトするにしてもしないにしても、同じ学校なんだし」
安倍 千明「いきなり話しかけて、連れてきたくせにどの口がって思うかもしれないが、その、友達になりたいんだ」
巴 朱織「えっ!いいの?」
安倍 千明「名前くらいいいだろ?」
巴 朱織「そうじゃなくて、 私が友達でいいの?」
安倍 千明「なんだよそれ! いいに決まってるだろ じゃなきゃこんな恥ずかしいこと言わねぇよ」
安倍 千明「正直、家族以外であやかしの話をしたのは巴が初めてでな」
安倍 千明「いきなり話しかけて明らかに不審者な俺と普通に話してくれたこと嬉しかったんだ」
巴 朱織「ありがとう・・・」
安倍 千明「なっ!」
安倍 千明「すまん、嫌だったか?」
巴 朱織「ううん、違うの 私、小さい頃からあやかしが見えるなんて言う気味の悪いやつだってずっと言われ続けてて」
巴 朱織「あやかしのことも話せる友達なんてできたことなかったから 嬉しくて・・・!」
安倍 千明「そうだったのか・・・」
安倍 千明「俺は、ずっと友達でいるよ」
巴 朱織「うん!ありがとう」
巴 朱織「それと、私が千明って呼んでいいなら千明も巴じゃなくて朱織って呼んで」
安倍 千明「ああ ありがとうな」
坂口 龍弥「千明だけずるいな! 俺とも友達になろーぜ!朱織ちゃん!」
安倍 千明「おい!盗み聞きしてたのか!」
一ノ瀬 斗亜「え〜!龍弥、抜け駆けしてずるい〜! 僕も僕も!ともだちになろ〜!」
安倍 晴彦「では、私も」
安倍 千明「兄貴まで! って言うか、三人とも仕事しろよ!」
巴 朱織「ふふっ! みなさんありがとうございます♪」
〇古民家の居間
一ノ瀬 斗亜「ありがとうございましたー!!」
坂口 龍弥「ふぅー、終わった終わったぁ」
安倍 晴彦「千明、朱織さん。 これから小吉さんのところへ向かいます。 着替えてくるので待っていてくださいね」
10分後・・・
安倍 晴彦「お待たせしました。 それじゃあ行きましょうか」
〇林道
巴 朱織「なんか・・・ ずいぶんと出そうな雰囲気ですね・・・」
安倍 晴彦「そうですね。 この看板から先は、あやかしの住む場所となっていますから さあ、小吉さんのもとに行きましょう」
巴 朱織「そういえば、晴彦さんは陰陽師の格好なんだね 千明く・・・ 千明は、着ないの?」
安倍 千明「兄貴は、先祖代々の仕事を受け継いでるからな。ああいう格好をしなきゃいけねぇんだ。 あやかし相談所も受け継いできた仕事だぜ」
安倍 千明「俺はその手伝いっていう感じだから着なくていいんだ。 て言うか、あんな格好暑いし動きにくいし 、着たかねぇよ」
巴 朱織「ええー 先祖代々なら継いでいかなきゃ」
安倍 千明「そ、そういえば、俺たちの先祖のこと詳しく話したか?」
巴 朱織「あ、話しそらした えっと、陰陽師で、あやかしと仲が良かったってことは聞いたよ」
安倍 千明「じゃあ、もっと詳しく説明するな」
安倍 千明「ご先祖は、陰陽師と言う職業でありながら小さい頃からあやかしと仲が良かった」
安倍 千明「しかし、陰陽師はそう言う類いのものを祓う仕事だ。そこでご先祖は、祓うものと、そうでないものを分けることにした」
安倍 千明「人間に悪さをして苦しめるものを 「物の怪」 そうじゃないものを 「あやかし」 ってな」
安倍 千明「それから、ご先祖はそのあやかしが物の怪に 転ずる事を防ぐためにあやかし相談所をつくったりルールを決めたりとまとめ、」
安倍 千明「仲の良いあやかしたちを守ったんだ」
巴 朱織「すごいね!」
安倍 千明「で、それを今も続けて、あやかしたちと共に生きてるんだぜ」
巴 朱織「そんな大事なお仕事なんだね」
安倍 千明「ああ。だからバイトが必要なんだ 兄貴や俺だけじゃ出来ないこともあるしな」
巴 朱織「なるほど」
安倍 晴彦「そろそろ着きますよ」
〇古びた神社
廃れた神社
安倍 晴彦「お待たせしました。小吉さん」
小豆洗いの小吉「いやいや! きてくださってありがとうございやす! ささ、こちらです! はやくあいつにギャフンと言わせてやってくだせぇ!」
〇睡蓮の花園
廃れた神社近くの湖
人魚の水藍「モグモグ・・・ ガサッ──ガサガサッ」
小豆洗いの小吉「やい!おまえ!」
人魚の水藍「なんだぁ? ケッ!いつもの口うるせえジジイか。 人間が来たのかと思ったのに」
小豆洗いの小吉「なんだとぉ! 人間は、襲うなってあれほど言ったのに、まだわからないのかァ!」
