メタリアルストーリー

相賀マコト

エピソード55(脚本)

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〇鍛冶屋
  エルルは恐る恐る、鍛冶屋の扉を開いた。
???「らっしゃい! おや、可愛いお嬢ちゃんが鍛冶屋になんのようだい?」
???「・・・おっと失礼、あんたコレクターかい」
???「うちにはなにを? 武器? それとも鎧?」
エルル「えーっと・・・、なにかを買いに来たわけではないのですが、見学させてもらってもいいですか?」
???「ははは! 構わないよ、お嬢ちゃんみたいな可愛い娘なら大歓迎さ」
???「あたしはバレッタ。この店の主人をしてる」
エルル「私はエルルって言います。 メルザムでコレクターをしています」
バレッタ「へぇ、メルザムとはずいぶん遠くから来たねぇ」
バレッタ「ウチの品ぞろえは皇都一さ。 ゆっくり見てきな」
  エルルはお礼を言うと、キラキラした目であたりを渡した。
エルル「すごい・・・。 見たことないものばっかりです」
  エルルはふと、壁にかかった武器のひとつに目を止めた。
エルル「あの・・・、これは・・・、もしかしてフリューゲラスの翼を使ってるんですか?」
バレッタ「お! よくわかったね。 そう、これはフリューゲラスの翼にある風を操る力を使って・・・」
バレッタ「・・・、・・・、・・・」
エルル「・・・! ・・・、・・・」
バレッタ「へぇ、エルルちゃんすごいね。 ずいぶん詳しいじゃないか」
エルル「当然です! おじいちゃんに鍛えられてきましたから!」
バレッタ「おじいちゃん・・・、てことはエルルちゃんの家も鍛冶屋なのかい?」
エルル「そうなんです! メイザスの鍛冶屋は一応メルザムではそこそこ有名な・・・」
バレッタ「め、メイザス! もしかして、ランドルフ・メイザスさんのことかい!?」
エルル「え、おじいちゃんを知ってるんですか!」
バレッタ「そりゃ知ってるさ、鍛冶屋をやっててメイザスさんを知らなかったらモグリだよ」
バレッタ「あたしも昔はメイザスさんの作る武器に憧れて真似して作ったもんだよ」
バレッタ「あの人は本当の天才だ」
エルル「えへへ・・・」
バレッタ「そうだ! よかったら鍛冶場のほうも見てくかい?」
エルル「ホントですか!? ありがとうございます」

〇可愛らしいホテルの一室
ニル「ふぁ~、おはよう」
エミリア「あぁ、おはよう。朝食はそこに置いてあるぞ」
アイリ「今頃起きたの? ずいぶん朝寝坊ね」
エミリア「そういうなアイリ。 ニル、昨日も遅くまで本を読んでいただろう?」
ニル「図書館にいるだけじゃ読める量に限界があるから・・・」
ニル「・・・もしかして起こしちゃった?」
エミリア「そういうわけじゃない。 ただ、体には気をつけるのだぞ」
ニル「そうだね・・・、心配かけてごめんね。 ・・・そういえばエルルは?」
アイリ「エルルならもう出かけたわよ」
アイリ「ここ最近はずっと例の鍛冶屋に入り浸ってるみたいね」

〇鍛冶屋
エルル「あの、頼まれたもの持ってきました!」
バレッタ「あぁ、そこに置いといてくれ」
バレッタ「悪いねぇ、お客さんに手伝ってもらっちまって」
エルル「いえいえ! 私が好きでやってることですから!」
エルル「こちらこそ毎日押しかけてしまってすいません!」
バレッタ「なに言ってんのさ。 エルルちゃんにはこれだけ手伝ってもらってるんだし」
バレッタ「謝る必要なんてどこにもないよ」
バレッタ「・・・それにエルルちゃんが来るとウチの男どものやる気も上がるしね」
  バレッタが周りで働く職人たちの方をちらっと見ると、皆照れくさそうに顔を伏せた。
エルル「?」
バレッタ「ま、とにかくエルルちゃんは気にしなくていいってことさ」
バレッタ「そうだ、実は今日はエルルちゃんに折り入って頼みがあってねぇ・・・」
エルル「はい、なんでしょうか?」
バレッタ「エルルちゃん、ここで働いてみる気はないかい?」
エルル「え・・・?」
バレッタ「エルルちゃんもここのことだいぶ気に入ってくれてるみたいだし」
バレッタ「うちは世界中から皇都に集められたギアーズのパーツを扱ってる」
バレッタ「中にはメルザムじゃ手に入らないパーツもたくさんあるはずだ」
バレッタ「そういったパーツを使った装備の造り方なら教えてやれるし」
バレッタ「あたしたちも、メイザスさん直伝の技を教えてもらいたいんだ」
バレッタ「お互いにとって悪い話じゃないと思うんだけど・・・」
エルル「そう・・・、ですね」
  バレッタは優しい顔をして言った。
バレッタ「なぁに、今すぐ返事が欲しいわけじゃないし皇都にいる間にゆっくり考えておくれよ」
エルル「はい・・・」