小豆洗いの小吉「まあ、いいさ! そんな事できるのも今日までだ! さぁさ、旦那! ギャフンと言わせてくだせぇ!」
人魚の水藍「なんだぁ?おまえ む、その気配、陰陽師か?」
安倍 晴彦「初めまして 安倍 晴彦と言います。 あなたは、人魚ですか」
人魚の水藍「安倍だとー? あの晴明とかいうやつの子孫だな? ふん!まぁいい 如何にも! 俺様は人魚の水藍(すいらん)だ」
安倍 晴彦「水藍さん、今日は小吉さんの相談で来ました。 あなたは人間を襲っているそうですね。 なぜですか?」
人魚の水藍「そんなのきまってるだろ! 人間たちが食料が入った袋を放り投げてくれるからだよ!」
人魚の水藍「人間たちが怯える姿も見れるし最っ高だね! 一石二鳥というやつだ!」
安倍 晴彦「なるほど ですが、ここに住む以上人間を襲うのをやめて頂けませんか? ここに住むあやかしたちには、ルールがあります」
安倍 晴彦「それが守れないならば 人間に害あるものとしてあなたを物の怪とみなし、祓わなけれはいけません」
人魚の水藍「なっ!・・・・・・・・・」
「やめてくれぇー!」
安倍 晴彦「!!」
人魚の水藍「!!」
人魚の水藍「おまえ!なんでここに!」
水藍の子分「親分を祓わないでくれ! 頼む!」
安倍 晴彦「あなたは?」
水藍の子分「水藍の親分の子分です。 親分が、人間を襲ったりしたのには理由があるんです!」
安倍 晴彦「教えていただけますか?」
水藍の子分「へぇ。 知っての通りあっし達は、もともと違う地域で暮らしていたんです」
水藍の子分「そこでは、守り神として祀られ毎日御供えもがありました。あっしたちは、それを糧に暮らしていたんです」
水藍の子分「しかし、御供えをする人が一人、また一人と減っていき今ではすっかり無くなっちまった」
水藍の子分「それで、暮らしていけなくなりここに来たんです。 けれど結局ここも同じだった。御供えものは、来ないまま」
水藍の子分「それで親分は人間を襲ったんです! あっし達を飢えさせないためだったんだ! ほんとは親分は、人間が大好きな優しい方なんだ!」
安倍 晴彦「ふむ」
小豆洗いの小吉「そうだったんでやんすね・・・ 全然知らなかったでやんす。 でも!ここには御供えものなんて最初からないでやんす!」
水藍の子分「え!!」
人魚の水藍「そうなのか? じゃあどうやって食ってけば・・・」
小豆洗いの小吉「そんなの、自分で作るに決まってるでやんしょ!どんな理由があろうとも、人間は襲っちゃだめでやんす!」
小豆洗いの小吉「これはあやかしとして暮らすためのルールでやんす!」
水藍の子分「自分達で・・・・・・」
人魚の水藍「作る・・・・・・」
小豆洗いの小吉「そうでやんす!そうでやんす!」
安倍 晴彦「お互いが、お互いのことや地域のことを知ろうとしなければすれ違ったままになってしまいます」
安倍 晴彦「新しく来たあやかし達など、よく話し合ってみてくださいね。 もちろん、「五芒星」に来て話してくださっても良いです」
小豆洗いの小吉「旦那!ありがとうございましたでやんす! ご迷惑をおかけしましたでやんす・・・」
人魚の水藍「人間、襲ってすまなかった。 これからはちゃんとルールを守る」
安倍 晴彦「えぇ。ぜひそうしてくださいね」
〇古民家の居間
カフェ
安倍 晴彦「お疲れ様でした。 朱織さん」
巴 朱織「ありがとうございます」
安倍 千明「急かすようで悪いが 朱織、バイトしてくれるのか?」
巴 朱織「・・・」
巴 朱織「正直、私が手伝いをして役に立つとは思えません」
安倍 晴彦「・・・」
安倍 千明「・・・」
坂口 龍弥「・・・」
一ノ瀬 斗亜「・・・」
巴 朱織「でも・・・」
巴 朱織「あやかしを知ろうとしないで勝手に全部あやかしのせいにして、逃げてきた私から変わりたいと思いました」
巴 朱織「私があやかしが見える事が、誰かの役に立てるなら 私はあやかしとも人ともと関わっていきたい」
巴 朱織「だから・・・」
巴 朱織「ここでバイトさせてください!」
安倍 千明「・・・本当か・・・! よかった!これからよろしくな」
安倍 晴彦「ええ、本当に! とてもうれしいです! これから一緒に、頑張りましょう!」
坂口 龍弥「これからよろしくな!」
一ノ瀬 斗亜「よろしくねー!朱織ちゃん!」
巴 朱織「はい!よろしくお願いします!」
なるほどー、物の怪・あやかしの使い分けはそういった定義で……細やかな設定ですね!確かに「益獣・害獣」のように、共存できるものと駆除すべきものの違いがあって然るべきですものね!