〇怪しげな酒場
エミリア「ニル、アイリ、収穫はあったか?」
ニル「いや、いろいろな書籍を読んでみたけど、俺みたいな変形する機械の腕を持ってる奴のことはなにも書いてなかった」
アイリ「私もよ。 ゼノンどころか、人型のギアーズについてすらほとんど情報はなかったわ」
ニル「やっぱりあの女の子から話を聞かなきゃいけないかな」
ニル「どう思うエルル?」
エルル「・・・・・・」
ニル「エルル?」
エルル「え!? あ、はい、なんですか?」
アイリ「エルル、どうしたの? ・・・食事もあまり進んでいないようね。 なにかあったの?」
  エルルの皿に入ったシチューは半分ほど残されていた。
アイリ「いつもだったらもう3杯はお替わりしてるわよね」
エミリア「あぁ、私はもう5杯目だしな!」
エルル「・・・・・・」
ニル「・・・エルル?」
エルル「すいません、ちょっと食欲がなくて・・・。 今日はもう休みます」
  そういうとエルルは突然席を立ち、部屋を出ていった。
アイリ「え!? ちょっと、エルル?」
ニル「・・・・・・」

〇可愛らしいホテルの一室
  エルルが部屋の窓から月を見ていると、エルルの部屋の扉を叩く音が聞こえた。
  コンコン
「エルル・・・、起きてる?」
エルル「に、ニルさん?」
  エルルは急いでドアを開けた。
ニル「急に席を立ったからエミリアとアイリが心配してたよ」
エルル「ごめんなさい・・・」
ニル「・・・大丈夫? なにか悩んでるみたいだったから・・・」
ニル「僕でよければ相談に乗るよ?」
エルル「・・・・・・」
エルル「実は・・・」

〇可愛らしいホテルの一室
ニル「へぇ、すごいね! 皇都一の鍛冶屋から誘いを受けるなんて!」
エルル「・・・はい」
ニル「あんまりうれしくなさそうだね」
エルル「いえ、うれしいんです。 うれしいんです・・・」
エルル「初めて見る武器や防具に囲まれて、それを作る手伝いができるなんて本当に夢みたいだなって・・・」
エルル「でも・・・」
エルル「もしここで働くことになったら、あと数年はメルザムに帰れなくなります」
エルル「そしたら、おじいちゃんはその間ずっとひとりぼっちなんです」
エルル「この街で働きたい、でもおじいちゃんをひとりにはしたくない」
エルル「私・・・、どうしたらいんでしょうか」
ニル「・・・・・・」
ニル「エルルの人生はエルルが決めることだし、俺がどうこう言うことはできないけど」
ニル「俺を育ててくれたギルは、こういうとき「迷ったら後悔しないほうを選べ。」ってよく言ってたんだ」
エルル「どちらを選んでも後悔しそうだったら?」
ニル「そのときはどっちも正解でどっちも不正解なんだからどっちでもいいって言ってたよ」
エルル「ふふふ、面白い人ですね。 そのギルって人。会ってみたいです」
ニル「今度、紹介するよ!」
ニル「と言っても、いつもどこか旅しててどこにいるかもわからないから、いつ紹介できるかもわかんないけど・・・」
エルル「か、変わった人なんですね」

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